レモン
その向こうに夕日
そして
落ちていく坂道
 
海老の死体たちは
天ぷらになってしまった
昨晩、わたしが
指を怪我している間に
 
バスが停まる
駄菓子を買いに ....
 
 
傍らに咲く向日葵の肩に
歯車、のようなものが落ちて
僕らは片言で話す
君はカタコトと音をたてて
一面の夜みたいに
目を閉じている
カタコト
カタコト
いつかそんな音がする列 ....
夜、すべての列車が
運行を終えたころ
駅にしんしんと
ネジが降り始める
駅舎の出入口や
線路に積もったネジを
当直の駅員がネジかきをする
やがてネジは止み
夜明けにはすべて溶けて
 ....
 

電話が鳴る
慌てて冷蔵庫の扉を開ける
受話器が耳に冷たい

+

電話が鳴る
慌てて冷蔵庫の扉を開ける
外はすっかり夏のようだ

+

電話が鳴る
慌てて電話機と冷 ....
 
 
湿った自転車を押して
海に向かいます
水つながりで
相性がとても良いのです
防風林の間を進むと
しばらく進むと
ポケットに小銭があります
ものが買えるくらいあります
壁に手 ....
 
 
窓ふきをしていたはずなのに 
気がつくと父の背中を流している 
こうしてもらうなんて何年ぶりだろう 
父が嬉しそうに言う 
十五年ぶりくらいじゃないかな
僕が答える
父の狭い背 ....
 
  
遊園地に「回転しない木馬」があった
妻と娘が乗り
僕が写真を撮ることになった
バーにおつかまりください
というアナウンスの後にブザーが鳴り
回転しない木馬が
回転し始めなかっ ....
 
 
紙を飛行機にして
窓から飛ばす
しばらくして
砂漠に不時着する
近くでは
砂場と間違えて迷い込んだ男の子が
砂遊びをしている
こんなに集めたよ
振り返って
砂でいっぱいに ....
 
 
歩いていた犬が棒に当たったころ
風が吹いて桶屋は儲かっていた 
僕は爪に火をともしながら 
石の上で三年間 
糠に釘を打ち続けたのだった 

壁には耳があった 
障子には目が ....
 
 
朝の涼しい職員室で
担任の先生が亡くなっていた
若い女の先生だった
青白い横顔が見えた
海のように
とてもきれいだった
話は変わって
雲には感情がないと思う
感情があったら ....
群れからはぐれたのだろうか
一頭のキリンが
丸の内のオフィス街を歩いていた
時々街路樹の葉を食べながら
それでもなるべく目立たないように
歩道の端の方を歩いていた
郵便ポストを見つ ....
 
 
水槽をおよぐ絵本に
住宅街のパンフレット
駐輪場は閉鎖された
ネクタイがまぶしい
夏の最後の午後に

アスファルトは坂道になり
知らない街へと続く
土のことなら、昨日
す ....
 
 
浮遊する
言葉の粒子
その隙間に建ち並ぶ
高層の建築物
形づくられた
時間のない怒りは
未整理のまま
風が吹くのを
待ち続けている
空き地に咲く草花を
斥候が手土産に摘 ....
 
 
窓に眠る
結晶、
その韻律
雪は記憶
線のない記憶
傷ついた草花は
物陰で葉を休め
官吏は雲に刻む
自らの
不完全な名を
 
 
 
 
投げたボールの
破片が鈍く錆びて
木々の梢に優しい
アゲハ、あれは
産卵に来た
そしてもう
帰れないだろう
(だから誰かが鳥になる)
(そっと鳥になる)
タイヤの無いバス ....
 
 
低いベッド 
壊れた水平線を 
修復する 
年老いた水夫 
子どもたちは 
遊びまわる 
紐状のもので 
いたるところで 
フェンスの中に 
迷い込んだ 
夏の蟻が 
 ....
 
 
空の化石を
定規で測る
本棚に
古い指紋
人がいた
人はいた
肩幅の広さに
干されたままの
下着類
飲み物のない
簡単な食事を
フォークで
唇に運ぶ
言葉への失 ....
 
 
熱帯植物園の温室に
雪が降り積もる
さっきまで君と話をしていた
多分、話をしていた
メリーゴーランドの馬たちが
干し草を食む
クジラが次のバス停を目指して
暗い海を航行する
 ....
 
