振り向くと沖に知らない人ばかりになってこわい
貝の表面についてる回虫みたいな模様がこわい
高波が何でも持っていこうとするからこわい
クラゲが知らないうちに沢山わいてこわい
あが ....
そらが
投げかける光を
見なかった
膨らんだ
ほおぼねのあたり
あかく火照る
夏の痣がひりひりと
ひりひりと
うずいて
コンロのうえ
やかんから溢れる
湯気が
おも ....
ふと
くらやみの中にきみのてざわり
毛布をかけて
おなかの辺りをぽんぽんたたく
やわらかな毛はふしゅうとへこみ
きみのぬくもりはそこに ない
ねつけないよるに
きみのよんでくれる詩集 ....
あ
つきゆびは
いたい
流水になかゆびをひたして
いたみを
あらいながす
つきつきしびれ
あかくはれる
命のいろはなかゆびにあつまり
みずにひえる
ひじの
てくびの
そ ....
例えばね
繰り返し見たくなるような
キレイな足とか底無しのような海とか
そういうものを取っておけば
安心だと思いませんか
ゴロゴロしながらあくびをして
....
1.
目を離せなかった
首から肩にかけての線とか
ちょっと開きかけた口が
次に発する言葉とか
突然
こっちを向いたときの
....
多すぎる荷物から
ぼくに届け物があって
そこに宛名はない
マンゴーの月が、
高度をさげる
失速した被造物のあつまりが
またたくような夜に
吐き気をおぼえたりする
きみの虚像を打破す ....
September in the rain
僕の肩を叩く
さぁお行きなさい と
九月の雨は
いい匂いがする
暖かくてさ
....
私のものになって
何て言わないから
だから
誰のものにもならないで
夢の中の戯れには
自分で驚くほど
甘いくせして
....
理由をつけずに
君の元へ行けたらいいね
来ちゃったよ
何だか逢いたくて さ
笑ってみせて
....
大事なことを知っていって
大事なことを忘れていって
それでも何か残るなら
少しでも長生きを願ってね
闇に目隠しされて
明日を望 ....
只
明るい気持ち
楽しむ心を
失いたくないだけなのに―――
時間は平等に降り注ぐけれど
神様は
心にズレを
少しずつ
少しずつ
....
何もわからなくなってしまった
一緒にならんでいたんだ
同じ方角を見ていたんだ
いつも真直ぐに前を見つめていたんだ
右から左へ太陽や月が移っていくのを眺めながら
冷たい風のやってき ....
駅前の
立ち食い蕎麦屋のトッピングの
百三十円の
黒い汁に浮いたかき揚げを齧りながら
予感することと
予感された世界に生きることとが
微妙に喰い違う
駅前の
ガソリンと赤錆の臭 ....
家々にあかりが灯る
蛍火がちちちと
びろうどを
燃やしはじめた
白く浮かぶ
亡き王女のような
天主堂
つづら折の石の坂
青白く骨はひびき
さびしいひとよ
火の鏡を見なさい
生の意 ....
木漏れ日の美しいベランダの際で
娘ははしゃいでカーテンにくるまる
私の綻ぶ顔を誘い出そうと
自分の顔をわざと覆い隠すようにして
声を上げて笑う
南の風は
私の深い溜め息と溶け合って
....
真っ白な鳩が
すずなりに枝にいて
喉の奥でうなるような
少しだけのさえずりが交わされている
ぼろりと落ちる
土の上に
落ちたときには鳩ではなくなっていた
あっ
飛び立った
ば ....
夜の灯りに染まり連なる
紅くにじんだ雲の前に
誰もいない建物がつづいていた
記憶と 事実と 交響と
淡く静かな流れに沿って
目に映る火と
映らない火の
か ....
夜をひらく火のように
あなたがひとりひらかれるたび
わたしもまたひらかれます
冷たい湖の前で
空をわたる音の前で
野を分ける火のように
あなたが放った色として
....
水たまりに映るいさかいと雲を
雨がゆっくりとかきまぜる
人は過ぎる
空は過ぎる
水たまりの底のむらさきに
次の空がやってくる
鳴き声のように震える音が
どこから ....
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