一匹のウマオイが
楽な姿で
息絶えていた
緑が
ひと際目立った
 
隣のビルディングから
人たちが出てきた
時間の話をしたり
何かを好んだりしていた
 
夏期講習が終わる
子供たちは飛行船
坂道を駆けおりていく

誰かの夢のように
安らかにうち上げられた
深海の魚を見るために
 
それから少し遠くにある
犬の耳を覗き込んで
ま ....
 
部屋の隅に
部屋の真ん中が
落ちていた

僕だけが
それを直した
 
昨日から渓谷の
セミも鳴かなくなった
 
 
紙の羊が
食べたそうにしていたので
紙の草をつくった
 
今日はたくさんの流れ星だね
 
あれはホタルさ
 
きれいだね
命みたいだ
 
 
砂漠に
雨傘が開く

長い人のように
午後だけが
遠くまで見える
 
行方のない自転車は
ふいにとまり

やがて
ぼんやりと朽ちた
 
 
 
男は昨日の
手柄話を始めた
 
その頃、野原で
女は鏡だった
 
何もないような空が
どこまでものように続き
 
インドから来た象は
黙って船に乗った
  
 
子鬼が
ざくろの実を食べた

僕はひとり
校庭で体育座りをしている

世界が夕暮れていく

どこかでまた
朝焼けをつくりながら
 
 
僕の舌に
冷たい
宿舎が建った
 
犬は犬の形を
少し崩して
それを見上げた

今日は良い日和なのに
窓などを開けて
海に行く人もない
 
 
命と
命ではないものが
同じ重さで
釣り合ってる

木陰で呼吸しながら
人はもっと
賢く生きていけた
 
午後、砂利道は続く
消しゴムでは
届かないところへと
 
 
靴が発光している
朝の
淋しいところで
 
漁協の職員が
咲いた
 
僕はお花畑の
人みたいに歩く
 
鳴き方を忘れた
紙の羊の代わりに
今日は僕が
鳴いているらしい

窓の外には
長方形のホテル

清掃局の車が
積乱雲を
斜めに横切っていく
 
 
 
採取した指紋が
すべて蝶になって
飛んでいった
 
鑑識係の実家では
今日も一日中
雨が降ってた
 
妊婦がひとり
味見をしている
長い休みの
か細い台所で
 
 
夏交番の
日陰
女は
ゼリーに飛び込む

僕はその人を
お母さん、と呼び
誕生日のような日に
日傘を贈った
 
まだ幼い車掌の
ポケットの中で
紙の羊は
長く生きられない

かつては命の一部として
穏やかな日の光を
浴びていた気もするけれど

めー、と
ひとつ小さく鳴いて
もう誰に
 ....
 
潜水艦の側で
男の子が風に吹かれてる
まるで交差点のように

滑舌が悪いから
今日は何処にも行けない

僕はシオカラトンボを
指で触るのが楽しい
 
 
水を降りていく
やましいことなど
何ひとつない

深夜、もういない父の
容態が急変した気がして
親戚を探しに出かける

栞のように
水槽が鳴ってる
 
 
夏風邪をひいた駅員が
プールの縁に立って
はしごを眺めている

咳きこむと
口の中で
戸籍は勝手に
書き直されてしまう

向こう側とあちら側が
波のように打ち寄せる
こち ....
 
 
冷蔵庫の中を
クジラが泳ぐ
今日は朝から
ジュースが飲めない
つけあわせの菜っ葉は
鮮やかに茹で上がり
わたしは指と指の間を
紙のようなもので
切ってしまった
 
 
 ....
羊とシーソー遊びをすると
いつも重い方が沈みました
両方が沈まないでいるのは
とても難しいことでした
わたしはまだ
言葉をよく知らなかったのです
 
 
+
 
 
眠れないとき ....
 
あなたがブリキの本を開く

かつて繁栄した都と
路地裏で生き抜いた猫の
長い物語が始まる

朝から駐車場を壊す音がする日
僕は電柱を売りに出かける

どこか遠くで
孤独に電柱 ....
 

