すべてのものが
あたたかい涙を流すのは
いとしいとき
いとしくて
だれかを抱きしめたくなるとき
天も
だれかがいとしくて
抱きしめたくて
泣いた
晴れの日に泣いた
....
はるか太古の時を知る粒子たちが
わたしというヒトを構成する
きまぐれな偶然の重なりが
悠久の時の流れの中にわたしが存在することを許した
ほんの100年間だけ
自分で自分を造り ....
月色うさぎ星の夢を追いかける
熱を帯びた肌に触れる衣が
不愉快だ
ふくれた毛穴を逆なでする
ああ どうか
放っておいてください
できれば
___ここにいる、のはなぜか
....
そろそろ
さああああああーーーっと
夜風が枝枝を撫でたなら
月の呼吸がしみわたる
独り言をいってご覧よ
それはすうーーーっと
夜の空気になじんで消えて行く
....
優しくはない
でも突き放すのでもなくほほを撫でる
一月の夜風は
軽い気持ちで靴音のメロディを運んで行く
もうすぐオリオン座回廊だよとささやいて
見上げる先で
いつもオリオンは ....
月明かりの下で
アゲハチョウは静かにため息をつきました
そして眠りに落ちました
色とりどりの花の間を飛び回る夢を見ています
月明かりの下で
風はアゲハチョウのため息を聞きまし ....
あ、あ、あ、これは
そうだ初雪の味
田舎の山奥
少女
噛んだ初雪を
その味
今宵ほほを撫でる風
冷たい空気
それらは、それらは、
初雪の味
走るはしるはしる
笑う
雪の ....
雲間から射す光は空の
星がちらちらと瞬くのは
木々が揺れるのは風と木の
霧雨は雲の
私の涙は
あなたが私の手を握るのは
祈り
小さな祈り
ここに存在していることの
....
「つまんないの」
足元の小石を軽く蹴りながらサフィはつぶやきました。
小石はぽちゃんと音を立てて、サフィの目の前の湖に沈みました。
サフィはひとりぼっちでした。
友達はみな ....
呼吸
呼吸が上手に出来なくて
わたし
わたしは胸を痛めた
けれど
月はかわらず穏やかで
頬はついっと滑るしずくを知った
ぽたん
ぽたんと地面に落ちたしずくは
ひやり
....
詩が書けない。
詩が書けない。
詩が書けないわけです。
ああ書けない。
書けないばっかり連発しちゃった。
ちょっと違うことを書こうかな。
詩が書けないのはさておき書けない。
....
秒針深夜パソコン雪は降らない
ひとりごとうなる冷蔵庫暖房は効かない
言葉なんて浮かばない音楽もない
詩人はひとり
秒針寝息あの人は夢の中
耳鳴りだ空気人知れず振動する ....
真夜中のため息は
やがて
真っ白い湖になって
少女と猫が
弾む足取りで渡っていった
その水面の足跡は
白い蓮の花に生まれ変わり
ひめやかに
ひめやかに
ささめ ....
ことばは
たんぽぽの綿毛のようにかわいくて
ことばは
猫の尻尾のようにきまぐれで
ことばは
ときどきガラスの破片のように
血をにじませて
ことばは
渇いたのどをうるおす ....
瞼(まぶた)を閉じ
安らぎに抱かれ
ゆっくりと
ゆっくりと
呼吸する
やわらかく息を吐き
おだやかに息を吸う
くりかえし
くりかえし
やわらかく
おだやかに
息を吐き
....
穏やかな午後に
揺れる白いカーテン
ほんのりとアールグレイが香って
静かに思い出す
初めての今日は
初めての二人の春夏秋冬
初めての日々
なにもかも新鮮だった頃
そうしてさ ....
その指先がこの涙をぬぐうことは
もうないのだ、と
うすうすは わかっていたよ
その手がこの手を握ることは
もうないのだ、と
うすうすは 気づいてはいたよ
その腕がこの体を抱 ....
つつむ
こころを
その手で
そっと
つつむ
いのりを
ひとり
その手で
つつむ
その手は
あの手を
つつむ
そして
手は
ひかりを知った
....
バタークッキーと紅茶
で
夜のティータイム
星が紅茶に
ゆらりと落ちて
ちょっと熱いじゃないのと
文句を言う
それを無視して
あなたが
さくさくっと
クッキーをかじって ....
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