あなたがするり
と躱す度に
僕の身体は
曲がっていきます
人を遠ざけそうです
喉が貼りつきそうです
薄い枯葉のようです
水を飲ませてください
あなたがひらり
と逃 ....
青い花だけの庭を作ったら
寂しいだろうか
なら、
かすみ草を添えておくことにしよう
蛇が住みつくほどに茂った庭に
猫の鳴き声
人間に
何の用だい?
それもこれも
目に ....
呼吸したり
成長したり
引き潮を待ったりしてたら
20億年
あっという間に過ぎた
海底では
あらゆる生物が
地球を
ぐるりとくるんでいる
海はまた
それをまるごと
く ....
私が真冬を歩いていると
太陽の童貞が落ちていた
私はそれを慌てて拾う
そして忘れてしまう
私が真昼を磨いていると
青空の処女が堕ちてきた
私はそれを慌てて隠す
そして再び忘れてし ....
使いが来たら
病院へ行くことになってた
アル中のあなたが
最後に入院した病院へ
肝硬変
だけ
じゃ
ないみたい
だね
いろんなこと教えてくれた
年上のひと
体に心に
消 ....
夜のダンス教室に
老いた男が
ひざまずき
顔をあげ
左手を胸において
片手をさし出している
誰もいないのに
ジェリーフィッシュのように透明な空を見上げて
ただ真っ白に漂って
雨に髪を遊ばせて
わからないように雲に心を流した
そしてあたしは深い海の色にまで透き通り
ひたすらに君の帰りを待ったんだ
....
帰る場所はないくせに帰るわって私は言った
引き寄せてもらえるのを待っているのに
引き寄せられると急にイヤイヤ
ひとりでいるとふたりでいたい
ふたりでいるとひとりにもどる
ひとりでいると気 ....
いつまでも
と誓いをたてるにはあまりに幼すぎたのだ
姉は朝食の後片付けをしながら
思い出し笑いをする
覚えてもいない妹は
今年初めて夏服に袖をとおした
どうにもやるせない自転車です。雨水の玉つぶてなサドルの革を「そうでもなく茶色だ」と言って、拭き取ればままよ、と走りました。光、スロウ、アウェイ。そして溶解するするりとした残像を肴に、ウィスキーに言い訳 ....
僕たちの乗った観覧車が
一番高いところまで来た時
急にガクンと音がなって止まってしまった
故障したらしいが
彼女は焦る様子もなく
微笑んで風景を眺めてる
透き通った空は青く
行き ....
緩やかな翳り
窓枠を溶かす
鐘のこだま
スピーカーの喚声
宥め掬う
夕方という
懐かしき翳りに
独りが
飽和する
夏前に夕涼み用の長椅子を作ろうと思い立ち
道具を探しに戸の開きの悪い物置に
金槌、鉋、釘 ・・・のこぎり
柄に赤いビニールテープの巻いてある
癖があるのに手に馴染む
ギーリゴッソ ギ ....
あの雨を色に変えるには
少し時間がかかります
迷い花
どれもこれも
本当で
一晩ごとに
迷ってしまう
あの雨を花に変えるには
あと少し時間が必要です
ためらい花
....
水路に打ちつけた
足
あるいは カラダ
案内いたしましょう。
永遠の少し手前
果てのない海の
目印に
鳥や魚たちの旅は
今この時もなお続いている
なにを目印 ....
な〜んにも
かざるものをもたずに
うまれたままでわらっている。
眸がわらっている。
ふれれば
こわれそうなひかりが
とことことことこあるいている。
眸があるいている。
ちいさく ....
ざ・・・ざ―――ざ・ざ・ざ――
雲っています。どんてんです。
いちごが売り切れています。
横断歩道に吸い込まれそうです。
いつものように歩くと
危うく、車に引かれたであろう雀を
踏 ....
包帯の白い左手{ルビ空=くう}を切る もいちど翔んでみせようか? そら
二人で地下室に入り
暮らそうか
そうね
窓
なんていらない
あいしてる
あいしてる
まるで二人は
日差しを惜しむように
ひたすら
気がついて
しまったから
....
どこか
いま
どこか
知ってるけど雨
降ってるけど
存在感覚かな
あんまり
ない
傘あるけど
ひとあるいてるけど
ねこ
首筋かいてるけど
おとこ
あくびしてるけど
....
つゆやみの夜
降りしきる蛙の鳴き声
このたくさんの鳴き声の中にも
さみしい蛙はいるのです
呼ばれているような気がして
サンダルを履いて庭に出てみると
蛙の鳴き声が辺りを包みます
白い ....
空くはず無いと思っていたのに空いた場所に
キミが寝る前に羽織るパサッりした服
部屋を見ればドコで何したか全部わかるのに
本体が消えちゃった今、そんなもの残されてもなぁ
一つ一つの形跡か ....
きぃ
きぃ
きぃ
身体ごと
時間ごと
空に放り出される
日常の中で
くすぶった思いを抱えたままの
私を放り投げる
留まろうとする
観念 ....
沈黙の闇に寝そべり
ああ此処も
宇宙のどこかと
耳を澄ませる
海までの八号線はいつも夏 湿った空気と寂しい人魚
けだもの
かぜ
に
そよいで
いる
毛
だもの
ずいぶん
ながいときがすぎたが
きょう、やっと
ふたりは
わずか五ミリほどの
ラビリンスを
うんだ。
ちいさな
コンクリートのすいそうで
ちゅうにうきながら
まようことしかしら ....
このバスはどこに行くのですか?
運転手さんに聞くと
どこにも行きませんよ
と答える
もう走り出しているというのに
どこにも行かないとはどういうことなんだろう
不思議に思っているところで目が ....
その日から
大きな穴や小さな穴が
空からぽたぽた降ってくる
気をつけていた
時々空を眺めては
ふと気を抜いた瞬間
まんまと私ははまってしまった
受話器を置いた直後のことだった
....
足の裏に体重がある
芝生は必要な分だけ沈む
暗がりの松林を背に湾岸高速が走る
ゴミ箱と水道の蛇口には距離があって
その間に
水色の作業着の男が一人立ってい ....
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