雑音まじりのレコードを絵にしたら
古いテレビの画像みたいになって
鳥と葉っぱの区別がつかなくなった
川べりを歩く ゆうぐれ
右の道が途切れると
橋をわたる
左の道が終わりそうになった ....
数式で埋め尽くされている短歌学習帳 静かな生活
繁華街首を絞めあう帰り道一人で買った大学ノート
地下鉄に紙を破って貼り付ける立てないくらい花の色です
すれ違う君が脱いでるスカートのほ ....
スーパーでも。
デパートでも。
コンビ二でも。
君が好きだったあの曲が
ゆうせんの他の曲に紛れて
普通に聞こえるようになるまで
僕は生きてやるんだ。
そう思って
玉葱を買う ....
筍の感情 同じ夜ばかり見ているはずの違う自分が
ウミウシを夕餉に出される漢字では書けないような場所に来ている
飛行機が墜落してる茄子を買う少女のようなまなじりをして
....
初夏の夜、首が痛くなるほどに
高い空を見上げて、
あれがかんむり座だよと、
いつかそう教えたのに、
あなたは忘れてしまった。
七つの星でできた王冠を、
あっさりと投げて捨て ....
一番深い香り
夢をみる
あなたの影に漂う
一番深い香り
私が注げるものは何だろう
沈みかけた夕日に
灰色のカーテンを浸せば
世界は爆発する
*
うつくしい言葉を残すのはやめろ
あれは悲しみで あれは俺じゃない
許されたものだけを
焼いて
猛るものは
まだ残るか
体温と同じ温度のことばがほしくて
私は冷えてゆく
冷たいことばが風になり
人は一瞬目をそらす
体温と同じ温度のことばがほしくて
私は枯れてゆく
乾いたことばが砂になり
人は一 ....
隠喩的な記述は、それがどれだけ通常の語法から離れているかによって、いくつかに分類することができる。
M1.社会通念上十分ありうる記述
例)桜が散った。
(受験に失敗したという意味)
M2. ....
砂浜になぜか
まるのまま打ち上げられたりんご
いつからあるのか
りんごはなかば透き通っている
食べたらひどくだめそうなのに
僕はそれを舌にのせる
のを逐一 想像する
おいしい ....
小さなナイフを握りしめました
最初で最後のするどい傷跡が
宙を舞いました
柔らかな時間に何の罪もなく
優しい沈黙に何の悔いもなく
それでも気づくと
私はナイフを握りしめていまし ....
髪の毛をばすばす切る。
背中の真ん中まであったロングヘアは
今はショートカット。
今日はベリーショートにして
髪の色も変えるの。
まるで
女の子だった自分を
捨てに行ってるようだ。
そ ....
手を結び子どもの顔して軽々と瓦礫の丘を越えるものらよ
君が見るわすれな草のみずいろが欠けたる空の隙間を埋める
散りさくらアスファルトの上なお走り側溝に飛び込みようよう息絶う
....
またひとつ橋が作られ繋がれど私はどこにも繋がらずにいる
階段の踊り場の窓すぎるうた渡り鳥の声かぞえゆくうた
道ばたの雪のかたちに触れるたび光ふちどる ....
脱ぐときは背中から脱ぐ春近し
目薬のまばたき世界を巡りゆく
歯の奥の穴に詰め込む笑いかな
にやにやと胃がさげすむ日空は青
とどこおる想い手のひら解き ....
雨。
月曜日はいつも雨。嘘、
でも雨が多い、
僕の黒いバイオリンケースが濡れるから。
黒くて安いケースに入ってるバイオリンも安っちい
先生のバイオリンはとてもいい音がした。
雨の日にい ....
さかさまつげ と診断され
父に手をつないでもらって
眼科に通って いた頃
診察してくださった先生は
遠くをみつめなさい と言った
遠くの山の緑 遠くの景色を
とても 眼にいいか ....
中庭に緑の影を落とすのは独りのために建てられた家
階段と蔦からむ窓ゆらす音めぐりめぐる手すがた持たぬ手
門と門くぐる者なき中庭に降る雨のよな鳥たちの影
....
消えてゆく瞬間に目を開けると
そこは青い草原で
私は少しずつ目を覚ます
私を溶かしたものの正体を
忘れることで
私は再び瞬きをする
また少し色が変わった
青い草原で
溶けて ....
いつだって、
手の届かないものを欲しがる、悪い癖。
あの光に過去を思い出そうとしても、
それは凡て幻です。
夏になれば、
夏になれば、
夏になれば、
夏に、ねえ、
....
原に舞う少女の肩に髪の毛に見えない蛇がうずくまる午後
くずおれた樹と鉄塔は野に沈み過ぎゆくものの夢をみている
花ひとつ口に含んでまた戻し蛇と少女の無言のくち ....
フラッシュが焚かれて君は三歳じゃ作れなかった微笑みをする
「帰ろうって決めたのはいつ?」「おとといの君の電話が二度鳴った時」
空なんて仰がなくたって小銭入れの中に銀色の桜ひ ....
1.
かみさまは、どこですか。
2.
かみさまは、どこですか。
道すがらたずねると
あっち、と指をさした人がいたので
ひたすら あっち、に向かって歩いた
歩いて歩 ....
雪のないアスファルト踏む嬉しさに駆け出して跳躍 春が好き
こりこりと先のほうから順番にリズムとられる 竹の子が好き
{ルビ冷酒=ひやざけ}と桜とおにぎりがあればふわりと楽しい 御花 ....
僕の棺桶は
宵の田圃に
似合うと思った
ついでに
さびれた電灯も
足しておこう
君と手をつないで見てる赤い空 春の毒皿どこまで喰らおか
満ちてゆく月を恨みつその日まで素知らぬふりで花摘む逢瀬
かの人を心で百度斬ったとて力なき手は髪を梳くだけ
つい ....
行秋や抱けば身に添ふ膝頭 (炭太祇)
ところにより最高気温30度を越える場所があったりして世間は春たけなわなのだが、静岡の桜はやっと三分咲きというところで、佐々宝砂の気分はいつものごとく暗く(? ....
着込んだ老人が
踏切りを渡りきれないうちに
死んでしまうのは
電車は通らなかった
車は突っ込んでこなかった
風は吹かなかった
杖を玄関 ....
13階建てのマンション
焦茶色の非常階段
オレンジ色のバスケットボールが
弾んで落ちる
送電塔の電線が
切れて
絡まり
踊り場の縄跳びの少 ....
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