わたり鳥の光のかたむき
水と草とに散ってゆく声
拾う者なく散ってゆく声
あたたかな隙間ある冬のはじまり
器にはまだ水があり
夜の雲を映している
緑を覆う緑の暗がり
....
靴の底が
磨り減っていくのも
気づかずに
空ばかりを仰いでいる
乾いた風に晒されて
いつの頃からか
哭ことをやめた
歪んだ骨の擦れる音か
褪めた血が流れる音か
ときおり哀しい ....
めぐっているのは
時ではない
願うこと求めること欲すること
は
知っていても
祈ることはいまだ知らないのだから
憧れるほどに
まなざしは遠ざかる
破滅的な情緒で
恋をする ....
じわり じわりと
滲んでゆく景色に
何も浮かばない
黒いばかりの失敗の後にも
得るものは ありますか
歩きながら
理由付けに必死
空にも
この街にも
何も無かった一日 ....
海岸にうちあげられた貝殻は
まるで磨かれたつめのようでした
わたしはその上を裸足になって
割らないように歩きました
もう冬の寒さの中
波しぶきが雪のように舞う日のことです
痛い ....
足を 踏み出せば
いつでも 闇に
落ちる 覚悟の
自制 が たりない
自制 が たりない
あたしを ここに
とどめる ものが
ない
あたしの 大切が
ここに しかない ....
そしてそのままに
戯れる鴉天狗の群れを
見上げて夜空にためらい
ためいきをあなたにとどかぬようまるくまるく
焦点は足踏みをして
きざまぬように待っている
かがみに映された糸繰り人形の
....
朽ちた緑の壁の前に
きんいろの影がひとつ立ち
宙と土のゆらぎをつなぐ
水が流れている
手のひらから
光を呑む子のかたわらを
水は流れつづけている
無色の虹が幾すじも
....
みたすものではなく
うめるもので
うめつくされた
まいにちは
うめるものを すてて
みたすものを
そそがないと
もとには もどらない
わかっては いる
それでも
みたす ....
風に向かって 立つ 風に向かうと
風の音に 耳かたむける それはもう ずぶぬれで
ここを知り 飛ばされないよう
肯定するために ....
テーブルに突っ伏していると
教室を思い出す
騒がしいクラスメイトの声
10分の休み時間
顔を上げ現実に戻ると
雨が降っていて
久々に歩きたくなった
誰もが傘を広げて
顔の ....
夜と交わす記憶は
あらぬ方向へめくれてゆく
形の定まらない部屋に
ひとつまたひとつと
見えない炎がともってゆく
この身体のそばを通るとき
時の流れは
とまどったようにとろりと遅くなる ....
あなたは 息を しているのですか?
あなたは 呼吸を 止めているのでしょう。
私の 並べ立てた 言葉の 配置に
無呼吸の 弟子が
立ち並んでは
盲目の 仏像
に
問い掛けるので ....
「そういえば・・・」
あの頃の思い出は すべて煙のように消えていった
いまから思い出そうとしても 何も思い出せなくて
頭を地面につけてみても 何も出てこなくて
確かにあの頃 ....
たんぽぽのように ふわりふわりと あなたの所に行って
あなたのくったくのない微笑を見ていたい。
そこで 芽を出し ずっとあなたの傍にいたい。
・・・でも本当はありのままのわたしが あ ....
その言葉を背負っているからこそ、あなたであり
私でもあるのです
千の言葉を尽くしても、意味なきものかもしれません
それでも言葉を失うことはできなかった
万の言葉を重 ....
ほほほと笑う
かにかにかにと縋る
草臥れた王様たち
不満だらけの猫
傷ついたサソリ
みんなの地球が
細くなるね
鉛筆削り
お金が欲しいと
知らん顔する
僕の良心に
ふ ....
砂丘に行けば
明日があるかも知れないと
とぼとぼと足跡を残します、そして
砂を数えたのです
波を数えたのです
灯台の明滅を
数えたのです
星を教えてください
色 ....
にんげんを神の家畜だと思った人がいる
あるいはそうかもしれない
そんなのおかしいよと誰かはいうだろう
あるいはそうかもしれない
じゃあほんとの家畜はどうなるんだと
ニュースキ ....
誰かわたしを飼ってください
朝 かろうじて
そう わたしの耳がささやいたとき
ひとが姿を現しはじめた
かつて わたしがどんぞこで
まだ 形をとりもどしていない頃だった
....
嵐の夜
白と黒の町
{ルビ礫=つぶて}のなかの
廃屋をめぐるまわり道
螺旋階段に立つ人々
雨のなかの天使を見下ろしている
瞳から瞳へ落ちてゆく滴
水彩の ....
しがらみが
やさしくて痛い
振り切ってしまえばいいのに
そうできる青さが欲しい
飛び込む勇気をください
たった一言でいいから
振り切ったら
新しい世界が待っている
知っ ....
花をめざしたのか
鳥をめざしたのか
風が吹いて
たかだかと のぼり
雨が降って
ふかぶかと しみこむ
そうだ
火をつけて
燃やしたのだ
だから
大きく 大きく
ひろ ....
ふと 夜に出れば
中天に 月 あかるく
なおなお 夜 くらく
また 夜 さむく
何者が 見上げる月か
何者を 照らす月か
一度だけの いのちが
それでも ここで
どこにやり ....
手をのばせばとどく思い出の
目を閉じた手触りの
とりかえしつかなさ
誰も悪くない 罪
誰にもわからないのに 罰
今にしてみれば
もう陰っていた光の
ひとつひとつのしぐさ
....
からだをまるくちぢめて
うたえないうた
かけないことばを
つぎからつぎへと
もてあそぶまよなかに
ただひとつのこる
ほんとうのことは
かなしい
かなでてしまえば
もうそこには ....
夏ではない海に
沈めてしまえるものでしょうか
私たちが紡いだ金色の思い出
もう 灰色の霧に閉ざされて
セピア色の彼方の風景
春ではない草むらに
置いていけるものでしょうか
遠くか ....
橙色の風が吹き
壁をめぐり
木々を螺旋に上下する
ふいに無数の猫になり
屋根の高さの季節を乱す
吐息が導く双つの手のひら
合うようで合わないはざまから
遠く見知ら ....
ふわふわ浮かんでる生活
とりとめのない情熱はどこに向かう
しきたりどうりにいかない生活
世間から遊離している
まぼろしをみた
遠い昔にいざなうまぼろし
いつかの ....
コンクリートジャングルを
見下ろす
蒼い空に
真っ白な
ぽわぽわ羊が
たゆたっている
壊れてしまった
レコード盤のような
日常に
膿んで
見上げる空は
高い
鋼 ....
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