何を思い出せば
幸せになれるというのだろう
始まりは
遠い海の底の夢でした
船底を擦るようにして
人は、人は旅に出て行くので
いつか大きな音を立てて
傾いていく私たちのために
....
わたしは幼女になって
あなたに誘拐されたい
ひらひらと
垢ずんでいく赤いスカート
ひとこともはなさない
あなたは
それに気付くことも
ない
わたしたちは
いつか家 ....
真っ赤なポストを死顔みたいに撫でると雪
灰踏み固める笑顔第二波期待して
テーブルを隔てて海と侵し合う
降りるあてのない壁の上歩いている
暁の尖端で虫が震えていた
悲報掻き ....
夕暮れの残照に透きとおる
樹々の枝葉のように拡がった
私の末梢
手のひらの静脈
幾度となく
訪問する季節を測り
文字にして書き写し
そしてこの夜の連なりへ
伸ばされた白い片腕から
一 ....
{引用=
伝えたいことがないけど帰らない 歌う自由が僕にあるから}
ギロチンが雨の代わりに降る夜に野外ライブは実施されない
陽の当たる時間短いこの国はかいわれ大根生えたス ....
奴隷らの金歯くすます誕生の飛沫
茶したたる階下を泳いで出ていく
土踏む葉に涙し たかが宿命など
足を損い渡せぬ絵画に群れなす御魂
山よりもクレーン高い場所から息
逆流に佇 ....
十分ほど歩くと海がある
そこに行くまでに魚屋がある
食べられるための魚が置いてある
あなたはきっと
今でも
魚の目を見れず
逸らして自転車を軽やかに(でも重々しく) ....
*‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥¢‥‥‥★‥‥‥‥‥‥★
全ての光を呑み込み、その美しい味を咀嚼する
*‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥£‥‥‥‥‥‥★‥¢‥★‥
真っ黒の恍惚、ヴェルヴェットのジャケッ ....
オルゴール火口そばに音ごと流れんとす
ねむりに沢 よこたえて仮に香る肉体
石室の闇に消えゆく滑降痕
月に目を奪われ充血している月
飛ぶなどしてつまさきをこころにのせる
凧 ....
好きで好きでどうしようもない詩がある。教科書で偶然その詩を見つけた、詩のことなど何も分からない当時十二歳の少年を一発で虜にするような詩だ。中学校の国語の教科書に載るような詩だから、当然 難解な詩句など ....
帰ります、とメールをしてきた君が向こうから全力疾走で
君の重さを受け止める。お姫様抱っこ?もう少し痩せてからね
人ごみに紛れこむとどうして私だけがここにいないんだろう
....
息止めてトランペットを組み立てる
菜を並べるまっすぐ雨になるように
遠くのビルを飛び降りる無数のドミノ
日没に窓砕かれ見え出す透明街
誰彼の名前叫んでねじまく熱
鮮やかに ....
もう少し
幸せなときに
偶然 会おうよ
氷河の飢えに近寄り呼吸差し上げる
火事近隣に何らかの予感ボタンを袋に
車内から傘を差す子ら笑いつもげつ
ふと硬い光にぶつかる朝を見上げる
山小屋をダンサー過酸化して踊る
....
霜葉ふむ皮のブーツの小気味よさこのままいつか見知らぬ冬に
窓ガラスくもる吐息にだまりこむ人のしぐさのその残酷さ
冬{ルビ薔薇=そうび}あかい棘さす指先の血のにじむ{ルビ孤悲=こい} ....
冬の月中天にさしかかるとき人魚は難破船を{ルビ欲=ほ}りゐる
憎しみに冴えたるこころ煌々とはげましゐたり冬の満月
冬月が鉄橋の上に待ち伏せる窓にもたれる男の額
....
{引用=ピッピだっけ?窓の隙間に北風がこぼれるような素敵な名前だ}
なんで今日は羽根が開かないって、ああ、マイナスだらけの最低気温
君の目で体透かせば黒い部分のたくさん出来る季節がきた ....
来賓は枝を内蔵したカナリア
倒れた門の影が立って入口
電報打つ行方不明者の虚ろなバリトン
雪塊囲む石 消えゆく 一時間毎に
無心の蔓の侵入百年間許す
ペガサスの腹筋白く雲 ....
大冬木細き枝より影となるむらさき凍りはじめる空に
{引用=一九九七年一二月二六日}
夕暮れのスケートリンクすみれいろ映画のフィルムにひとすじの傷
吹きさらしお腹の弱い星たちが
....
この街を見上げるいつかを歩いている
夕焼けを毛布に焼き付けて夜の火
ハンカチ横切る誰かの頭上を傘で愛す
全ての弦こともなげに切れ黒い目のヴァイオリニスト
星雲を気配として佇む地 ....
カラーテレビに色とりどりの濾過映る
策尽きて月待つ村の異様な過疎
逆さまの鉄塔の中を渦巻く石油
墓殴る顔の形に変わるまで
二階から鉤爪と少女の嗚咽
前頭葉にアルミ箔貼られ ....
「憂国」
(次は右、今度は来てね約束よ)宛てなき知らせ流れて割れる
「橙火」
オレンジを投げつけ投げ捨て部屋の中 炎で胎を焼き尽くせたら
「岸」
春彼岸 何かを背負い行く乙女 ....
綿眺めて暮らす明くる日も明くる日も朧
不慮の隣人また白黒に配信され
キリツキリツと鳥が鳴き針だらけの天井
米量る音血の減る音が手をつたう
動力装置をちぎる人形たましい見えて
....
立ってる君、座っている僕、違う遠さの水平線を見てる
洗濯物干しといて私ちょっと銀行強盗してくるから
ごめんなさい、なら何度でも言います。謝罪と反省はただなので
....
さよならと書けずにsayonaraと書く僕らのポエムは今日も悲しい
鼻のにきびをさっきから気にしてるあなたは僕の大切な人
誰にも食べさせないよと子牛を抱きしめ泣いた従兄弟と ....
白黒の無声映画がきりきりと巻き戻されて冬が始まる
泣き方が子供みたいだ やわらかい頬に吹きつけられるあわゆき
バイエルの何番だっけゆうぐれに似合うつたないものばかり降る
....
からっぽの川に背中と角が見え
致死量の置き絵またの名を個展
扇子に隠れる微笑と極北の流刑地
痩せ細る身で貫く廊下のスープ冷える
見たことあるよこの火事このあと親が死ぬんだ
....
いつの日の窓辺に聞いたとおい歌
盗んで消えるおもいでの耳
汽笛すぎ残されゆくは草鉄路
待つだけの駅呼ぶだけの風
なぐさめを知るか口笛おおぞらに
心を放 ....
どこにも行かないバスに乗りたい。君の拙いお弁当を持って。
雑草といっしょに雑草以外のものも抜いた真夏の裏庭
家に帰る途中、下水道工事をする父を見かけて手を振る
ノック ....
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