お通夜があって
みんな傘を忘れている
窓の外には古くからある市場
誰かの窓にもあるだろう
県管理国道から小道を進み
みんな歩いて進み
本当に歩いているから
誰もが参列者になる ....
祖父の名前をふと思い出して
口にしてみると
聞こえてくる祖父の名前がある
祖父は他界する間際まで
新鮮な毛布にくるまれ
駆けつけた親戚たちは
その周りで酒や水を飲んだ
酒も水も飲めな ....
自動販売機で「夏の海」を買った
ペットボトルの海を一日中見て過ごした
水平線には夕日も沈んだ
家に帰り
何処に行っていたのか聞く妻に
海、と答えた
妻は、ウソ、と呟いた
出会った ....
 
 
墜落した紙飛行機が海に沈む
無人の自転車が男を追い越していく、と
男は置いてきた遺書の誤字に気づき
慌てて家族の待つ家へと帰る
妻は夜更けまで
サマーセーターを編んでいることだろ ....
 
  
あなたが少し、と言ったから
少し、と思った
わたしたちはどうしても
わたしたちに似たものを探してしまう
それは少し、というよりも
むしろもっと少しの、もの、こと
わたしたちの ....
 
 
木立ちを抜けていくのが
私たちの木立ち
だからすっかり抜けてしまうと
教室がある
先生は、と先生が言うと
先生は、と復唱する私たち
やがて始業のチャイムが鳴り
つまりそれは
 ....
 
 
海水浴場で父を洗っていると
監視員さんがやってきて
ここは海水浴をするところです、と言う
洗っている、といっても
石鹸もシャンプーも使ってないし
水を身体に濡らすところなどは
 ....
 
 
万年筆の花が咲く店でホウキを買った
女性が一人で店番をしていた
ここまでいくつかの霜柱を踏んでやってきた
あの万年筆の花があれば霜柱ももう少しうまく書けたな、
と思いつつ何も言わず ....
 
 
辞書に雨が降り
やがて水溜りができた
海と間違えて
文字たちは泳いで行ってしまう
僕は代わりに
いつか拾った流れ星を挟んでおいた
柔らかいものはみな
今日は朝から倒れている
 ....
 
みかんの皮を剥く
皮が出てくる
剥いたはずなのに
と思って皮を剥く
皮が出てくる
ええっと、何だろう
と思って皮をむく
皮が出てくる
落ち着け、今までのは気のせいで皮など剥いてい ....
 
 
冷蔵庫の中から動物たちの鳴き声がする
中に動物園が出来たらしい
食材などに用があったのに
動物や檻の合間を縫って
上手に取り出せる自信がない
仕方なく、冷蔵庫の隣で
キリンの口 ....
 
 
店員さんが運んできたコップの中に
凪いだ海があった
覗き込めば魚が泳いでいるのも見える
こんなにたくさんの海は飲めそうにない
先ほどの店員さんを呼ぼうとしたけれど
彼女なら里に帰 ....
 
 
ある日、ふと
僕がどこかに行ってしまった
家の中を探しても
戸外を探しても
どこにも見つからない
自分の中を覗き込んでも
ただ海のようなものが広がっている
どこか遠くの方から ....
 
 
砂漠で椅子を並べている僕の耳元で
佐々木さんがささやく
卒業生たちは丁寧に会釈をしながら
前方から順序良く着席していく
人は生きているとささやきたくなる
だからいつか人は死ぬの
 ....
幸せだった
あなたも
わたしも
脊椎動物に生まれて

+

心臓が痒かったので
慌てて掻くと
僅かばかりの
生活があった

+

収穫を終えたばかりの
アーモンド ....
 
 
デモ隊が行進をしている
何を言っているかわからないけれど
行進している
プラカードのようなものも持っている
何て書いてあるかわからないけれど
持っている
先頭が角を曲がる
何 ....
 
 
とてもとても遠いところから
君の訃報が届いた
時刻表を確認することもなく
僕は一番最初にやってきた列車に乗る

いったいどれだけ乗り継げば
君の場所に行けるんだろう
君の生き ....
 
 
夜、戦争は静かに始まる
町のいたるところで
戦闘が繰り広げられる

寝ている人を起こさないように
兵士たちは銃を撃つ
戦車は音をたてずに街路を走行し
飛行機は何かを包み込みよ ....
 
