軟骨で出来たビルに
バッタが遊びに来ます
電信柱の破片が砕けて
少量の砂になります
 
 
+
 
 
過って網戸に
大きな穴をあけてしまう
その大きな穴から
たく ....
 
 
ふと、わたしは紙になる
紙になったわたしを
見知らぬ女性がか細い指で折る
骨も関節も内臓もない身体を折ることは
とても簡単なことらしい
女性は几帳面に折り目をつけ
やがてわたし ....
 
 
ジャングルにいます
密林です、どこまでも密林です
密接した林です
密着した林です
林さん、はわたしの母の旧姓です
秘密の林です
緻密な林です
わたしはリンゴをかじってます
 ....
 
 
僕の名前の近くに
誰か立っていた
漢和辞典を忙しそうにめくっていた
若い頃の父だった

僕の名前は祖父がつけてくれた
父はぼくの出産に立ち会わなかった
そういう時代ではなかっ ....
 
 
いつの頃からか口の中に
ハリセンボンが住み着いている
怒らせると針が口中に刺さって痛い
ちょっとした振動にも反応するし
取り出そうとして手を突っ込んでも
針が引っかかって取り出せ ....
 
 
街を歩いていると
工事現場で父が働いているのを見つけた
道具のようなものを使って
ものを壊したり、穴を掘ったりしていた
父は大きな会社の重役をしているはずで
今朝もビシッと高級ス ....
 
 
昼間はゆらゆらと
国道の標本で遊んだ
すぐ側で乾いたアイロン台が
牛のように転がっていた
人の形をしたプラスチック製のものを
道路に並べて行く
ここには車が来ないので
安心し ....
 
 
雨上がりの遊覧船の匂い
が敷き詰められた
ポリエステル、もっと
素材でありたい
ドラッグストアに住み着く
鱗しかない魚が
ヒレを探しているけれど
風邪薬の扉が開かないので
 ....
 
 
毛が生えている家が格安で売り出されていたので
後先考えず不動産屋と契約してしまった
見た目は洋風でモダンな感じで毛が生えているのに
中に入ると障子や襖や梁の木目など和のテイストが
 ....
 
 
もうすっかり真夏だというのに
町内を一匹の羊が歩いていた
川を探しているようだった

取り壊しが決まって無人となった団地が
フェンスと草むらの中に
数棟納まっている
淋しい幼 ....
 
 
土曜日はいつも
草のことを考える
誰もいないのに
ハサミで紙を切ってしまう
 
 
+
 
 
青空を両手ですくう
指の間からさささらと零れ落ちる
さっきから公民館の ....
 
豆腐がテーブルの下に入ったまま
出てこようとしない
いくら呼んでも
何の反応もしないでじっとしている
仕方なく椅子をどけて
自分がテーブルの下に入る
特に豆腐に恨みがあるわけでも ....
 
 
手の知らない言葉を
書き続けていく
手のすることはすべて
わたしを助けるのに
わたしのすることのすべてが
手を助けるわけではない
途中、水が足りなくなって
手を洗いに行く
 ....
 
 
水で出来た線路の上を
指列車がやってくる
わたしは道路の言葉で話しかける
指列車は親指を振って応えてくれる

空から墜落しそうになっている空を
真夏の工場群が
かろうじて支え ....
 
 
三角定規が数ミリ単位でずれて
安アパートが崩れた
確かに昔、ぼくはその二階の
日当たりの悪い角部屋に住んでいたけれど
何度か前を通っても人の気配がなかったので
もしかしたらぼくが ....
 
 
梅雨の湿った風に吹かれいると
いつの間にかぼくと妻は
古ぼけた感じがする列車の
最後尾の座席に並んで腰掛けている
列車はカタンカタンと
紙のイメージの中を
ゆっくりとしたリズム ....
 
 
試験管の中で農場が溶けた
後に残った僕らは、帰り道
アブラ菜の咲く側で
何かの小さな骨を三つ拾った

お互いにひとつずつ持ち
残りのひとつは
骨が欲しくて困っている人に
あ ....
 
 
最終バスの斜め前の席
緑色のハナムグリが一匹
青いシートにしがみついている
埠頭から乗車してきたのだろうか
もしかしたらずっと前から乗っていて
既に何往復かしているのかもしれない ....
 
