今 この瞬間、私の
魂の模型を造るとするなら
あの烏瓜とほぼ相似かもしれない
止んだ歌が まだ聞こえているうちに
あの人の髪の毛に指をいれたい
ボナールの赤を
敷布にまるく包んで、
心ある人間になりたかった……
陽の光が 目に見えない雪になって
町にふる午後 凄く かなしい
なにか次の出来事を準備していた
裸体たちは 敢え無く 黒炭の
テクスチュアの内にほどけて
やわい鹿も
二頭ばかり居る
私 という語は ざらりとした
塗料を風に削がれて
あおい粉塵だ
詩を拒むので或いは詩を映すので
建物はこんなにもあかるい
蒲鉾型の
窓枠のむこうが 硬い冬だ
そして瞳の内壁にそって
置かれた ひそやかな暖炉に
母らしき女が辛抱強く火をくべている
うたわないディランと
自殺をしないカート・コバーン
ビー球の 転がりのなかを
夕焼けが駆け抜ける
きみにあこがれる
いつか人生に
椅子を失くす日、
....
晴れた
青い ひかりたちのなかに
つくえが 落ち葉を待っている
いりくんだ緑にはずむ
からすうりのかなしみは
朱く 苦く あまく
なんども 熟れ ....
形の整った
トートロジーを枕に
おまえはねむっていた
安普請の 階段をのぼる
ハラハラと、曙光が、火山灰のように
壁に留まる 蛾を擦って……消える
....
the amazing, blazing lights
have started to orbit your sight.
so look at these magnolias,
swi ....
あなたがきて
雨がふった
かなしくはない
幸せでもない
木がゆれた
日が落ちる
あたりがくらくなる
街のかげが 夜になっていく
....
その途中で
錆びた窓は停まった
おおきな 古い瓦屋
やすでたちは疲労のように
みている
その途中で
砂埃は窓の面から
私たちの瞳に ....
青空にむかって
わたしたちは歌った
夜はながく とても寒く
深く 生きながらにして
かたちのなかで毀れていた
シャツをきて お茶を飲み
静か ....
わたしを欠いたまま
わたしを欠くことで
蛞蝓は 祭り路に垂れて
三十二歳の
女の唇のようなかたちの
乾きが 丸くひらく
信念の青さで糊をした
....
東京の歌は
唇のようにさけんで
凄くかなしかった
打ち棄てた愛が 不意に
わたしの頬を張る
日が沈み 胸が冷える
老いた男の
灰いろのまな ....
二月の
雨が こおっていく
あなたからの 一時間未満の
電話からの ことばからの
つめたさが こおっていく
ひとつも
かなしくない
ふるえ ....
ぼくたちの温度が
正しいのかどうか知らんし
きみの・ひとつを とりなよ
ホテル・ニューオオタニ
きみの・ふたつを とりなよ
ビーバップ・ハイスク ....
毀れたまま
ひとつの裸が
もうひとつの
裸を抱く
全き
炊飯器
女……
充溢する
欺きの、
夢、
箇条書きの
……沈丁花……
みえない、鬼
啜られた
白桃の……蜜
気を狂わせるほどに美しい
昏いので……みえない……鬼……
滅入る
ひ影
破裂音の
木像
(言葉なしで祈る)
団地という
語の 重量と
つりあっているものらが
そこらへんにある
昼間を 歩いて
菜を刻み
嗅いで
寝た
木造家屋の
窓に、夜 雨がふるえる
ながい髪に指を とおしていると
君はいつか居なくなるってことがわかる
蛇口から冷たい 水がおちてくるから
いつまでも 僕は ....
白い
四辺形が
かなしくさせる
街と
食糧と熱と
あなたが……
ぼくを かなしくさせる
光は 言葉ではなく
雲になって
あなた ....
{ルビ金=かな}ざるを日にかざし
台所の女は ほほえんでいる
苔色の直方体のなかで
いつでもない時間が
積まれていく
赤い車の
座席で
わたしたちは
部分的に
毀れた
雪がふり
たばこを吸い
腿にふれ
窓をぬぐい
寒かった
糸球になって いつしか
あお空へうかびあがっていった
幼年期のぼくらのなさけなさ
小さな 薄明るい唇の
きれいなおさげ髪の女の子
もう 全然 うつくしくは ....
平仮名で書かれたような
正しく間抜け向きの静けさ
油臭い中華屋で私は
漫画を読んでいてもいいし
回鍋肉を頼んでもいいし
目の縁が
かすかに痛い
....
ステンレス
の紫が、架橋に折れて
光のこなごなになった それを
私たちの眼が いま確認している
キーボードを叩き 文をうみだす私の
左手の小指がうまく回らない ....
磨り硝子の夢のなかの
喫煙所で ぼうとしていた
鳩たちの群れる高円寺駅北口
ふっていない雪は うつくしく
心の端のほうで消し去られていく
乳色のワンボックスカーが
庭なしの一軒家にとまっている
僕の思う以上に 世の中の人たちは
ひとに興味をもっていないと分かった
東京はとてもうるさくて淋しいと ....
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