 
千葉駅から外房線に乗り南下して
稚内に向かう
どんなに行っても沿線に稚内はない
外房とはそういうところ
風が吹いている

都会なのに美しいジャングルがある
それが稚内
珍し ....
バスを待っていると
昨年死んだお父さんが縄をもってやってきた
電車ごっこの相手を探していると言う
せっかくだから車掌をやることにした

もともと小さいお父さんは
死ぬ前にさらに小さくなった ....
マツモトキヨシの片隅に
僕のマツモトが売っていた
僕のマツモトのはずなのに
どこかちぐはぐで僕には馴染まなかった
僕のキヨシは売っていなかった
僕の、どころか、
普通のキヨシすら売っていな ....
壊れかけた百葉箱の中で眠っている僕の架空の妹
いろいろと短いのに産まれた順番だけで長女になってしまった
安心して眠れるように頭を撫でてあげるけれど
架空だから忘れられていくものがある
 ....
耳鳴りが気になって眠れない
そう言う君の耳に自分の耳を当てて
同じ耳鳴りを聞き続けた

あれしたい、これしたい
語り合う夢はまだまだある
この年になればいっそのこと
実現しない無 ....
雨季、冷たいだけの
椅子に腰
かけて
朝方の蝉が穏やかに
絶滅していく様子を
眺めていました

手を伸ばす
伸ばす手が
その手が
範囲
何も守れない

窓があってよか ....
書き損じた天気図の余白に
僕らは昨夜見た偽物の夢を書き続ける
筆圧があまりに強いものだから
明日見る予定の夢まで記してしまう

つけ放したラジオから聞こえる
ネジが酸化していく音
そ ....
ワカメは波平とフネの娘
サザエを姉に、カツオを兄に持つ
ワカメ、増える
増えるワカメちゃん

アニメのワカメは小学三年生の設定
以降、歳を取らない
永遠に歳をとらない
永遠に増えるワカ ....
ありふれたあなたの指先が
遅れてきた春先に触れている
今日も
曖昧な言葉で
あやふやな言葉で
愛は語られ続け
朽ち果てるのを待っている
同じものを見ていたはずなのに
あの時、あっ、 ....
電車に乗ると自宅の電気が消えた
おかしいなと思い電車を降りて電気をつける
大丈夫そうなので再び電車に乗る
今度は台所の水が止まらなくなってしまい
電車を降りる
蛇口を逆にひねると水は止まり改 ....
海の部品が落ちていた
大事な部品を落として
海は今頃
どこで凪いでいるのだろう
行方を捜すにしても
持っている地図は改訂前のものだし
海に関係する友達も
親戚ももういない
海を作っ ....
近所に世界の果てが出来た
白いベンチがひとつあった
僕らはベンチに腰かけて
パストラミのサンドイッチを食べながら
突き当りで折り返して行く飛行機を眺めた
世界の果ての地面にも小さな虫はい ....
たもつ(1691)
タイトル カテゴリ Point 日付
お通夜自由詩120/2/2 19:52
祖父自由詩2*20/1/31 18:39
夏のコラージュ2自由詩120/1/29 18:15
夏のコラージュ1自由詩420/1/27 20:49
少し自由詩320/1/24 7:09
教室自由詩920/1/21 21:40
父洗い自由詩620/1/19 16:50
エッセイ自由詩120/1/16 22:55
しおり自由詩1220/1/13 18:53
みかんの皮を剥く自由詩420/1/9 21:03
後悔自由詩220/1/6 17:56
ランチ自由詩1520/1/5 18:32
息継ぎ自由詩220/1/3 18:05
卒業式自由詩219/12/28 15:39
しあわせ[group]自由詩1*19/12/26 12:34
行進自由詩3*19/12/20 12:29
せかい自由詩7*19/12/8 18:04
夜、戦争は静かに自由詩3*19/12/7 2:23
稚内自由詩219/12/5 7:27
ほくろ自由詩819/12/3 22:45
マツモトキヨシ自由詩419/12/2 21:06
架空請求書自由詩3+19/11/23 11:22
片思い自由詩1219/11/17 18:22
範囲自由詩619/11/15 7:18
余白自由詩1319/11/7 7:21
増えろワカメ自由詩419/11/3 15:52
春先自由詩619/10/24 20:01
帰宅電車自由詩419/10/16 21:34
鼓動自由詩1019/10/14 23:01
世界の果て自由詩519/10/6 21:37

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