海の生き物と話す
ヘモグロビンの傘を差して
今日は関節の痛い日です
海底を転がるまあるい心電図と
ぜんまい仕掛けで動き出す言葉
僕は夏至行きのバスで吸った息を
今、吐き出してる ....
 
  
道に紙が落ちていた
人の名前が書いてあった
知らない名前だった
畳んでポケットにしまった
家に帰って紙を広げた
十分経っても知らない名前だった
ひどく蒸して
退屈な夏だっ ....
ウォークマン、買いました。
という非常に唐突感の否めない書き出しで恐縮です。
何故買ったのか、ということにつきましての詳細は省略しますが、端的に言いますと、我が家のコンポはリビングに1台と娘の ....
 
キリンの背中に乗っている間に
世界は終わった
大好きだった人たちも
名前すら知らない人たちも
見慣れた建物も、古代の遺跡も
季節の匂いも
すべて跡形も無く消えてしまった
出来るだけ ....
 
 
誰かが僕の名前を呼ぶ
はあい、と返事をして
中に招き入れようとするけれど
この部屋にはドアも窓もない
外は秋が始まっている頃だろうか
何度か名前を呼んで
声は聞こえなくなり
 ....
 
 
魚屋に雪が降る
並んでいる電信柱たちは
パンのように沈黙する
台所の窓辺にサボテンを置いて
今日は何をして過ごそうか
外のアスファルトが
小さな音をたてる
きみの体温も静かに ....
 

交差点で男が信号待ちをしていた
信号が変わるまでの間
男はピアノを弾いていた
肩に蝶が止まった
その衝撃で
男もピアノもバラバラに壊れた
信号が青になると周りの人たちは
慌てて ....
 
 
窓を開ける
雲が見える
昨日のことのように
上り坂を下る人がいる
解熱剤でも飲んだのか
郵便局の職員が
自転車に乗っている
 
 
 
 
朝顔が咲いていた
夏の日だった
もらい物だろうか
テーブルの上に
クッキーの缶があった
食べても良いか妻に聞いた
食べても良いと妻は言った
何事もなかったように
パトカーが ....
 
 
それは、わたし
眠たい壁の一種
舌の裏で
縄跳びをする子供たち
名前の回数だけ跳んで
空想のまま
その間、冷蔵庫に向かって
嘘をつき続ける
アフリカ行きの
切符を手に入れ ....
 
 
植物群が眠っている
僕の知らない言葉の中で

息を吐き出すように
近所の商店街は
ゆっくりと潰れていった

帰りたい、と父が言う
他にどこに帰るの、と母が言う
帰りたい、 ....
 
 
何も無いところに
雨が降り始めている
父はもう誰とも
目を合わさなくなった

僕は今日、やっと
台所の隅でテレビになれた
独り言のように
延々と番組を流し続けた

す ....
 
 
今日、世界は晴れている
引用句を継ぎ足してつくられた飛行場から
貨物便が離陸した
生き物の涙や汚れたシーツ等を積載して

至るところに扉をノックする人がいて
人にノックされる扉 ....
青く、白く沈む、夜
そしてそれに属するものたち
 
今日は鶴を折った
 
どうして妻に、そんな
嘘をついてしまったのだろう
  
 
 
 
影を連れて出かける
ふとした拍子に
私と繋がっている唯一の
糸のようなものが切れて
影はどこかに飛んで行ってしまった
影の無い私は
午後三時くらいの腕時計を見る
 
 
 
 
四角を書いて塗りつぶす
四角を書いて塗りつぶす
ただその繰り返し
何がそんなに楽しいのだ
覗き込んで人が言う
あなたのしていることは全て楽しいのですか
そう聞き返すと
人 ....
 
 
背中が砂漠のように痒い
掻いた手を見ると
爪の間に砂が詰まっている
山高帽の男が笑いながら
建物の扉を閉める
短い一生の
一日がとても長い
 
 
 
 
手をあげる
流しのシーソーが停まる
どちらまで行かれますか?
上まで
反対側に運転手が座る
到着する
料金を支払って降りる
いくつかの用事を済ませる
再びシーソーを拾う
 ....
蝶々結びをして
眠たい人は眠って
それで構わない

犬の耳を噛っても
壊れたペットボトルでは
水、そのものを
飲むことはできないのだから

交番がボンヤリと光る、今夜
月 ....
  
