すべてのおすすめ
遅い帰り道は
雨に濡れててらてら光る
路側の白線に沿って歩くと
導かれているようで
なんだか安心する
怖いものは何もない
たとえば気づかずに
かたつむりを踏みつぶしていた
なんてこ ....
眠ってすごせれば楽しいかもね
男がうちに来たのです
「酢は入りませんか」と
ああ、
酢売りか...
そう思って
「入りません」
と言おうと玄関に行くと
男は
強引に入ってきました ....
高き空は青く
地平線に近付くにつれ乳白色に
そして我が周りでは何故か透明
自由に 何も無く
僅かな影だけを引き連れて
今この時間
肉体を失った 魂だけで
人工物に憑依して
家を ....
キリンが首を伸ばして
夜空の星を食べていた
星がなくならないように
父は星をつくった
どうしてキリンが星を食べるのか
なんて関係なかった
父はただ星をつくった
やがてキ ....
私は歓喜した。私は恋愛がわからぬ。私は非リアである。詩を書き、文学を読んで暮らしてきた。私は硬派である。コーヒーはブラックしか飲まない。そんな私が女子から一粒のチョコをもらった。オリゴ糖入りで頭がすっ ....
二人でガラスのコップに入って
誰かが水を入れるのを待っている
窮屈なのが
とても楽しかった
将来何になりたいか
お互いに言い合いっこをした
君は看護師になりたいと言った
僕は ....
春から
いちばん遠い季節に
吐息は
ゆれる
遥か
列車の通過の幻想に
疑いもなく
聞き耳
立てて
苦しまぎれの憧憬が
いつかの砂地で
花開く
もう
誰 ....
春へと旅立つ
厚い氷のトンネルを抜けるたび
金属の車輪が鶯の鳴き真似をする
繋がって泳ぐ魚は駅に出会うたび立ちどまる
雨水が硬い表皮を滑り落ちる
やさしい雨の季節だ
ちいさな水の粒子に ....
夜、寝ている間に僕は
優しい形になった
とても優しい形になった
とても優しい形だったので
誰にも怒られなかった
誰も傷つけることはなかった
どうして昼間は
あん ....
小さなスミ子さんは
短く刈り込んだ髪で
不安気に
わたしの隣に立っていた。
「今日から働いてもらうスミ子さん。いろいろ教えてあげてね」
ナースから少し離れて
私たちは長い廊下を歩い ....
襖で仕切られた四畳半の、その襖を開けるとまた四畳半、また四畳半、大きさの異なる箪笥がいくつもあり、埃避けの布を掛けた雛壇があり、その隙間にすっかり平たくなった綿布団があり、そんな部屋が前後左右に際限 ....
末広は吸い込まれて消えた、平凡の象徴として
ありとあらゆるものが末広と化した
末広がりという社会現象
末広という名前の子どもが急増し、末広に改名するものが続出した
ある調査によれば国民の ....
封筒の右端に犬小屋を建てました。
赤いペンキで塗りました。
そこで手紙を書きました。
とても短い鉛筆で。
さいしょに友達の名前を書きました。
つぎに夜のあいさつをしました。
あたらしい ....
棺桶を開けるとそこには見知った筈の大きな顔と、見知らぬ血色があるばかりで、周りには花なんか添えられているし、ついつい「久しぶりだなあ」と場違いな言葉が喉を震わせた。本当はこんなところに来たくなんかなか ....
クロード、ねえクロード、私たちどうなのよ。どこいっちゃうの。いっそ経てしまえば歴史ってベリーグッドだったりして。ああそう、歴史って光ってるのよ。幸せは音楽なのよ。なにいってんの、光ってればいいってもん ....
使いすてのミュージック
心にも無いメロディーを歌うかい?
使い捨てのミュージック
ありきたりの言葉で泣いて笑うかい?
きっと悔しいことや
悲しいこと
なんだかんだ思うことなんかを ....
耳鳴りが止まない 夕立が止まない 誰も気に病まない
いくつもの六角形めがけて降りてくる無数の線
歩道橋では今日も神様が飛び降り自殺をしようとしている
マンホールは踊り出しボートが通りを行き交って ....
おしまいの向こう側に
光なんか見つけて
ほんのすこしドキドキしても
そんなのはきっと残像
瞼の裏側にしか存在しない映像がある
って
前にも使ったことがある言い回し
だけど
それ ....
目の前で可愛がっていたくまさんが流されていって
お気に入りのピンクのクロックスは濁流でもう見えない
夢だ、
そう気づいた時には
もうそれは現実になっている
小さなお墓があって
小さ ....
あがりたの森を目指した
自転車に乗って
とにかくまっすぐに進めば
そこには
あがりたの森があるはず
あがりたの森に何があるのか私は知らない
そこが何なのかも知らない
ただ、ふっと ....
また新しい朝をもらって
水をやりすぎても花は枯れ
日照り続きでも花は枯れる
足跡を残すために砂浜はあり
足跡を消すために波が追いかけてくる
有る ということについて
猫の前足の ....
けれど
明るいほうから暗いほうをみたのだった
逆からよくみえるということに気づきながら
ぼくたちは暗いほうを暗いねと言い
明るいほうから笑いながらみつめていたのだ
赤いひかりだけが1つ2つ3 ....
ぼくは杖など必要ないと
想って生きてきた
杖を欲しがる奴は
弱い人間だと見下してきた
でも何故なんだろう
ぼくはいま杖を必要としている
杖を欲しがる奴には
絶対なるまいと決め ....
乾燥注意報だらけ
途方に暮れる街角
掌がからっぽ、というわけじゃない
するべき宛はある
ありすぎる
したい宛はある
ありすぎて
踏み出せない
なにもできない
白々と ....
静かってね
音が無いんじゃないんだよ
静かってね
これからはじまるっていうことよ
静かな中で
いろんなことが息づいて
いきてるよ
いきてるよって
私の心にささやくんだよ
ムリーの病名精神病
学がないから自分でつけた
ムリーは黒目がちで夢見がち
素敵な王子様と心中したい
でもいつだって叶わない
ムリーの全てはむり
長女マリーは勉強家
次女ミリーはしっか ....
海が
めくれてゆく
いくつもの
いくつもの
海が
めくれて
岸壁から
追い縋って
宙を泳ぐ指先に
紫貝のように
閉じる音楽
(母は海に還ったのだ
街が
たわ ....
ビーフシチューのネジが外れた
あっけなくばらばらになった
あんなに美味しかったのに
いろいろなパーツに分かれて
味もわからなくなってしまった
大切なものはいつか壊れる、なんて
....
けさは水平線が凍っている
長い足を折って待つ子
ひたむきに駆けまわる子
ただ下手くそに眠る子らが凍っている
おとつい死んだ叔父さんへあなたの骨はまずかった
おとつい死んだ叔父 ....
望むと、かなしい気持ちになってしまう。なぜだろう。薄っぺらい胸を、うさぎがつきぬけていった。龍のかたちにはりさけていた。
わらうには、虚勢を張るしかないのだ。
ずいぶん遠くまで来た。でも、 ....
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