泡の中に階段
階段の突き当たりに崖
飛び込んでごらん、ウールだよ
と言って
飛び込んでいく民兵たち
砕け散ったポケットの中に
鉄屑
こぼれ落ちた鉄屑の雫で
埋め尽くされた野 ....
 
 
夜半から降り始めた砂が
やがて積もり
部屋は砂漠になる
はるか遠くの方からやって来た
一頭のラクダが
もうひとつのはるか遠くへと
渡っていく
わたしは椅子に腰掛け
挨拶を忘 ....
 
 
一人目の盗賊は目を瞑った
二人目の盗賊は葉の匂いをかいだ
三人目の盗賊は百本の口紅を盗んだ後アル中の妻に口紅を一本買って帰った
四人目の盗賊は人形の頭を終日かじり続けた
五人目の盗 ....
 
昨日より冷たい君の
手を引いて
坂道を上る
君の腕が肩から
肩から抜けてしまわないように
そっと引いて上る

途中、誰がつくったのか知らないけれど
昔からある赤茶けた工業地帯が
 ....
 
 
硬質に濁ったゼリー状のものの中で
僕らの天気予報は
軋み
軋んだ音をたて
初雪が観測されたことを
伝えようとしている

子どもたちが歩道橋から次々に
ランドセルを落とす遊び ....
 
 
洗濯機に釣り糸を垂れる
魚が釣れる
うろこが晴れの光に反射してまぶしい
釣り糸を垂れる度に
次々と魚が釣れる
面白いように魚は釣れるけれど
魚は面白くなさそうにこちらを見るばか ....
 
これ、以前に頼まれていた資料です
と小田さんの持ってきたコピーが
湿っている
海に行ってきたんですよ
小田さんは微笑んで
きれいな巻貝をお土産にひとつくれた
去っていく小田さんの髪や ....
 
 
不安な気持ちでたまらない、と
夜、入院している父から電話があったので
病院まで行く
今日はリハビリ頑張りすぎて疲れちゃったんだね
そう言って落ち着くまで父の頭を撫でる

その帰 ....
 
 
部屋にハンカチが落ちていた
ふとした拍子、の形のままに
それから
洗面所で好んでよくうがいをし
何本かの正確ではない平行線を引き
人が衰えていく様子を眺め
時に貧しい正義を振り ....
 

電話回線の中をひとり歩く
途中、水溜りのような海がある
工事のためしばらく混線する恐れがあります、と
電話会社から通知書が届いたばかりだった
仕方なく簡単な水遊びをする
ふやけた体 ....
 
 
いつもはわたしが列車を待っているのに
今日は列車がわたしを待っている
ホームにたどり着くと
列車たちは次々と
わたしの中に乗りこんでくる
発車を告げる音楽が鳴り止む
いつも列車 ....
 
 
薬が切れて震える父を
抱えてベッドに寝かせる
布団のしわなどが気に入らないと眠れないので
抱き起こし、位置を変えてまた寝かせる
そんな作業が延々と続く
父にとって毎日の睡眠とは
 ....
 
 
二週間前と同じように
針金ハンガーが
屋上のフェンスにひっかかってる
そこにあってももう誰も気にしない

隣の棟の四階の事務室で
女性が端末を入力しているのが見える
その下の ....
 
 
コップを割ってしまった
深夜ひとりで
お寿司をにぎっていただけなのに
お刺身はさくのものをスーパーで買ってきた
赤くて二割引できれいだった
酢飯は作り方がよくわからないので
知 ....
  
水槽を抱えて
列車を待ってる
水槽の中には
やはり駅とホームがあって
幼いわたしがひとり
帽子を被って立っている
ある長い夏の休みの間
ずっと被っていた帽子だった
水の中もやは ....
 
氷、と書かれた布製のものが
海からの風にそよいでいる
大盛の焼きそばは皿いっぱいに広がり
けれどできる限りの表面張力によって
その外形を保っている
去勢されたばかりの犬が
日陰で餌の ....
 
忘れ物のような話をしました
ただ長いだけのベンチがあり
終わりの無い話を続けました
読みかけの本が無造作にふせられ
背表紙は少し傷みかけていました
マリエはすぐに人を殺そうとする
け ....
 
 
母さんの中を
金魚がぷかぷか泳ぐ
雲の柔らかさ
産地とはおしなべて
そんなところなのだと思う

母さんの背中
バズーカ砲つけたら
悪いロボットみたいだ
だから僕たちは
 ....
 
