カーテンを開ければ あたり一面銀世界
「朝食食べたら、雪だるまを作ろう」
ホストファーザーが誘う
「えっ!でも私会社に行かなくちゃ!」
「えっ!何を言ってるんだい?こんな日に会社に行くバ ....
改装をくりかえして
築四〇年余は建付けの歪み
隙間風が折角の暖房部屋に吹き込んで
基礎代謝低下のおいぼれは震えるばかり
まるで片田舎に建っている ....
主人公であるなら
殺されてはいけない
最初に殺される被害者は主人公ではないからだ
犯人か探偵であるべきだ
だが誰かが殺されなければ
犯人は犯人たりえず
探偵も登場しないだろう
つまり殺さ ....
木のおもちゃには
ぬくもりがある
けれどもそれは
物の扱いに手慣れた
おとなの語り
おさない子には
木は硬い
角を落とそうが
やすりをかけようが
木の硬さはなくな ....
新年会家出少女のウーロン茶
髪についた雪を払って
傘も持たずに街を歩けば
見慣れた景色は別世界
眩しいほどの銀世界
ふかぶかと残したはずの足跡も
振り返ればもう微か
念のため確かめてみたけど
両足ともにちゃ ....
光の子供たちが浮遊する緑野に
きっとこころの種もあるのでしょう
跳ねてはしゃいだり転げたり
悪さをして群れている子供たちに混じって
金色の繊毛におおわれてふわりと浮かんでいたり
葉に ....
かよわい肌の持ち主は
男のほう
繊細に消されていった
煙草の匂いは
指にも
首にも
移り住む
男を選んで
移り住む
男は
確かに直線的だ
けれども ....
地面すれすれまで押し潰されるバネ
チャンピオンのボディーブローをまともに受けて膝を曲げた挑戦者
獲物を見上げ
後ろ足に全体重をのせる猫
ベルリンの壁に隔てられた互いへの思い
....
焼き芋の包まれている新聞紙かすかなインクの匂いも食す
くくられた新聞紙の椅子の上あごひげという名の猫がくつろぐ
ちぎられて水にひたさればらまかまれほこりにまみれて新聞紙逝く
世の中の ....
インフルエンザの予防接種も
レーシックを受ける人も
信じられない
そういった君の足元で
細い小枝が折れる
冬がやってきたから
この森にも
早い夜の始まりを告げるように
針金のような ....
目立たないように、だけでは淋しいので一点ものの封筒を買った
案の定きみはヴィンテージ切手風のシールを息を止めながら剥がしていく
少し厚みのある封筒
80円ではきっと届かない
不規則なぼこぼこで ....
夕暮れの空を見上げると
今日はお月さまがいない
と思ったら
真上やや後方から呼ばれた
「ココニイルヨ―」
ふりあおぐと三日月
こないだ見たときは
真っ黒な空の真ん中で
薄笑いの口みたい ....
雨の中カラスが世間話をしていた
黒い仲間は
雨にむかって顔をあげてとんでいる
そうだ
カラスは雨をこわがらない
どうしてわたしたちは
雨にうたれるとうつむくのだろう
どうして
....
たとえていうなら 雪の降る夜
裸足でマッチを売っていた少女が 自分のためにマッチを1本灯すとき
人は それを
終わりの始まり
だったというだろう
あとは終わりの終わりが ....
「悪気はなかったんです
ただ、みんなを不幸せにしたかった
ただ、不幸せに・・・・」
なんか雰囲気出しちゃってるけど
悪気以外の何物でもねえだろ
堅気の生活にもそろそろ慣れた
しかしムシ ....
悲しみよ
世界に降り続ける悲しみよ
お前は可愛そうなヤツだな
みなに嫌われ憎まれてる
必要ないと言われる
居なかった方が良かったのにと言われる
ゴミ以下だと言われる
ずっと側にはいられ ....
共有出来ない秘密があれば
知らないことは減ってはいかない
誰かを傷つけないための嘘であれば
共有出来ないのも当たり前
秘密を隠すための嘘や
嘘を秘密にする真意 ....
あれも喰おう これも
と皿に盛り上げた品々
同じ料金ならば
というケチな根性
ではないのだけれど
食い始めて
ちらっと目に入る隣のテーブル
皿にはサイコロステーキが載っていた
....
年賀状をもらったら
ほめことばにくるんだ
苦言が書かれていた
つまり
頑張りすぎる貴女
見ててしんどい
そういうことね
それで
新年の抱負ができた
別に頑張ってないから
....
十六で嫁入りした祖母は
まだ娘だったから
近所の子供達と鞠を突いて遊んでいた
すると 嫁入りした女はもう
そんな遊びをしてはいけないと
誰かの叱る声が聴こえて来たという
春の夜 ....
(心配、しないで)
手を絡める
舌が這う
異質が触覚を支配する
追いかける
余韻
雨の匂いがするんだ
朝から
曇っていて
ずっと
帰りのバスの道途中に
空き地に放 ....
腰が大きく曲がった
近所のおばあちゃんが通るたび
あの中には何が入っているの?
と、母に質問して
そんなこと聞いてはいけません
と、言われた
大人はいつだって
ほしい答えをくれやし ....
花柚子を貰った
実家のお向かいの家で
段ボール箱3箱も採れた内
実家でいただき、
そこから、
わたしも鍋いっぱい分けて貰った
柚子は好き
柚子胡椒も好き
柚 ....
寝不足なのと
不眠症気取りの彼女
どうせ今夜も
綺麗事で汚れていく身体を
濁酒で洗い流すくせに。
虚しくなるのと
悲劇のヒロイン気取りの彼女
なんにもないのに
....
いつも君がいる夢を見る
未だ見たことのない君がそこにいた
夢の中では触れると消えてしまうけれど
今は夢から覚めても君と一緒にいる
夢にまで見た君が夢じゃなかったなんて
幸せだ ....
足掻いても
私の手は
届かない
着飾っても
私の姿は
映らない
話してても
私の声は
響かない
渇望しても
私の夢は
叶わない
分かってる
分 ....
昨日まで屋根が崩れ落ちそうな
廃屋があった場所が
今日は空き地になっていた
祖母が住んでいた石川のあの家も
父が建てた仙台のあの家も
今は私たちではない誰 ....
西陽射す放課後の第二音楽室
古びたオルガンが
窓際に押しやられ
やがて来る
粗大ゴミの日を待つ
かつてはだれかしら触れていた鍵盤にも
今ではホコリがかぶり
ただポツンと置かれた佇 ....
波のゆくえが
気がかりならば
波の言葉に
添いましょう
正しさに
包まれようもないけれど
同じだけ
誤りようもないならば
それは
素敵な所作ですね
波の ....
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