朝、君のおでこにキスをする
そのまま頭蓋骨にかじりつく
前後逆だよ、と言うので
前後正しくかじると
痛い、と言う
僕はきれいな犬を飼って
周りの人に自慢したいと思った
午後のナイロビで
楷書体の委任状が
綴られている
天気予報は曇り時々雨
虫が入らないように
姉は海側の窓を閉めて
虫が入ると困るから、と
説明した‬
市民プールに雪が降る
ハムを食べ過ぎたと言って
嘔吐しているうちに
友達の一人は
立派な大人になった
紙のような声で鳴く鳥が
夜明けのある方へと飛ぶ
その頃になると
すべては塩辛く ....
 
 
ケント紙の家の中で
リンゴを煮ていると
蟻が集まってきて
椅子の傾きを直してくれる
サーカスのあった夜
話もないのに
冷蔵庫を開けた
 
 ‬
 
 
お金を数えていたはずなのに
気がつくと
銀行の人は月をつくっていました
せっかくなので
何もない空に飾りました
自転車が売り切れた自転車屋では
ジェットコースター
という名前 ....
71

右手に吹いた風が
左手に届く
200CCの献血
等級の低い列車で
ここまで来た
会議が始まる


72

プラスチックの空
消し忘れた電線の跡
眠るだけ眠ると ....
 
 
冷蔵庫を買いに出かけた 
途中、空港に寄って
パイロットの友人と会った 
友人はペットのモンキーと遊んでいた
モンキーは滑らかに動いていた 
餌も食べていた 
週末には海に行く ....
 
 
身体の中に
雨が降る
雨は水になる
集めると
水になる

川の字になって寝る
真ん中は
いつも私だった

結婚し、子どもが産まれ
いつしか右端で
身体を少し曲げなが ....
 
百葉箱に住んでいた校長先生が 
退職することとなった 
わたしたちはそれを寂しいことと思い 
お別れの言葉と
鯖を送ったのだった 
美味しい鯖ですね、と 
校長先生は美味しそうに食べ ....
 
 
霊安室に母が椅子を並べている
「みんな死んだのよ」
いつこの仕事に就いたのだろう
死んだ体を扱うように
丁寧な手つきで並べていく
手伝おうとすると
「いいのよ、毎日、お仕事、 ....
上りのエスカレーターに
幽霊が立っていた
ぼんやりとネクタイを締めて
小さな咳をしていた

駆け上がる人が
春のように
体をすり抜けていった
見えない、
それだけで幽霊だった
 ....
 
 
都会のカラスが
明方、ゴミをついばむ
世界は汚れる

汚れた世界は
まどろみながら
都会の夢を見る

都会の夢の中で
カラスは増え続ける

唐突に産声

夢は端か ....
 
 
物、その影は
量となり
嵩となる
影という影は
新たな影をつくり
高く目を瞑ると
擬音語のような
か細い音を立てて
雨が降り始める
わたしは先ず
折り急いだ
紙のこと ....
 
 
今日、豆腐は
朝から不在だった
テレビの画面でも
新聞や本などの印刷物でも
その姿を見かけなかったし
豆腐、という言葉すら
出てくることはなかった

妻との他愛もない会話に ....
 
 
豆腐のプラモデルを買った
部品が全部そろっているか確認した
思ったよりもたくさんの部品があった
毎日空いた時間に少しずつ組みたてた
その間に何通かのダイレクトメールと
公共料金の ....
 
 
水面、生まれたての木漏れ日
酸化していく時計と
ミズスマシのありふれた死

導火線を握ったまま眠る
わたしたちの湿った容器は
身体と呼ばれることに
すっかり慣れてしまった
 ....
 
 
カザフスタンから来た
優しい女性看護師が
僕の脚をさすりながら
もう痛くないかと聞く
もう痛くないと言うと
良かったと嬉しそうに言う
カザフスタンはどんなところか聞くと
日本 ....
 
港で生きてると
いろんなことがあるよ
と、港の猫は言った

港で生きてないと
いろんなことはないの?
と、僕は聞いた

港以外のところで生きてないから
よくわからない
と、猫 ....
食卓の上に
水の入ったコップ
そのすぐ脇を
ランナーたちが走っていく

誰も水を取らないから
ここは
給水所ではないらしい

台所から夕食の支度をする
包丁の音が聞こえる

や ....
 
