何年も
荒れはてていた庭に
野菜の苗が植えられ
植木鉢の
マリーゴールドが置かれた
母と父が水をまいて
コンクリのように
馬車道のように押し固まった土を
いくぶんか、柔らかくさ ....
洞穴がある
洞穴は洞穴じゃなかった
洞穴は、山か土か岩か。
洞穴は地球。
地球というよりは出来事
洞穴があるのは
洞穴を見つけたから
洞穴をウサギが横切る
洞穴に ....
五月のある晴れた日
思いつきでスウィッチに触れた
何もかもが滑り出し
ある部屋に私は辿り着いた
6月のやっと訪れた静かな夜
私は揺れる影に気が付いた
いつの間に ....
濁った瞳孔の中で赤い金魚を飼っていた君
祭りの時出店の親爺に貰ったらしい
餌の代わりに角膜を貪る赤い金魚
くすぐったいと君が笑った
夜を飛ぶサーチライトをUFOと信じる子には光るシールを
映写機に撃ち落とされた銀幕の穴の向こうの月が綺麗だ
始発にて人気女優のクローンのような女と飛行場まで
新品のアメリカ製のス ....
憧れのシャロン・ストーンのポスターの鼻のところに画鋲が二つ
七月の炎天下での朝礼は戦争映画の軍隊のよう
摩訶不思議ニコラス・ケイジと担任は同じハゲでもこんなに違う
汗だくの機材 ....
ちょうど何処まで行っても追いつけない陽炎のように
安寧の地はますます遠ざかるだけだ。
コノママデハイケナイ
でもあたしはまだ貴方を憶えて居る。
買い物籠の中にはチョコレート
とコ ....
昨日までは夢だと言う
あなたは夏に向けて静かに融解していく
水をたっぷりと含んだ世界で
それはとても自然なことのように
梅雨の中にいる
紫陽花が咲いた
午後にゆっくりと傾斜 ....
きみがさかなになる週末さしのべた指さえ背びれの端かすめゆく
「あいしてる」吐き出す泡の数かぞえ「さようなら」にも見まごう深み
すべての色が吸収され青だけが残る孤独に想いを置 ....
眠りの中心にたたずむ
黒いしずかな球
その球を無垢な白い身体で抱きしめて
いつまでも眠っているのは誰だろう
遠去かる陽がうなずいた草の輪にやがて降り来る雨のふちどり
痛む目となだらかな背を持つものは皆それぞれにぽつんとしている
ひとりだけ此処に居ること奏でれば返る応え ....
春の花ほつれゆくまま雨模様
現し世のなべて二重の涙かな
雨の舌双つの蝶を行き来する
手のなかに生まれ滅びる己かな
留めおく術も失くし ....
六月の
曖昧な空の下
白くたたずむ部屋
横たわる私の身体から
刻一刻と
鼓動がこぼれ落ちる
けだるい指で
クロニクルのページを繰る
季節は私には
いつも晩くやってくる
忘却 ....
知らない足音がわたしたちを追い越し
立ち止まっていることに気づく
群れるものたちのすべてが
居場所を持っているように見えて
小さな声でいることに
少しだけ疲れて
彩られた樹木たち ....
残していったものが
背中でまだ疼いている
一日の始まり
蝶のような揺らめきで飛び立っていったのは
形にならない荷物を抱えた人
遠くへと呼びかけた
朝の挨拶をすり抜けて
ここで何か ....
左川ちか作品のアーカイブです!
全詩集が手に入らなくて泣いてた人は、読みに行きましょう。
そうでなくても行きましょう。
http://soredemo.org/archives_sagawa ....
窓枠の内側だけがすべてなら世界も朝もはねかえすのに
目をとじたままたしかめる左側まだだいじょうぶ黎明の時
暁の別れとともにおとずれるコーヒー2杯の蒸気する朝
ペダル踏むか ....
僕は誰よりもはやく
今朝を発見したかった
遮光された窓の外を
僕の両足だけが駈けてゆく
(街と空は素顔で目覚め
朝陽からは人々の匂いがします)
教室で心くだいた
日々も過ぎ
今日はすずろな心地です。
いまや厚い雲壁の鎖はとかれ
世界はつめたく
何も教えてくれません。
それは幸いなるかな…
....
{引用=高速で回転している花束を見ている朝の洗濯機の前
小窓からしゃぼんの香り飛び出して空に散らばる雲の石鹸
仰ぎ見る雲は雨雲どんよりと黒い何かをぬぐえぬ散歩
....
電話たたむとくしゃって言うでしょ、くしゃって、きこえた?愛じゃないのよ?
複数のエスを忘れてあたしだけ あたしs チョコレートsssくらいいる
はじめてのひとってそれはひとだっ ....
シーソーと電池の切れたラジコンときみのなみだとそしてさよなら
かくれんぼ3つ数えて工場の敷居を越える(サンタはいない)
この町で一番長い煙突が君と僕との待ち合わせ場所
この町と ....
俵万智さんの『短歌をよむ』(岩波新書)で万智さんは自作の俳句を短歌に作り替えている。
{引用=
使用済みテレホンカードの穴冴える
使用済みテレホンカードの穴冴えて思い出せない会話いくつか
....
今日は月夜かと思ったら。
空にあいた穴からボトボト蛍光色の液体が流れてきた。
筏でも作ってあの穴まで漕いで行ってやろう。
穴はいくつも空いていき、様々な蛍光色の液が混ざり合って
風景が ....
メキシコでUFO発見されし日に生まれた子らが今日成人す
制服で歩くふたりにもう僕はなれない春に煙草をふかす
「やり残しリスト」を胸に掲げつつあと一年は生きんと思う
目覚めると言 ....
【贋作】『サラダ記念日』
女宛送る手紙に『友情論』を引用してるだあれあなたは
愛告げてしまいたけれど遠景の似合うあなたをしばらく惜しむ
「その歌はよせよ」と君がぽつり言うこ ....
金魚もいないのに
君は金魚鉢を買ってきて
それから金魚の餌と
水道水の塩素を中和する
透き通った小さな薬品も
買ってきて
それでも結局金魚鉢の中を
金魚が泳ぐことはなかったのは
....
俳句・短歌入門を思い立ってから半年あまりたちました。最初のうちは両方並行してやっていくつもりだったのが、いつのまにか俳句ばかりに目がいくようになってしまいました。なぜかはわかりませんが俳句の方がおもし ....
明け方に氷の雨が降り注ぎ僕の帽子は蜂の巣になる
明け方にwww(ウェブ)で出会った人達は全員同じ顔をしていた
ドアが開き誰か来たかと思ったが猫が一匹立っているだけ
「あ、鼻血」 ....
それは
いまにもきえいりそうに
ふわふわと
ぼくらのまえにあらわれ
ながれにおち
みずいろにひかりながら
ながされていったけれど
あのひ
だれにしられることもなく
ひ ....
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