 
眠っている祖母の頬に
桜の花びらが一枚落ちる

そんな季節ではないはずなのに
掌に握らせて
悪戯でしょ?と笑ってしまう

見送るつもりが
見送られているのは私たちですね
 ....
 

レストランがあった
メニューのないレストランだった
テーブルクロスがなかった
テーブルも椅子もなかった
シェフがおらず
給仕もいなかった
屋根はなく、壁はなく
建物すらなかった ....
 
 
車が停まっていた
昨日停まっていた車とは
色も形も違っていた
昨日は駅前に停まっていたのに
今日は公園の近くに停まっていた
乗っている人の容姿も性別も
まったく異なっていた
 ....
庭に咲く向日葵の陰で
雑種の犬が寝ている

鼻先に吹いた風は部屋に入り
指先や広げた時刻表の表面を涼しくして
再び外へと出ていく

真昼の駅、三等車に乗って
てんとうむしは出征 ....
  
 
ビンに入ったボーキサイトの見本を
男は理科室から盗んで逃げた
俺にはアルミニウムが必要だ
俺にはアルミニウムが必要だ
何度も自分に言い聞かせ
蒸し暑い住宅街の闇を疾走する
息 ....
 
 
生温かいザリガニが
真夏の都会を歩く
いたるところから車や人や
ラッパの音が聞こえてくる
そんな暮れ方である
炭酸水を買ってくるように言われ
下働きが走る
近道のフェンスを越 ....
自動販売機があった
少年は喉が渇いていた
でたらめにボタンを押してみた
何も出てこなかった
今日は車に当たる日だった
先日はかすり傷で済んだ
父親はそのことが
気に入らないようだった
 ....
 
 
ガラスに触れるクラゲの触手
骨のない夜、月に発光する

僕らの大切な約束は
フライパンの中
焦げた形の文字列になる

(自転車はさっき片付けておいたから)

どうしてだろ ....
 
 
街はコップの中にあった
人々は皆
銀色の言葉で話をしていた
消しゴムの形をした像が
中央広場に置かれていた
教訓めいたことが刻まれていた
僕は草色の列車に乗った
寒天の匂いが ....
サラは低所得者用の公営住宅に住んでいる
ある日、軒下にコガタスズメバチの巣ができていた
トックリ状の形をしていて
入口が長く下に向かって伸びている
サラには就学前の二人の娘がいた
年 ....
 
 
ビルの隣にビルが立っていた。
ひどく咳き込んでいた。
ビルは私に煙草を請うた。
煙草は吸わないのでその旨を告げた。
ビルの隣に建っているビルに入った。
壁の薄汚れたビルだった。
 ....
たもつ(1742)
タイトル カテゴリ Point 日付
夏至行きのバス自由詩211/8/6 18:37
紙の夏自由詩911/8/5 19:55
ウォークマン買いました 第一回「一発屋ビリー・ジョエル」散文(批評 ...8+*11/8/4 19:03
黙祷自由詩611/8/2 19:17
平日自由詩111/8/1 22:32
静かに熱自由詩211/7/31 11:28
信号待ち自由詩411/7/29 22:44
上り坂自由詩511/7/27 22:33
朝顔自由詩311/7/26 19:35
朝焼け自由詩211/7/25 21:45
帰ろうか自由詩911/7/23 17:22
テレビの時間自由詩611/7/19 21:43
news paper自由詩311/7/17 17:33
沈む、夜自由詩311/7/15 18:36
腕時計自由詩511/7/14 18:56
質問自由詩011/7/13 18:53
一日自由詩511/7/12 21:02
出張自由詩311/7/11 20:46
猫背自由詩311/7/10 20:47
悪戯自由詩211/7/9 6:06
レストランがあった自由詩611/7/8 0:22
模範回答自由詩111/7/6 21:08
冷麦自由詩411/7/5 20:30
夏の気配自由詩811/7/3 20:31
都会の暮れ方自由詩911/7/2 17:45
笑うために自由詩511/7/1 22:19
骨のない夜自由詩211/6/30 18:40
憧憬自由詩611/6/28 19:23
サラとスズメバチ自由詩1011/6/27 19:22
ビルのこと自由詩411/6/26 20:00

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