 
ウミウシの背丈より 
大きくなった僕の子供が 
草原に立って
外国人になる 

痛みのない蝉が
辞書の中で鳴く
抜け殻でできた橋梁が 
丁寧語で崩落を始める
通訳の人は母 ....
 
 
テーブルの下に
豆腐が落ちていた 
原形がわからないくらいに 
ぐちゃぐちゃに崩れていた 
世を儚んで
飛び降りたのだ
窓を開ける
初夏の風が吹いて
部屋の中を涼しくする
 ....
 
 
世界は晴れあがっています 
わたしたちの頭は禿げあがっています 
この頭の表皮に繁茂している
おびただしい髪の毛がすべて 
アデランスだと言っても
あなたは信じるでしょう 
で ....
 
 
砂の喫茶店で
椅子を叩いているうちに
夕暮れとなり
列車は少しずつ走っていた

コーヒーのお代わりは半額
けれど労役が発生し
古くからの友だちはみな
去ってしまった

 ....
 
 
区画整理された明方の街を
アフリカゾウと一緒に駆ける
低体温の命を
ひとつずつ持って

やがてぼくらは眠くなり
街は
行き止まりになるだろう

それでも幸せだった
何も ....
 
 
夜、ベッドの中で 
妻はいつもより濡れている
ぎゅっと抱きしめると
ぼくの腕の中で 
あっけなく崩れていった 
豆腐だった
水切りが足りないことに
どうして今まで
気づいて ....
喉が渇いたので
醤油を飲んでいたら
目が痛くなった
目薬と間違えて
醤油を差していた
まるで
お寿司のように

空っぽになった
醤油を探して
東京を歩く
薬屋はたくさんあるのに
 ....
 
 
明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた

すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った

 ....
 
 
炎天下に日傘を差すと 
エイだった(魚の方の) 
図鑑に書いてあるとおり 
危険な棘に注意しながら 
そのまま差して歩く
エイは不機嫌な様子で
時々、乱暴にヒレをばたばたさせる ....
夜更けに植物たちの呼気が肺胞を満たし
ぼくはしずしずと座席におぼれていく
鶏頭の形をした虫みたいな小さな生き物が
呟きのように車内灯に集まり始めている

窓の外では乗り遅れた人が持て余し ....
 
 
ぬかるんだバス停で
いやらしい下半身を
露出した時計
ポピーの花束を持って
佇んでいる
金属製のモノを
口に含むと
すぐに射精し
その異物を手に吐き出せば
様々な言語の断 ....
たもつ(1689)
タイトル カテゴリ Point 日付
キス自由詩112/7/4 19:05
委任状自由詩112/7/1 21:38
夜明け自由詩412/6/30 19:35
眠い朝自由詩512/6/29 19:36
童話(月)自由詩412/6/28 19:42
「その海から」(71〜80)[group]自由詩612/6/26 19:35
型番自由詩2+12/6/23 17:54
自由詩712/6/21 20:04
卒業自由詩512/6/20 19:35
名札自由詩812/6/17 19:12
幽霊自由詩612/6/14 19:59
都会の明方自由詩312/6/12 19:59
自由詩812/6/10 18:48
豆腐の不在自由詩912/6/9 20:33
部品自由詩1312/6/7 19:51
湖畔自由詩812/6/5 19:55
カザフスタンの看護師自由詩912/6/3 19:20
港の猫自由詩812/6/2 18:10
給水所自由詩412/6/1 18:52
草刈り自由詩712/5/31 19:26
厚揚げ自由詩1212/5/28 19:21
頭皮行自由詩812/5/27 18:47
海の構図自由詩312/5/26 18:22
片思い自由詩312/5/24 20:43
湯豆腐自由詩9*12/5/23 19:18
東京自由詩512/5/22 19:30
冷奴自由詩1312/5/21 18:48
炎天下自由詩612/5/17 20:32
最終列車自由詩812/5/15 19:00
オーラル自由詩212/5/14 19:11

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