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まあ 夢の話だ
乗り過ごした成人式を
だいぶ前にすませたやつが
不意に眠り込んでしまって
夢を見て
目が覚めても
こわさからは覚めきれなくて
夕方だったはずが
真っ暗なんだ
消し忘れ ....
1.「もう子供なんかじゃないと思っていたのに」
涙が出そうになるたびに
缶の中のドロップをひとつぶずつ
口にちいさく押しこむ もの だから
雨粒が
薄い緑色で。
口の中なんて もう
 ....
好きだった
あれこれ眺めること
時間だけを支払うこと
手ぶらでドアをこじ開けること
手放せずにいた
かもしれないを
恐れていた
買わないが消えてしまうのを

自動ドアに認知されない子 ....
その付属器官は
本人も気がつかない{ルビ柵=しがらみ}を
蓄積している、密やかに。

パチリ、パチリと切り落としながら
纏わりついていた何かを
少しだけ知る
過ぎ去った日々

明日の ....
 
 
水を降りていく
やましいことなど
何ひとつない

深夜、もういない父の
容態が急変した気がして
親戚を探しに出かける

栞のように
水槽が鳴ってる
 
 
眠った夜の後に
覚める朝が来て
起きて歩いて
飲んで食べて考えて
歩いていく、外へ
あとは
見て聞いて話して読んで書いてとにかく何かをして
何もないをしない気付かないた ....
もうだいぶ短くなった青鉛筆を
今日も必死に削っている
先を細く細く尖らせなければ
気がすまないんだ
そのくせ
極度の尖端恐怖症なものだから
どれほど尖っているのか
目で見て確かめることも ....

机を彫刻刀で切り付けて
切れ目をひとつ作って指で開くと
そこに海が広がっているときがある
授業中やお昼休みの間はつま先から飛び込んで
そこでじっとしていた
息ができないという点では ....
細長い一日の側面には
たくさんの出窓が一列に並んでいた
窓枠には下手な絵が嵌め込まれていたから
僕は脇目もふらず
いったりきたりするしかなかった

細長い一日の両端には
それぞれにひ ....
遠く、鳥が鳴いている
意識は一歩一歩夜に近づいていく
遠く、母が鳴いている
風に揺られて木の葉が騒いでいる
耳の奥の会話が言葉を奪っていく
私がベッドの上で窓の外を見ていると
母の顔をした ....

川底いちめんに
青白い子供たちの顔が
隙間なく敷き詰められて
にこにこ笑っている
岸辺で何かを探すように
水底を見回しているのは母親たちだ
自分の息子や娘を探しているのであろう
で ....

ポストには請求書ばかりが届き
携帯電話の受信フォルダは
迷惑メールでいっぱいだ
履歴書を書けば誤字脱字ばかりで
修整液はとうに使い切ってしまったし

紙屑ばかりあふれる部屋で
どう ....
 
 
例えば。
 
 
茹だるような青が
私たちを押し潰した夏に
もしも、一握りの白があったとして
 
それは
冬たる物になるだろうか?
 
 
アスファルトに溶け ....
月明かりのない夜に 捨てた嘘
風が鳴りやまないように
ゴミ箱の中でわめいている

自分の下にはりつく影が嫌で
白いペンキをぶちまけた
塗りつぶすことは  どこか後ろめたくて
明かりのない ....
  
   oooo ooo oo o


視界が濁る
雨が降っているらしい
でもこれ以上濡れる心配はない
目を閉じる
眠ったふりをする
内側までずぶ濡れの私は
人魚だった頃 ....
夕べ
拾った羽根の先を斜めに切り
インク瓶に浸し
短く日記をしたためた

羽根で記録する行為に満足し
すぐに日記を閉じたものだから
翌日分のページに
生乾きの文字列が写ってしまっていた ....
雨が抑えている
気持ちにふたをして
重くのしかかるのは
度の強すぎる眼鏡のよう

咳こんだところで
深く吸ったところで
するのはただ、土のにおい
しみてゆくしみてゆく
こころもぬれて ....
金属ブラシで懸命にこすって
庭の水道で洗い流すと
スコップも裁断ばさみも
見ちがえるようにきれいになった
せっかく用意したリュックには
けっきょく
詰めるものがなにも思いつかない
縁 ....
心の闇
なんていう安っぽい言葉ひとつで
人殺しの気持ちを説明できた気になるなよ



薄っぺらなプラズマテレビの向こう側で
薄っぺらな現実が不意打ちみたいに暴発する

眩しい
眩 ....
靴箱の上にある
木彫りのふくろうは毎晩
わたしの前で目を光らせる
夫は気づかなかった
それはわたしの幻想かもしれないし
夫の現実逃避かもしれない


靴箱の上の定位置に
じっと座って ....
「 人が心の奥に押し殺した感情をまるで自分のことのように感じとってしまう能力 」


その秘密を 僕に話してくれたカミヤマくんは
自分の心の奥を誰にも説明できないまま
とても静かに、 ....
振り返れば、蒼ざめた空
眩しすぎる光が、あたしを責める
光が、眩しすぎる





5年もの歳月
あたしはずっと
ひとりぼっちで
部屋のなかで暮らした
外に出ることは極稀で
 ....
                  
                


雨曇りに包まれた
135号線沿いの海を
古い友だちと歩いている
どんどんどんどん歩いてく
楽しくて嬉しく ....
葉っぱたちのとがったきっさきをさっきから風がはげしくゆらして
じべたに並べられた各種弾頭のことを考える
雨上がりのひんやりとしたゼリーのような中を
ゆっくりと自由に空気を押しながら
あたしは記 ....
日曜日の淵に立って
顔が鏡の男と出会う
僕を知っているか
男は問う

男の手を引いて
僕たちは日曜日の淵を歩く
君はどうして僕を知った
僕は首を振る

そろそろ帰らなければいけない ....
わたしの棲む場所を流れる川に
水はない

誰かが
橋の上から捨てた言葉を
灰色のさかながついばんでいる


     *


夏の暑い日、わたしは
忘れてしまいたい過去の過ちと ....
夢を見たいと望むなら
夜になるまで太陽を
にらみ続けて
なぐり続けて
ようやく昨日のリングに沈んだときに

ガッツポーズして
ふらふらで
歯とか何本か折れて
へとへとで

 ....
 
英会話学校のパーティで知り合ったバーナードは
JICAの研修生として来日していた獣医のエリートで
扉という扉を開けてくれ
食事のときは女性の椅子を引く
印象的な紳士だった

街のカフ ....
人がいた
音を立てていた
枯れて崩れる葉を踏み
枝を折って歩いていた
いらつく声を
口から発していた

連中は音を隠さない
俺を呼んでもいいのだろう
喰われても構わないのだろう
 ....
 ふと歩いてみようとわき道に入った。

 平らだった。

 平らで、細く、集荷場のコンベヤのようで、
 あたしは進むしかなかった。

 大きなバスが停まっていて、女の子たちは
 そ ....
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