宝を守ることが
幸せだったの

血みどろの凶器はクローゼットに隠して
やったのはママだからね
心配しないでね
って言わせたの

その時から凶器は宝になった

真実は幸せを壊してしま ....
わたしが森でじとじとになっていたとき
ショコラウサギのおかあさんが
やさしくガーゼで顔をふいてくれた
ホームのベンチにひとり座って
走り去る夜汽車を見送っているだけでは
ありえない出来事だっ ....
遮光カーテンの隙間から
薄明かりが射し込んでいる
もう蝉が鳴きだした
命の残りをかけて

命がけじゃない一晩を過ごす
目をつぶっても眠れない
思いを巡らせるのは
もう戻らない
かつて ....
新米を炊いた
土鍋で炊いた

二人暮らしなので
小さな二合炊き

二十分蒸らして
蓋を開ければ
しあわせの香り溢るる

神棚に供えて
日々の糧に感謝

「こんな美味しい米 ....
目覚める
 と、
ここは深夜の密林

灯火に浮かぶダイニングバー

戦闘服のジェシカが店で
バナ・ナンカを刻む

よく切れる
薄刃包丁を手に、
ジェシカが正義を振り下ろす

 ....
時は、風化の砂塵
  砂丘より 蒼い星を子どもたちが
みつめる
 大気のない無音のそこからみる
星は かぎりなくウツクシイ


集約される
かわらぬ 社会の列車は喧騒のすえ
プラット ....
交番の横

公衆電話ボックスの中で涙まみれ

お巡りさんは私を見て見ないふり

勝手な言い分と怒りを

優しく宥めてくれた人

救いあげて走らせる白い車

夜中の阪神高速はオレ ....
血筋が守ってくれる
才能と鍛錬が守ってくれる
ふたつの光
ぶつかり合い
影をつくる

闇に転じて
地面を這い
それでも
内側にある
光は漏れて

輝く
ふたつの光
一瞬の幻 ....
 今宵手にとる梅酒のロック
 漬け込んだ梅の実も
 取り出してそのまま齧れば
 甘酸っぱさの酔いが
 心のうらがわまでしみてくる
 
 溟い憩いにグラスを傾ける
 私の手は苦い
 梅の ....
いつもの会釈にお決まりの挨拶
それにあとひとこと
胸につかえたしゃぼん玉を ひとつ
ことばに込めて放ちたい

世間話にも地雷はあるかなとか
ぜんぜん気の利いたことでもなく
毒にも薬にもな ....
頭の中には蝋燭が一本点いているだけのような
どこにも居るような朝である
カーテンは閉められていて
遠い所から立ち寄った風が時折揺らす
時間がありすぎて、たちくらみするような感覚
どこか手術台 ....
数日前に茹でてタッパーに詰め込んだ、冷たいそうめんをとりだして食す。もうだいぶ硬くなっているほそい面、たいぶ新鮮味のなくなっている細かく刻んだネギ、ふにやふにゃの刻み海苔、氷を入れてかなり味のうすくな .... 森は未だ騒乱の蝉しぐれ
鳴き声はやまず 
けれども、
風に 壁を這う色付く蔦のあやうい一葉の、はかなく落ちる季節の警鐘
浸食の始まりはきまって、誰もきづかず
無慈悲にも 足をひそめてやってく ....
 
 熱をはなつ太陽の勇みつつ
 南向きの居室で
 網戸から吹きこむ風が
 日焼けした畳をなぞっていく

 座敷机の榊立てに生けられた榊は
 光のかすかな痺れに
 微睡みながら
 忍 ....
入道雲は
青蜻蛉がみる白蜻蛉

さっきの雨が焦がしたフィルム

こぼれたひとつのいきを

つまさきまで吸いこんで
いつまでも夏のつもりでいた、
あかるいひるねがとつぜん風船のように射抜かれて、
緩慢な夢からついに目醒める、
夏だった風がとても涼しくなっていて、
その涼しさがそのまま寒さの鋭い刃となっている ....
ぎっくり腰は正式には