屋根をつくった
もう雨が降っても
濡れなくてすむ

立ったまま目をつぶると
近くや遠くから
夏の音が聞こえてくる
いつもと同じなのに
いつもと同じくらい懐かしい

誰か早 ....
 
 
村田川の土手を歩いていると
おーい
誰かが僕の名を呼ぶ

振り返っても
きれいな夕日がひとつあるだけだった

僕の名前を呼んだのはおまえかー
違うよー、と夕日が答える
な ....
 
魚のために
椅子をつくる
いつか
座れる日のために
 
背もたれのあたりを通過する
ふと、足りないものと
足りすぎているものとが
少しずつある

雨に濡れた生家が
生乾きの ....
 
伸ばした舌の先に
ビルがある
冷たい窓枠、の震える
階段のない腕で
わたしたちは穴を掘り
整地を繰り返す
積乱雲の遥か下
茂る葉がホーム
ざわめく
誰をも騙すことない
黙秘の ....
 
 
コインロッカーの側に
コインロッカーがあって
そのことだけが
片隅のようなところで
どこまでも続く
何もない、の人が
鍵を開けていく
と、少しずつ
指はあやふやになり
僕 ....
 
白地図に雪が降り積もる
数える僕の手は
色のない犬になる
古い電解質の父が
真新しい元素記号を生成している間に
妹は今日はじめて
言葉を書いた
それを言葉だと信じて疑わないので
 ....
ありがとう
僕らの朝食
光あふれる幸福な食卓に
小型の爆弾は落ちた

ばらばらになって美しく輝く体を
ひとつひとつ拾い集め
元に戻していく
どちらのものかわからないところは
昔のよう ....
 
初夏の光
ひとつ前の駅で降ります
虫かごもないのに


+


栞はかつて
誰かの魚でした
本の中で溺れるまでは


+


夕日のあたたかいところに
古いネ ....
窓を拭いていました
ドーナツを食べるあなたが映っていたので
わたしは飛び込みました
泳ぎました
しばらくそのままでしたが
砂浜があったので座りましたが
どうやら無人島でした
何故無人 ....
指でなぞる
水の裏側
剥がれていく
記憶のような
古い駅舎
影踏み遊びをしながら
呼吸の合間に
母とひとつずつ
嘘をついた
砂漠に父は
キョウチクトウを
植栽し続け
一面き ....
たもつ(1691)
タイトル カテゴリ Point 日付
ペーパーシープ(緑)自由詩408/9/5 21:24
ペーパー・シープ(講習)自由詩508/8/31 17:39
ペーパー・シープ(部屋)自由詩108/8/28 6:43
ペーパー・シープ(流れ星)自由詩1208/8/25 21:07
ペーパー・シープ(午後)自由詩408/8/22 22:03
ペーパー・シープ(空)自由詩508/8/19 22:34
ペーパー・シープ(夕暮れ)自由詩708/8/18 6:21
ペーパー・シープ(舌)自由詩308/8/17 13:30
ペーパー・シープ(命など)自由詩608/8/15 19:30
ペーパー・シープ(花)自由詩308/8/14 11:24
ペーパーシープ(鳴き方)自由詩608/8/13 8:28
ペーパー・シープ(休み)自由詩308/8/12 8:29
ペーパー・シープ(日傘)自由詩108/8/9 9:10
ペーパー・シープ(紙の羊)自由詩608/8/8 8:01
ペーパー・シープ(指)自由詩108/8/7 14:51
水のための夜自由詩15*08/8/5 8:28
ビヨンド自由詩5*08/8/1 17:32
履歴書自由詩1408/7/29 20:09
自由詩3208/7/22 20:26
物語自由詩508/7/18 19:33
夏の音自由詩1008/7/17 19:14
夕暮れ自由詩408/7/16 18:57
ゆれる自由詩1008/7/15 18:48
ホーム自由詩208/7/9 8:39
コインロッカー自由詩8*08/7/6 20:14
化学自由詩1008/7/3 17:26
慰霊自由詩1808/6/25 15:47
海の伝言自由詩2508/6/21 17:51
ジューン・ブラインド自由詩4*08/6/14 10:28
キョウチクトウ自由詩808/6/12 17:38

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