港の岸壁のうえに座り込んで、足を垂れる。すべてが霞んだ空の下、私の足指は水に触れる、水に触れる。──思惟などはなく、重く空が地上との境界線をあいまいにしたまま、溶け込んでいく。それは風景のなかの私な ....
I
そよかぜがふく
冬のちいさなすきま
まわりでは雨がふっている
かさをわすれたわという
II
4色のセレナード
1つめはレモンいろの雲
2 ....
青菜摘みの乙女の墓は、ただの土くれの土饅頭で、その骨さえも焼かれなかったかもしれない。青菜摘みの乙女の墓は、ただの透明な空隙で、訪れる者さえもやがていなくなった。青菜摘みの乙女は、霊に囚われたまま死 ....
透き通った世界の境界には、透明な獣がいて、澄んだ夜を吠えている。明け方の明星を夢みて、夜明けの明けない空に遠吠えをする。透明な獣が夜空を嘆く時、そこには無限の連なりと重なりがあって、透明な獣を優しく ....
これがほんとうの左様ならなのか、いつもほんとうの左様ならなのか、それだけを尋ねている。左様ならのありかはどこ? いつかはほんとうの左様ならが訪れる。それはいつ? わたしを褒めてくれる人がわたしの周り ....
落ち葉を探して、歩いて行こう。落ち葉は桜が良い。桜の落ち葉は、花よりも美しい。落ち葉を探して歩いて行きましょう。希望は常に彼方にある。遠くにある虹が大きく、近くにある虹は小さいように、希望はいつでも ....
知り合いが増えれば増えるほどに、
切なさも増していく
そう教えてくれたのは、誰だったろう。
今はもう遠い場所にいるのだろうか。
ふり返れば、あなたの言葉だけを覚えている。
わたしはあなた ....
君の目のなかにある夢の滴を、
君と言う。
ただ君のなかにある夢だけを、
わたしは追いかけて。
それを光とは呼ばない、
あまりにも遠いのだから。
君はいずれ、
わたしを去るのだ ....
しろい砂浜の、
土のしたによこたわって、
あら、私はいつから死んでいたのでしょう……?
波の音がちかくに聴こえる。
じてんしゃのペダルを
1かいてんさせたら、
はんどるをクルっとまわすの。
かてぽんとおとをたてて、
すたんどをけったら、
みなとにむかってこぎだして。
都市のすきまかぜ
吹きこんだはざまから
顔をだすのは、
あなたと小鳥。
また、一つのことが終わり
また、一つのことが始まる
終わらない人生のように、それは終わらない
また、くりかえす……
命をつなぐ糸のように
私のつかんでいる一本の想い。
そこから ....
星になれるのなら、死んで
星になってしまおうと、ささやくのは
誰? 私という、古びた、下葉の上へ
雨粒がきれいに虹になって降りる。
崩れていた古城の壁、
流れていた、{ルビ街中=まちなか}の ....
ちぢれた{ルビ髪=かみのけ}が肩にかかり、
そのひとみは幻のようにとおくを見つめ。
装うこともなく、荒れた手は、
彼方のなにものかを追うようにかすかに持たげられる。
偉人を生みおとした晩に ....
花園は雨に憂えている。その{ルビ間=なか}を、
ミツバチが叫びつつ、跳ねめぐっている。
幾百もの花が、その実をちらしている。
地は、しゃがれ声とともに水をながす。
湖は{ルビ水煙=けむ ....
太陽。日ざし。朝。鳥の声。鳥の姿。新聞配達のオートバイ。園児達。お母さんが主婦に帰る。郵便配達のオートバイ。宅配のトラック。昼休みの鐘。木々のざわめき。帰宅する学生。さよならの挨拶。夕暮れ。夕食とその ....
そのおおきな階段をのぼりながら、かたわらをとおりすぎるとき、そこにすわっていたのは誰だったの? 小鳩のむれが波をうって空を灰いろに染める。── 印象派の画家たちなら、空をにじいろに描いたかもしれない ....
雨音ひとつ、ふたつ、ノイズのようで、
ふっているのかしら、
降っていないのかしら。
雨音ひとつ、ふたつ、シャコンヌみたいに、
ひらけば、触れられる、
窓のそと。
雨音、ひとつ、 ....
かれん。もくせいのはながさいたの。
かれん。ちいさなゆきのかけらだわ。
かれん。せっぺんのようにちらして。
かれん。ひくいしろいひざしのなか、
かれん。かたちとかげがとけたんだ。
か ....
ティーカップには、なんだかしらない花模様が描かれていて。
そっとつつんでわたしは手のひらを温める。
まるまったモードでロールケーキ食べたら、ひとりで眠る。
バイバイ、ディア・モード。
戸棚にクリスティン。
チュリーップのマリーメイアは、
野原で{ルビ潮=うしお}の夢をみてうたっていた……
つきなみさんがいちごけーき食べたい
つきなみさんのつきなみないちごジャム。
あ……
つきなみさんのつきなみなかたおもい。
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