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一円の雪が降った朝
十円のゴミを収集する車が
難しい顔をして通り過ぎる
百二十円のココアを
二千九百円の手袋で包み
三円分のリップクリームを塗った唇に持っていきながら
それを見つめていた
....
わたしのあげた小さな声を
今か今かと待ちかねていたかのように
彼はわたしの身体からそそくさと出て行った
愛し合う余韻に浸ることもなく
そして満ちはじめようとした潮の流れが
素っ気なく沖合 ....
途中だった思案を開いてみる
また白紙になっていて
今日という日があるのはそのせいだ
記憶なんて信用できないもので
記録のほうがあてになるかもしれないと
毎日、一頁ずつ
日々を書き留めていて ....
プラットフォームの
割れた電光掲示板
傷ついた蛍のように
オレンジに
滲んで
ゼリー状の夜を滑りゆく
ゆるやかに
最終列車のネオン
行先不明の僕たちは
いつだって最後 ....
タイヨウが
くるくるっと回って ぱーーん
口をすぼめて
ぴゅーっと吹いたら ぴーーひょろろーー
歌が聞こえて
ふふふーーんの へーんの ぽっかぽかーー
ひらがなで
○ っ ....
肉が張り裂けている沈黙
情熱と諦めと冗談
焦げ臭い髪に放つ汚物
刺絡するのは御自由に
膚の皺にすらりと絵具
筆を使って詰る様にゆるりと
御覧よ、右腕が青い
血脈をなぞり腋へ乳房へ ....
うつ、という言葉が好きではありません
その言葉で
ああ、自分は、そううつというヤツなのだ、
と思えば
すこし、居場所をあたえられたような気にもなりますが
なんだか、その言葉ひとつで
自 ....
しんえん と呟きながら
浅瀬をえらんで 辿ってゆく
夢をつたうひんやりとした風が
時折 うなじに触れてゆく
誰かが指をつないでくれているような
そうでないような気がする
深淵
踏み込 ....
多摩川に架かる鉄橋を渡りきる頃
メールの着信を知らせる携帯の光が走る
両親も恋人と認める彼からのメール
簡潔な朝の挨拶に優しさ溢れる短いことば
先輩は幸せ過ぎるから
傍から見ると憂鬱 ....
まだ日のあたらない街灯が夜道を照らしている。
ネオンの光を辿って私の電話が鳴った。
シーラカンスからです。
「僕の骨を探してください」
そう言ってシーラカンスは言葉をおいた。
「見つけて僕の ....
妻が増殖しているのを
街で見かけた
その数はおそらく
億単位だった
そしらぬ顔で
妻が帰ってきた
一人だった
いつも通り
二人で夕食を食べた
お母さんが本当は
恋愛結婚だっ ....
ポットの注ぎ口から
授乳温度の液体ネコを流出させて
膝の上に置く
ネコは不定形
とろーり とろーり
湯気を立てて
うたた寝をしている
ネコの脳波はカップの上で波紋を立てて
き ....
とおくがこっそりと
ぼくにメールを送信してきた
とおくに行きます
雨の日は洗濯物を干さないで下さい
とおくの方では
誰かが
階だんを作っていた
インスタントラーメンが出来上がるくらい ....
地球が滅びるとき
進化が過ぎて
全種類のいきものが
一斉に空を飛ぶ
大気圏を越えて
少し離れたところから見た地球は
丸裸になっていた
そんな夢を見てしまったら ....
言葉のひとつ
近づいてきたら 追いやって
離れそうになれば 手繰り寄せている
縁側でする遊びのようで 意味なんてないのだけれど
笑顔の会話を 遠くにききながら
追い払われたひとの行方を ....
この手紙があなたに届けばいいと思います。
お元気ですか。
こちらでは、毎日少しずつ、何かが消えていきます。
壊れるとか、崩れるとかいうのではなくて、
昨日までそこにあったものが、今 ....
ひと房の
情事を食べ終わってしまって僕達は
ク・フルリ
とぜりぃの海で溺れているのです
{引用=見つからない緑の月を背に}
月曜の朝が嫌いだとあなたは言って
ル・クフルリ
と永遠をわらう ....
オープニング
どこまでも行く
つきあたりを右折
空港がある
教師のAさん(仮称)は空港を黒板に板書していく
重要なところは赤いチョークで
重要だがそれより重要度の低いところは黄 ....
夕刻
白楽百番地は混濁する
路地を行くたくさんの影
色はまだらに四方に吹きつけられて
球殿からもれこぼれる喧騒が
雑踏の常時音に伏す時
スナックカサブランカの孤独はゆるりとほどけ
....
アメン君が持つ無意味の王様
理解されようとされまいと
規格外それは不変の観念
(ほら、恋愛が科学で証明出来ないのと
同じ事だよ。要するに未知なんだよ。)
形容するならシヴァのピルエッ ....
やっぱり一人じゃないんだね
帰るところをくれる人たちがいる
胸を張って言える "居場所がある"と
そんなシリアスな気づきは
涙が出るほど笑ったと ....
さらさらと
お前は何しに来た
こんこんと
お前は何を話しにきた
しんしんと
お前は何を聴きにきた
さらさらと
また人々の掌に舞い降りてきた
....
ありがとうございました
上手くいかない人の名呼び
軽々去っていった
もうそんなことは
なしにして?
「つちやさん」
朝彼女がわたしを呼ぶ
「今日で辞めるのでありが ....
イチゴの詰まった胸に
あこがれてしまった
しゅんかんは、あの時の少女だった
いちご、買おうか。
好きでしょう
食べない?
ぼおっとしていたら
背中に今年はじめての
ひだまり
....
鼓動を知っている
急激に階段を上がり
寝床に入ると
生きている苦しみと共に
息切れと共に
脳を覆う
熱を合わせると
寝床が海に変わり
大海原を旅する船になる
鼓動 ....
元旦の空は
いつも真っ白い
何故だろうと見上げていると
西の方から
青い鳥が群れを成してやって来て
ばたばたばたっ
と次々空に貼りついた
瞬く間に青空が出来上がった
鳥たちはかちか ....
ジェシカ、
42口径の
悲しみを胸に
押し当てて
お前にいつか
言いたかった事が、
言いたかった事が、
あるんだ。
ビルの向こうから
何気ない日々とか
ありきたりだとか
朝 ....
足を拾いに行きました
海の匂いのする街でしたが
この街に海はありませんでした
足を拾いに行きました
この街にも海があればいいと
子供の頃から思っていました
父に海をねだったこともありました ....
波の声
かたりかけてくる
じゃまにならないように
ちかく、ちかく、とおく
足元をぬらさないくらいの
ところにぼくは
すわって
つかれてしまったよ
うずくまったよ
なにか答えてほし ....
乳白色の柔らかなフワフワした光が、
西の外れの森の外縁をぼんやりと浮き上がらせている。
ボクは森の中を進む、
光の粒子は葉の表面を乱反射してカクラン。
深緑よりも少し青味ががった木 ....
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