 
レジの長い列に並ぶ
列は進んでいるのに
なかなか順番は回ってこない
季節はいつしかすっかり秋となり
半袖のTシャツでは
肌寒く感じるようになった
小腹も空いた
トイレにも行き ....
縄跳びの途中で
砂を買いに行った母が
未明、父の心の中で
発見された



ベッドを買うのに
十円足りない
だから今夜も
寝られない



夏なのに
シチューの話 ....
わたしの雨は
昨日すべて
降ってしまいました
あんなにたくさん
両腕に抱えていたのに
傘が眠っています
夜明けの寂しい
コンクリートのように
 
 
鬼ごっこをしているうちに
本物の鬼になっていました
友達は逃げ回っている間に
立派な大人になり
一人また一人と
遊びから抜けていきました
夜は水槽の魚に
言葉を教えて過ごしま ....
 W.K.六回目です。たまにはさらりと本文に入りましょう。いえ、べつにどろりと入ってもいいんですけどね。ぐだぐだと最初に書かずに行こうということです。いっそのことそちらの方が潔い、という趣がそこかしこ ....  
 
窓を開けて
春の風が入ってきて
ピアノの鍵盤ひとつ
押して消えてく

そんな嘘のような
ことがあったなら
それはきっと君の
優しさのせい

窓を開けて
流れ星が入って ....
 
 
あの日、きみと
秘密の場所に埋めた
玩具のクハ103は
地下鉄になって
今ごろどの辺りを
走っているのだろう
お腹の弱いきみと
意気地なしのぼく
二人を乗せたままで
 
 ....
 
 
夕食の支度をする
そう言って彼女は
地下鉄に乗り込み
買い物に出かける

何となく僕は
ビールが飲みたくて
反対のホームから
地下鉄に乗る

笑っている人
泣いている ....
 
 
僕の自転車が
僕から離れて
砂漠を横断する
暑くないように
ハンドルに括りつけておいた
涼しい模様の日傘を
ボロボロにして
それでも自転車は
たった一台で
砂漠を横断し続 ....
 
 
選手もいない
観客もいない
ただマウンドの上に
白く滑らかな豆腐だけがあって
時折吹く風に
ふるふるとしている
気がつくといつも
そんな球場を眺めている

 
 
 
 
台所に行くと小さな深海がある
水圧で食器洗浄機が潰れている
よくあることだね
きみが見たこともない魚を
きれいに包丁でさばいている
時々あることだね
たまにあることだね
 
 ....
 
 
カマキリ会社のカマキリ社長は
用件が済むと電話を切る
鎌で電話のコードを切る
以下、カマキリ専務、カマキリ部長、
カマキリ課長、カマキリ平社員
みんな電話のコードを切る
だから ....
たもつ(1796)
タイトル カテゴリ Point 日付
レモン自由詩211/10/27 20:05
カタコト自由詩311/10/26 18:31
ネジ夜自由詩711/10/25 21:15
電話が鳴る自由詩311/10/22 19:06
海へと自由詩411/10/21 20:15
窓ふき自由詩10*11/10/19 20:23
回転しない木馬自由詩1711/10/18 21:33
不時着自由詩811/10/16 19:15
オリ非ナル自由詩711/10/14 20:05
雲の話自由詩811/10/13 19:11
エアメール自由詩511/10/12 19:17
独り言自由詩611/10/10 18:12
街路樹自由詩311/10/9 19:33
記録自由詩411/10/8 19:02
おうと自由詩711/10/7 18:50
不定自由詩311/10/6 19:06
部屋の空気自由詩1011/10/4 19:25
話をしていた自由詩611/10/3 19:21
レジに並ぶと自由詩611/10/2 18:48
あるひ、あるとき自由詩211/10/1 17:26
童話(雨)[group]自由詩411/9/28 19:27
童話(鬼ごっこ)[group]自由詩811/9/27 18:39
W.K.第六回「宇多田ヒカル『ULTRA BLUE』〜青空に ...散文(批評 ...1*11/9/26 19:37
春の風、流れ星自由詩611/9/24 19:12
地下鉄に乗って自由詩511/9/23 17:54
自由詩311/9/19 18:30
かげろう自由詩611/9/17 19:01
豆腐球場自由詩511/9/14 19:57
浮上する、朝に自由詩611/9/13 19:49
カマキリ会社の皆さん自由詩1011/9/12 21:16

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