 
時計の断面が落ちている
側に誰かの置いた花束がある
初夏の陽射しは影をつくり
わたしはわたしの影を
地面に埋めていく
勝者などいない
敗者だけの戦いが終わったのだ
イワシの缶 ....
 
 
道の記憶
識別された日常の中を
人は歩く
そして
人は脆い
ぐにゃりと背骨の曲がった自転車が
無灯火のまま夜の街を走る
やがて洋品店の前でひとつの海になる
街中の甲殻類が次 ....
 
 
わたしが金魚の頭を
撫でているころ
ぼんやりとした扇風機は
薄暗がりの中で首を振り
幼い子どもが一人
どこかで帰る家を探している
ここだよ、と言っても
それはきっと
ただの ....
 
 
手からファイルが滑り落ちる
その先に空がある
とめ具が外れて
出鱈目な順序で書類がばらばらに舞う
書類から
印刷された文字も手書きのメモも
剥がれていってしまう
牧場の真ん中 ....
 
 
窓を開けて欲しい、と男は言った
壁しかない部屋だった
窓を開けた、とわたしは嘘をついた
男は両手を広げると
嘘の窓から青空へと飛び去った
ひとり残され
部屋を丁寧に折りたたみ
 ....
 
 
誰かのための
湿った窓がある
三本の線を反復できずに歩いて渡る
蟹たち
をわたしは避けて
自分の指の形がいつもより気になったので
どこかに忘れてきた雨傘の代わりに
古道具屋で ....
 
 
白線の内側に下がってお待ちください。

白線は自分で引いてください。

内側と外側は自分で決めてください。

白線の外側を
一匹のシオカラトンボが横切っていく
軟らかくて
 ....
 

雨が花の形を整えていく
わたしたちは共通の言葉で話し
共通の言葉で
触れるべき場所に触れる

民家の前にぽつりと置かれたバス停で
傘を差してバスを待つあの二人は
親と子なのだろ ....
 
 
光は屈折し
やがてその先端は
壁の末期へと続いていく

何かあってはいけないので
あなたは洗面所で
数を数えている

川幅の狭い橋を渡ってきた、と
わたしは告げ
手を握 ....
 
 
砂でできた掌が
記憶の水に
崩れていく
そしてそれを受け止めようとする別の
掌がある
赤茶けた鉄路は
臨海の工業地帯へと続き
大きくカーブする
その付近で
群生する草の穂 ....
 
あなたに似た人と
あなたの名前に似た名前の人が
あなたに関連のないことを
頁の片隅で語り続けている
数日間降雨の無い乾ききった道を
一台の軽トラックが
砂埃をまきあげて走る
そして ....
 
 
近所のフランス人が遊びに来て
ニンジンを食べて行った
日本のニンジンはとても美味しい、と
たいそう喜んで
お礼にエッフェル塔の置物をくれた
大きさからしてどう見ても
偽物のエッ ....
たもつ(1691)
タイトル カテゴリ Point 日付
夏は終わる自由詩510/8/5 22:09
折鶴自由詩710/8/3 22:27
ジャングル自由詩210/8/1 8:53
名前自由詩310/7/31 8:14
伝言自由詩710/7/29 22:21
金魚の餌自由詩410/7/28 23:37
ユスリカ自由詩410/7/27 22:59
素材自由詩410/7/26 22:35
毛が生えた家自由詩310/7/24 21:13
パラボラアンテナ自由詩410/7/23 21:57
明日自由詩610/7/22 21:23
冷奴自由詩910/7/19 20:36
消しゴム自由詩410/7/18 8:15
夏休み自由詩910/7/16 21:08
独り言自由詩210/7/13 22:21
嘘つき自由詩810/7/12 22:10
クイズ自由詩610/7/8 20:32
ハナムグリ自由詩310/7/6 23:33
花束自由詩810/7/3 18:36
道の記憶自由詩310/7/1 20:42
迷子自由詩1310/6/29 22:40
ファイル自由詩210/6/26 19:32
交差点自由詩2510/6/23 22:08
湿った窓自由詩710/6/19 21:24
白線自由詩1110/6/12 18:49
抜け殻自由詩2210/6/6 15:36
自由詩10+10/6/5 12:36
穂先自由詩610/6/2 22:41
不在自由詩6+*10/5/26 23:23
パリ自由詩610/5/24 23:14

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