母は毎日サンドイッチに
海をはさんで食べていました
そうすればいつか船に乗って
父が帰ってくると信じているのです

花言葉は覚えていても
花の名前は忘れてしまう
そんな母でし ....
冷たくなった朝が
空から落ちてくる

何か理解できないものが
パジャマを着て街路を走り続ける

軒下で洗濯物が干からびている
風景になることも出来ずに

右手で覚えている ....
 
 
今日、先生は優しかった
黒板に大きな
黒板の絵を描いてくれた
それから、ぼくらの名前を
ひとりひとり読み上げて
絵の黒板に
名前の絵を描いていった
校庭の先にある建物の方から ....
 
 
くつくつと転がる
三層に重なった
植物地帯の上
久しぶりに再会すると
眠たくなる
だから入ることはできない
週末によく見る節足動物の背中
残暑の日光に照らされて
あれはもう ....
つきがこうばん たべました
けいかん ギャングをついせきちゅう
あとの あきちはタンポポの
しゅうかいじょうに なりました

+

かたちのない としょかんで
かたちのない ほんを ....
 
 
眠れない道路のために
枕を置いていく
だから手紙を書きたいのに
便箋が見つからない
右手の方に流れている川は
蛇行を繰り返し
やがて左手の方に流れる
そのためには橋を渡る必要 ....
 
 
無精卵の内側から
殻を破ろうとする
判読不能な文字たち
その音だけが
暗く冷たい鶏舎に響く

昨日とは上空の風向きが違うのか
朝から火山灰が
あたり一面に降り積もっている
 ....
 
 
水底にオルガンが沈む
鍵盤で遊ぶコオロギは
青い魚に捕食されてしまった
戻ってきました
ポソポソと語り始める
あなたの口元から
いくつもの砂がこぼれ落ちる
あなたの内に広がる ....
 
 
水に汚れた草花
ヒトは抗弁を繰り返す
木漏れ日の中
黙とうの中
唇と弾とが交わる
契約は成立したのだった
外側からしか見えない
古い木枠の窓辺に
あなたが車椅子に座ったまま ....
 
 
枕元のバス停に
バスがとまる
幽霊たちが降車してくる
薄目で見ると
いつもと同じ顔ぶれ
時々人数が違うのは
シフトなどの関係だろうか
幽霊たちは寝ているわたしに気を遣って
 ....
 
 
弱冷房車の車両では
温度調整係がつまみを回して
こまめに温度管理をしている
ヒトたちはつり革につかまったり
しがみついたりしている
ふいに調整係の動きが止まる
背中が割れる
 ....
 
 
水に音がする
今日、記念日
心臓がヒトからヒトへと
伝染していく
いくつもの屍をまたいできた命が
測量会社の裏口を叩く
内から命の返事がある
シャボン玉は飛ぶ
空へと延びる ....
 
 
壊れたメトロノームの
壊れたリズムで
第一楽章は始まる
歪んだ旋律が
琥珀色のホールを満たし
それでもヒトたちは
祈るように席に座り続けた
やがて楽団員が一人また一人と
舞 ....
 
 
深い霧は晴れ
街やヒトを形づくる
様々な線たちが
再び姿を現す
言葉は辞書の中で
既に朽ち果てている
「幸せ」という
一語の印字のみを残して
鳴くこともなく
路上に何とな ....
 
 
都市の息づかいの奥へと
延びていく砂利道
書きかえられた公図の写しを
大事そうに抱えた男が
小さな石の陰でうずくまっている
眼の中を覗き込む
そこは既にもぬけの殻
わたしの数 ....
 
 
樹皮から分泌される
石英に群がる
葉脈という葉脈
と、忽然とヒト
背骨に埋め込まれた記憶から
逃れることもできない
鉄製の門扉は赤血球に錆び
こんにちは
いつかヒトは幼い代 ....
 
 
一団の土地から分筆された遊休地に
エンジンのない建設機械が放置されたまま
数十年が経ち
その間にもわたしの弟は
産まれてこなかった
だからまだ名前もないし
椅子に座ったこともな ....
 
 
人、水、それぞれに
順番
マネキン人形でもないのに
死んじまえと
死ぬほど言われたんだぜ
シーソーの話をすると
シーソーが嫌いな奴はすぐにわかる
シーソーなんて嫌い、って言う ....
 
