燃えつづけ光の穂になる音になるこがねもとめるけだものになる
穂の陰に白と鉛のうたがあるまだ見ぬ夜へまだ見ぬ海へ
曇りから水と光が去るたびにひとしく遠くし ....
ひかりがひかりに逢えるように
そうであったうたに戻れるように
ひかりがひかりになれるように
そのままの水を飲めるように
足にからまるまだらな音
消しても消しても残 ....
おりかけた踏切を越える数が
息つぎの数を超えてゆく
骨にそのまま吹くような
すずやかな朝
沈没船の数
鳥の数
波の数
星の数
誰かの何かになれる数
石 ....
横を向く指
くちびるの指
そっと押し分け
舌に触れる指
いつまでもいつまでも散りながら
消え去ることのできないもの
奥の奥にある赤いまたたき
にじみつづける音のかたち ....
空つかめ空つかめよと叫ぶ声かたむけるたび赤く咲く声
ふいに鳴る{ルビ雷=いかずち}の背に乗せられて紅もこがねもむらさきをゆく
眼球の影わたり鳥つらなりて夜の城門 ....
舟に舟のかたちに溜まり
宙を照らしかがやくもの
とくりとくりと
輪を描くもの
風が散らす雪のまわりに
道を創る歩みのまわりに
かがやくこがねの波があり
涙を涙に打 ....
曇へ向かう本
曇へ向かう本
忘れられた頁の
砂と波と息
羽に包まれ
石が流れつく
本は見つめ
火をふりかえる
雨が雨に落ち
空になる
手のひらの空
し ....
見えぬ鳥いだく重みに耐えかねて歩み止めし時そは飛び去りぬ
一枚を破いたはずが二枚なりお前をどこに葬ればいい
あなたにはあなたの石がわからないあなたの水に削れ ....
雪どけ水の流れる静脈
光の片目を両手で包み
生れ落ちた日の鈍色を聴く
にじみのにじみ
花の洞の道
雪の粉の服
笑みの鳥の羽
ひびきがひびきを
見つめにきている
も ....
陽は傾いて
粒の影たち
熱の在り処
闇のなかの
四角をまさぐる
目をさがしていた
水のなかにそれはあった
触れようとしたら
沈んでいった
今もそこにありつづける
....
光のにおいを
燃やすにおい
雪のにおい
水のにおい
空の青を掻く
音だけの吹雪
足もとにすがる
片羽の群れ
かがやきのない
氷の雲から
落ちてくる虹 ....
望まれない音の色とかたちが
夜明けのほうから降りおりる
まぶたの上のまぶたのかたち
ほのかに目覚めをさえぎるかたち
響きのなかに子らの手があり
母の行方をさがしている ....
わずかな凹凸が言葉をはじき
異なる言葉に積もり重なる
鳥やら 姫やら
肌やら 毒やら
木々のむこうをすぎる紙
たなびきは左へ
在るだけの音へ
まばたきのす ....
片方の手が火に花になり
もう片方の手が眠らず見ていた
寝床は静かだった
寝床は緑だった
熱の羽が取れ脚が取れ
ひたいとまぶたに降りつもり
また羽が生え脚が生え
手のは ....
向こうの見えない硝子の向こうに
歩きつづける何ものかがおり
ふと振り返り こちらを見ている
ひとつをひとつに吐き出しながら
空が鏡を燃している
たもつものなく
いとうも ....
花の名前をひとつ忘れる
波の音が庭を巡る
部屋の空をひとつ名付ける
花が花をなぞる
目を閉じ 聴いている
指先へ指先を唱うかたち
羽の輪を呑み
誰もいない明る ....
色が無くて
血で描いていた
緑の絵の具を
わたす手に触れた
春の花が
葉をちぎり
痛みに泣きながら
微笑み 差し出すようだった
血の枝に
緑の枝が重な ....
涙をぬぐう手の甲ごしに
おまえが見つめた火の生きものは
空に焦がれて死にかけていた
朝は目のようにゆうるり動き
世界は風のなかの風にたなびく
こすり
火を生み
....
海へ倒れる曇を見ている
曇から生まれる鳥を見ている
降りそそぐかけらと水の柱と
波をついばむ音を見ている
道の上の羽と屍肉
夜になる曇
夜になる曇
羽と共に降りる曇
....
鈍色の唱の季節をかきまぜて微笑み交わす龍とけだもの
視が視から離れるたびに近くなるけだものは視る光のみなもと
おまえには自身を射抜く弓がある行方知れない弦のけだもの ....
{ルビYou Suffer=ユー サファー} 硝子の飯喰え {ルビYou Suffer =ユー サファー}
You Suffer {ルビ心=ゴミ}と石くれ You Suffer
....
土を醒ます波があり
音は音のかたちを追う
水紋 はざま
ひとつ咲く花
ふつふつと赦され
指でたどりつづけている
四方が水の
{ルビ鈍=にび}の径
そこに ....
金を吐きます
ゆっくりと また
金を吐きます
緑です
ひとりしか居ない器を器ごとひとり呑み干す冷えた指もて
呑みつづけ呑みつづけても酔えぬのはただ両目から流れ出るため
道を燃し壁を燃す手を振りほどき歩む ....
雨に不安と不機嫌を飾り
原のなかを歩いている
遠く 近く
水の姫は咲いてゆく
坂へ至る午後があり
ふいに流れ落ちてゆく
遊びも笑みも
到かぬほどに落ちてゆく
....
逆さまの絵が文字になり唱になり降り来るを視るひとりけだもの
かけらからかけらを生むはおのれなり触れもせぬまま砕きつづけて
水涸れて見えぬ片目に見えるもの ....
首から下の感情が
水の底にひらいている
水は濁り
水は隠す
鳥が一羽
木守りの実を突いている
子らの悪戯な指と目が
雪の枝に残っている
ほのかなものが上にな ....
水は軽くなり
あたたかくなる
その道を通り
音は離れる
緑が
水を洗っている
映る景は減り
やがて失くなる
短い香を捜す指
見つけられたものは燃されゆく
....
つかんだ指のむこう側に
つかむものの無い手のひらがあり
こだまにこだまを描いている
思い出せない景色の絵葉書
置き去りにされた花束の色
河口の波と雲の色
紙 ....
ひとつ静けさ 眠れずにいる
泣いてしまうほど やわらかなもの
放りなげた願いを数える
断崖 砂漠
わたり鳥の背
ひとつのなかに 異なる目がある
朝と夕が
水面を碧くす ....
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