 
タンポポを一輪だけ摘む
何も知らない貨物列車とすれ違う
水のように冷たいものを売っている所はありませんか
と、男の人に聞かれ
あっち、と指差す
あっち、に何があるのか行ったことは ....
 
 
朝起きて、俺
ヘビと戦った
その日はとにかくひどい洪水で
俺の大事にしていたポシェットも流され
銀行などの床も水浸しになり
家の冷蔵庫は野菜室まで水が入り込み
それでも、俺
 ....
 
 
やはりカバンが良い
と男は言って
口から出した大きな舌で
炎天下の夏草を刈り始めた

確かにその場所は空地にも見えるけれど
昔、わたしが「草」
という字をたくさん書いた漢字練 ....
 
 
01
冷蔵庫売り場で火遊びをしている少年のシャツは裏返っていて、肌がまぶしい。

02
扇風機の真似をする君が、今日は朝から羽が壊れて、うまく首が振れない。

03
アイロン ....
 
 
○父

窓から庭のブランコを
眺めることが多くなった
あれにはもう一生分乗った
と言って
時々体を揺らす
背中が
押されるところではなく
支えられるところとなってから久し ....
 
 
くにゅくにゅ列車が
小さなバス停にやってきて
ダチョウを三羽乗せて行った
ダチョウたちが仲良く
キャラメルを分け合っているのが
窓の外からも
なんとなくわかった
何も無い妹の ....
 
 
01
図書館にパンが落ちていたので男は拾って食べたのだが、それはパンではなくムカデの足だった。

02
図書館の大砂漠で遭難した司書は一週間後に救助され、その翌年には大統領になった ....
 
 
並んで座っている父が
僕にもたれてくる
落っこっちゃう、と言って
体を預けてくる
床から目まで
わずか数十センチの高さが
怖くて仕方ないのだ
ねえ、お父さん
お母さんや僕の ....
 
 
父のベッドのところまで
凪いだ海がきている
今日は蒸し暑い、と言って
父はむくんだ足を
海に浸して涼んでいる

僕は波打ち際で遊ぶ
水をばしゃばしゃとやって
必死になって遊 ....
 
ファミレスの床に
男の人が倒れていた
可愛そうだったので
メニューを見せてあげた
チキンドリア、とだけ言って
男の人は息絶えてしまった
警察やお店の人が忙しくしている間
僕はハンバ ....
 
 
クラゲの心音がする
放課後
筆箱の中で

黒板消しが羽化するのを
慣れない手つきで私は
手伝ったのだった
 
ひっそりとした
カーテンの向こう
湿り気のある列車が
外 ....
 
 
「鼻が長かった」彼女は言った

「ゾウみたいだね」僕は言った

「ううん、キリンみたいだったわ」と彼女が言うので

「首も長かったんだ」と聞くと

「歯がキリンみたいだった ....
たもつ(1691)
タイトル カテゴリ Point 日付
ノイズ自由詩1310/1/6 19:47
記憶自由詩1610/1/4 7:48
十人の盗賊自由詩809/11/24 22:52
接続詞自由詩1109/11/17 21:28
初雪自由詩2409/11/5 19:55
後悔自由詩409/10/25 21:57
巻貝自由詩1009/10/23 17:25
ブランコ自由詩3509/9/26 19:35
経過自由詩809/9/24 21:38
通知書自由詩909/8/26 17:34
川面自由詩809/8/18 21:10
祈り自由詩2109/8/17 19:43
針金ハンガー自由詩909/8/11 23:08
破片自由詩909/8/7 17:33
夏帽子自由詩2009/8/4 20:28
海の家自由詩1009/8/1 0:08
首都自由詩1009/7/29 19:34
ベランダ自由詩809/7/25 21:59
首筋自由詩1509/7/21 21:30
ヘビと戦う自由詩1109/7/18 13:37
草刈り自由詩709/7/15 19:22
家電物語自由詩1009/7/9 8:51
家族自由詩4909/7/3 17:46
くにゅくにゅ列車自由詩1009/7/1 22:11
図書館物語自由詩3109/6/26 13:29
恋人自由詩1009/6/22 16:25
遠泳自由詩1309/6/21 15:20
手遊び自由詩909/6/19 17:41
放課後自由詩1009/6/17 19:59
キリンの歯自由詩709/6/15 19:32

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