色づくからすうり
いつのまにか冬
たねを取り出して綿に包み
マッチ箱に入れて待って
ほら黒いたねが黄金色に
祖母から教えてもらったあの秘密は
どこへいった
もう1回試してみたいな ....
写真の坂本龍馬の右手は
着物の中に入っている
「何か隠し持ってると思う?」とキミは訊く
ピストルとか? 物騒な時代だったから。
物騒な時代が終わったというわけでもないけれど
だけどもう誰 ....
「独白」
霜の立つ
音のきこえそうな
夜に一人で居る時は
吐息など捨てようと
幾度 思った事か
「街の鴨」
商業施設の脇を流れる
堂の川 ....
夜、路地裏の、暗がりを、
口に咥えられた、折れた刀身のように、
青白くひかる、
狼のように、一目散に駆け抜けていった、
黒猫、太刀魚、青い月、
わたしの部屋にいた蝶々が
飛べない蝶々が
ある日、自分でドアを開けて出て行った
かわりにあなたが入ってきて
二人で話をした
楽しい話をたくさんした
けれどそれはきっと夢で
....
もうあとは寝るだけ、という段になって
三日月を見つけた
三日月もわたしを見つけた
他者のさみしさに触れると
自分もさみしいということに気づき
それはことばにしてみたら
手にありあまるくらい ....
{ルビ孤閨=こけい}の痛みに耐えかねて 真夜中 菓子焼くキチネット
はちみつ計ってバタ練つて お粉がタルクでないのがつらい
蜜と油にあまくなめされ しっとりひかる 此の両手
貴方のくちにさし ....
*いたずら書き
故人の顔にいたずら書きをするのはやめましょう
(たとえそれが噴き出すくらいに面白くても)
自分ではもうぬぐえないし弁解だってできやしない
*粘土あそび
....
冬を編む音が聴こえてくると
祈りが近い
夕暮れが愛おしい
(行かないで)
熊ノ森のはずれにあった
馴染みの毛糸屋は
廃業してしまったらしい
けれど
絶望するにはまだ早い
めぐりめ ....
どこからともなく
黒い帽子、
黒いコートの
陰謀論者がやってくる
はじめ電信柱の影にいたが
子供たちが騒ぐと、
わざとコートの前を開いて
●ン出しをして追いかけて来る
不気味な ....
つまびらかなあざやかな
その声の残響の終い震え
君の眩い一瞬の微笑み、
なんて美しんだろ
永久なるヒビキ
あなたなぜ意味を求めるの?
僕の言うことに意味無いよ、
ただ喉頭のヒビキ ....
部屋に椅子がある
隣に体育座りをした母がある
雲が青さを通り越して
手をとり椅子に導く、空は久しぶりね
玄関に並んだ靴
妻は夕食を作り、息子はトミカに夢中
1のつぎの靴 ....
あまりにも遅すぎた桜の並木道、
ひるがえる、むすうの落ち葉たち、
まるで、うろこが剥がれ落ちてゆくような、
つよい晩秋の風は、
アスファルトのひび割れた路面を、
女の本心のように露わにさせる ....
親ガチャか
前に国ガチャと
時ガチャに
感謝して
今を生きている
すずめを追ってヒヨドリは
桜の色葉をくぐりぬけ
共に素早く弧を描く
糸でつながったみたいに
*
落葉が元気に駆け回っている
ヌードになった街路樹の
先っちょでわずかな枯葉が千切 ....
「先週の生産状況は以上です
次は工場の修繕計画の件ですが
和式トイレへの改修案が出ていますので
工場長よろしくお願いします」
「はい、なんのこっちゃと思いますよね
社長から各事業 ....
わかったよ
本当はもうとっくに思い出してるよ
差し出された干し柿はとても甘く
ギルー ギルー
僕はもう誰にも呼ばれないよ
アンダクェーとキジムナーは山原に消えたよ
....
父の祈り母に添いたる秋の夜
秋を見て父を見てただ心静けき
送りまぜ今日はかくやと嘆きおり
父の背に後の月を見し夕間暮れ
十六夜の月は空にはとどまらず
イノチガ フト
オモタクテ
窓ヲ アケルト
ヒトツ フタツ ミッツ
カゾエテミタラ
ココロガ カルクナッタ
アカイノ
ホントニ アカイノ
イマニ コガラシガ ....
船場汁っちゅうのは
塩鯖のアラを使い、
その塩気と、
だしだけで食べるもんや
汁の具は鰭と目玉、
鯖の骨やらのアラのほかに
大根の薄切りをつかう
そんだけでもう十分やろ
板張り ....
安全な
ところから
何を言う
わかりようもない
戦地の気持ち
はたして
ここは
安全か
裏路地に
死屍累々
熊も
わかってる
人が弱ってること
プーの面影も
テディ ....
お菓子なことになっちゃった ってお{ルビ顔=かお}
「かみついたりしないよね?」まあいいか
しっとり系を装うほどは 老けてないし
{ルビ花=はな}ふぶきみたいに恋ごころ吹雪かせては
....
寂れた町の匂いのする
季節外れの席でビールを飲む
砂粒だらけの赤い足で、
板張りの床を踏んでいた
濡れた髪の女の子が
ハンバーガーとポテトを運んだ
台風が去った跡の景色が、
そのままこの ....
あの日の雨は
もう降らないのかもしれない
もう降っているのかもしれない
明日
海を見にいこうと思う
海を、見にいこうと思う
辞書の文字が夕焼けに溶け ....
くびながりゅうが待っている時間旅行の旅はいかが
めぐる四季みをつくすしき、空席
秒針の音ねがえりをうつ
旅に果てたんぽぽに酒
はてふかしちちろちちろとなく虫のいて彼らのうたうセ ....
〇
玩具のミニカーに乗りたい、と
息子が言うので
助手席に乗せてあげた
エンジンが無いと動かない仕組みを
なるべくわかりやすく伝えた
息子は勉学に励み
大人になって
ミニカーに ....
かさかさと地面をすべってゆく、殺伐とした風に、押しだされた、すっかりと茶色くなってしまった落ち葉も、もう動かなくなってしまった蜘蛛の手足も、気まぐれに、かるく爪弾いただけで、いともたやすく砕けてしまう ....
手はさわり
落ちていく
あたらしく
たどりつく波
その波のかたち
平日の空気を
涼しい寝台特急は泳ぎ
車体を残して
溶けていく
あなたは積木の
手本をしている
手は繰 ....
たんとんたんとんあめのふり
ひゃっこいひゃっこいかぜのふく
ステーション前は紫色の人だかり
むんむん蒸れて濡れそぼり
紫に色づく人の群れ
それでも変わらず透明に
たんとんたん ....
食べることは生きてる証し
我が人生は、食べることが目的
──でもないけれど、
事実は、かなりそれに近い
さて、今日は何を食べようかな?
中華そば大好き
煮込みハンバーグ激ウマ
....
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