 
小さな恒星が
子豚の側で燃え尽きた
最後は寒天状の塊になり
それもキノコのように溶けて
地面に吸い込まれた
そんな様子をぼくは
娘と隠れん坊遊びをしている最中に
まだ仏様の入 ....
 
 
汽笛が鳴って観覧車が発車する
ゆっくりとした速度で空を進む
向かいの席に座った初老の女性が
リンゴを剥いている
いかがですか、と勧められ
親戚でも無いのに半分をいただいた
リン ....
 
 
窓ガラスに
幼い指紋がついていた
指紋をめくると
それは昔の日記帳だった
歩道橋で終わっていた
日記の続きを書くために
歩道橋を最後まで渡り
階段を下りた
まだ小学生で
 ....
 
 
階段の気配がする海岸通りを
古めかしい山高帽の
大男が歩く
ふいに倉庫の角を曲がると
夏は男を見失ってしまう


+


本の敷地に生えた
時計草の実を半分に切る
 ....
 
 
大根の上に
小さな虹がかかっている
きみは虹を切らないように
器用な手つきで
大根を切っていく

飛行機がいつもより
低く飛んでいる音が
屋根の上にある空から
聞こえてく ....
 
 
グレープフルーツの皮膜に包まれて
団地のベランダなどから
沈んでいく
この町には地図というものがないから
日陰を歩いているだけで
まれにこのようなことがある

セミの鳴き声が ....
 
 
テレビでクイズ番組を放送していた
面白そうだったので
テレビの中に入ってみる
星空のきれいな高原みたいな場所に出る
子どもの頃、幸せな気持ちで
家族と一緒に来た気がする
振り返 ....
 
 
誰が決めたのかわからないけれど
いつの間にか
どこまでも一列に並べられた
みかんの上を歩くことになっている
一歩踏み出してみる
みかんは潰れ
小さな悲鳴が聞こえる
なるべく潰 ....
 
 
公園の水たまりに小さな魚が一匹いた
海水魚のようだった
昨晩の雨に迷って
ここまで泳いできたのかもしれない
このままでは水が干上がってしまう
魚は少しずつ弱っているように見える
 ....
 
 
水のノートに
垂線を引いていく
印刷された罫線と縦横になって
小さな枡がいくつかできる
溺れないように
慎重に枡に指先を入れてみる
体温より少し低い水の温度が
むかし一緒に寝 ....
 
 
夜汽車が乾いた舌を出して
すべての生き物の上を
通過していく
右手にいる花崗岩の軟体動物が
左手に移りたがっているのに
左手はまだ
公園の砂場で遊んでまま帰ってこない
雨上が ....
 
 
手の子どもが
粘土をこねている
いくらこねても
粘土は粘土の形にしかならない
粘土を裏返してみる
にぎやかで美しい色の都会が現れる
足の子どもは
都会に行きたがる
昨日草む ....
たもつ(1691)
タイトル カテゴリ Point 日付
航海自由詩910/9/17 21:48
ふくらはぎ自由詩810/9/16 19:52
黒板自由詩910/9/15 22:30
再会自由詩310/9/14 21:25
ファザー・グース(6)[group]自由詩8*10/9/12 21:28
積木自由詩410/9/11 12:50
誕生自由詩610/9/10 22:01
水底自由詩7+10/9/8 21:34
契約自由詩410/9/7 22:12
幽霊自由詩910/9/5 10:24
生きるって自由詩310/9/4 9:57
記念日自由詩710/9/2 20:26
ホール自由詩610/9/1 21:03
線たち自由詩510/8/31 19:46
砂利道自由詩610/8/30 21:25
代名詞自由詩410/8/29 21:47
粘土自由詩410/8/28 8:19
人、水、それぞれに自由詩5+10/8/24 22:21
隠れん坊自由詩410/8/23 18:54
汽笛自由詩4+10/8/21 22:31
エリーゼのために自由詩2510/8/19 23:01
時代自由詩710/8/18 21:43
ブリ大根自由詩910/8/16 22:01
グレープフルーツ自由詩310/8/15 14:49
回答自由詩410/8/14 13:16
みかん自由詩810/8/12 22:06
下り列車自由詩1310/8/10 20:17
波紋自由詩610/8/9 19:29
夜の虹自由詩210/8/8 15:03
ひと自由詩610/8/7 17:25

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