急性腰痛症という

背中に杭を打ち込まれたか

どうやって立つのか分からなくなった

東司へ行く恐怖

行かねばならぬのに 

近くて果てしなく遠い ....
 心の跳ねとぶような白に
 目を見張る
 おおよそ神秘な所で
 香り咲いた月下美人
 
 一夜、月の輝きのなかへ
 身をなげだし
 実もつけない花の
 湧きあがる純白は何故
 そんな ....
今宵の月は、
とてもうつくしい、
まるで君の繊細な顎のように、
ぼくにはとても愛おしい、
まるで小鳥を捉えるように、
ついつい捕まえてしまいたいんだ、
何も始まっていないし何も終わっていない。
炎天下を歩いている。
なんでもない。
今日がまだ日曜日でよかった。
その{ルビ娘=こ}は

私たちが乗り込んだ都電の座席にいた

私たちが乗るのと入れ替えに

その{ルビ娘=こ}の

両隣が空いたので夫が左側に座った

私が右側に座ろうとした時
 ....
ガス燈の灯る、
光の街は
地図にない
ヴィヨンの橋影が
夜の流れに
揺らめいている

街行く人も
名を伏せた仮面のまま、
濡れた石畳の道を
忙しく
通り過ぎた

裏通りの女も ....
知らないところでさり気なく
「うちの妻が」と言ってもらいたい

時代に逆行しても
「思い出に残る熱い先生でした」と卒業式の寄せ書き

オルガンをうまく弾けなくても
「あの子守歌、背中がこ ....
出かける準備に
君は右往左往している
もう出ないといけない
ジリジリとする内心

何か手伝おうか

さあもう出かけよう
服はそれでいいだろう
せっかくの
楽しみを
最大限に味わい ....
 青空が遥か高く張りつめた時
 草も花もない地上に
 私は頼りなく立っていた

 掌の感触は忘れていない
 あなたの爽やかな顎をなで
 たくましい肋骨を数えた
 奇妙に光る瞳で私を縛 ....
白い本をひらく

そこは、永遠てしのない階段が続く

教えられたままに ゆっくりと登っていく

いつか空に近づくころ 段差は代わりに五線譜になった

そこからは、音符の上をのぼりはじめ ....
{引用=こんなにも遠くの土地の

バスの停留所で

傘をさしていた


 ゆめのなか


ノイズのなかの風景の

砕けたアスファルトから


視える空は

雨粒に浸透 ....
夏の火照った肌
雨も涙のよう
汗ばむ皮膚を鼓膜に変える
そのねぐるしい抱擁の中
どこか つめたい絃のよう
はりめぐらされた
怪異という快楽へ
二度 三度と
夢は寝返りをうつ
盥の中
 ....
人知れず風はどこかの雑木林を通りすぎる
どこかの雑木林の木洩れ日がひゃらひゃらとゆれる
人知れず私はささやく
小さな星の上で
花の香りを
人の笑顔を
一つの命を
人知れず思う
私が居な ....
本が来る

熱烈な片想いが成就するかのようで

子宮がゾワゾワする

浅い昨夜の眠り

今日あたり

恋しい本が来る

半眼で想う

(行ったことのない)スコットランドの風 ....
夏井椋也さんのおすすめリスト(557)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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三日月顎- 本田憲嵩自由詩1125-8-18
炎天下- 空丸自由詩825-8-17
ごめんね- さち自由詩9*25-8-6
ヴィヨンの橋影- atsuchan69自由詩27*25-8-1
目ざめる前に- 唐草フウ自由詩17*25-7-23
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ノイバラ- リリー自由詩13*25-7-22
_文字のない本- 月乃 猫自由詩15*25-7-21
薄い風景- ryinx自由詩9*25-7-21
ねぐるしや- ただのみ ...自由詩4*25-7-19
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ハイランダーはまだ来ぬ- 花野誉自由詩13*25-7-16

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