すべてのおすすめ
私はあんなに憎い人を知らない
穏やかに過ごしていた日々を
圧倒的な力で根こそぎ運びさり
最もうとんだ葛藤と労苦の
深くにごった河へ流し込んでしまった
こんなところで生きてゆけない
....
入りそこねたり
行ったり来たり、いろいろな角度で
定まらない覚悟で溶けていきそうになる
落書きをする、つまらなそうな顔と筆先
踏み込むための一歩と、スタートラインの石灰
舞い上がればこびりつ ....
お日様が真っ赤になりながら
羊も鰯ものみこんでいくと
とっぷりとした夕闇がやってくる
cosmosは忍びやかに地球(テラ)に寄り添い
たっぷりとした夜のマントを拡げる
....
日曜の正午
レストランの店内には二人の若いウェイトレスが
できたての料理や空の器を運んで
客のにぎわうテーブルの間をひっきりなしに動いてる
20分前に頼んだ和風{ルビ手捏=てご}ねハンバー ....
石榴は血の味 密の味
月の無い夜に
女を食べた、あの木製の詩人は
熟れた石榴を 銜えさせて
美味いだろうと、夜風に訊いた
共犯だぁね 、
硬花の指先はわたしの唇に触れ
睦言のように
....
「あなたはね。
卵から生まれたの。
それはそれは痛くって、
とっても大変だったのよ。」
それが母の口癖だった。
嬉しいことがあったときも、
悲しいこと ....
空は啼いているのだろう
風は狂いはじめている
雪の華はその美形を
とどめることも叶わずに
ただ白い塊と成り果てる
清き水の流れさえも
怒涛に変えて
白鳥は真白の吹雪に ....
うちのクラスの山田くんは いつも
弁当をもってこない。
昨日は
ホームレスのおじちゃんが ひもじそうだったので
あげてきた、と
寂しい目で 語ってた
一昨日は
おなかがいっぱいだ ....
甘くない珈琲を
手の中で
大事そうにしていた
猫舌だと言って
大事そうにずっと
両手の中で
十二月に降る雪のように
ま ....
傷ついた
というより
どうしようもなかった
話がある
洗濯物をたたんでいく
パンツ
シャツ
ヨーロッパ
僕の無器用さは消えない
どうしても嫌なことは嫌といってしまう
言 ....
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
君からもらった
たった一通の封筒は
古びて黄色く灼けてしまいました
その中に大切に抱かれた
数枚の便箋も
古びて黄色く灼けてしまいました
今にも崩れそうな酸性紙の上
ボールペンの ....
目を閉じ
緑はほとばしる
陽の音が 陽の熱が
やわらかな迷路に落ちてゆく
川に沿って光は曲がり
風は遅れてあとを追う
土のかけらは水のなか
異なる火となり揺れている
....
便利さと言う名目で
色んな物が切り落とされていく
夢の島に住んでいたい
と思うのは女々しさなのか
金額や思惑で秤にかけられて
計算高く世の中は動いているようで
取り残されるのは ....
夢から紡いだ淡い期待を束ね
双の棒針で器用に操る
操る毎に淡い期待は確かな予兆に変わり
なまめかしく揺らめいて
蠢いて
少女は艶やかな女人となる
月の満ち欠けを赤い細布で数え
確 ....
かわいいね おはだ つやつやして いつにもまして きれいだよ かわらぬ
そのわかさ はんそくだぜ なんだか ぼくだけが としを とったみたいで
ずるいなあ で どうだい しばらく ごぶさた だった ....
雪ばかり融けずにいる
針が突き刺したような
星夜の暗闇が恐ろしいのです
あまたを溶かすはずの暗闇が
かすかな影のいいわけを
裏切るのです
ひどく凍らせる結晶に
張り付いた切り絵を ....
兆し
まだ何のためか
なんであるか
わからないまま
僕は
昼間泳いでいる
つかんだ波
はなさないために
好きでいられるように
とつとつと
祈る
笑うひと
奪う波
死に ....
隣の白蛇が、
皮を脱ぐ。
彼は失恋すると、
いつも絶食して、
いつも脱皮する。
センチメンタルなのだ。
脱皮する少し前から、
蛇の目は白濁しはじめる。 ....
あの日の電話の奥では結局どこにも繋がっていないと
夢を語るような視線で伝え合っている
その不確かな存在証明に、わずかな呼吸で集中すると
世界は真っ直ぐに夕暮れ落ちて
確かめようとする背中も
....
ボクは外側がボクである
ヘヤは内側がボクである
それがボクとヘヤとの
相違点
しゃらしゃらと
粉雪が風に渡る音
鈴の音も高らかに
朗らかな笑い声が
こだまする
雪山が呼んでいる
動物のアシアト てんてんてんと
梢からがさっと雪帽子が落ちる音
真っ白な ....
冬の夕暮れ 老人ホームの庭に出て
A {ルビ婆=ばあ}ちゃんと若い僕はふたり
枯葉舞い散る林の中へと ずんずん ずんずん 進んでく
「 A さん、目的の宝物がみつかりました・・・!」
....
何故 君はいってしまうのか
大人たちよりも ずっと ずっと先に
危ないよ
あんまり先を急ぎすぎると
石ころだか何だかわからないものにつまずいて
転んでしまうよ
危ないよ
とん とん ....
冬の空のしんとした質感に
しなだれる肺のたおやかなこと
木枯しに枯れていく太陽のもと
不透明な雪の結晶となる重さを
熱く呼吸して火照る
湾曲している波に共鳴する
空との境界で
風 ....
明治生まれの 女らしき女の貴女に会いに行きました
いつも凛としていて こぎれいで 弱音を聞いたことはありませんでした
気丈で 自分の意見を曲げない所もありますが。
今の貴女は 腕には ....
彩りが白く染められ
輝きが覆い尽くす
秋に重ねるから美しい
君の
季節に染まったほおに
想いが重なれば
雪景色のように
清らかに美しいだろうか
それとも
ただ ....
僕のからだの内燃機関は
なにを動力にして
ここまで
走らせ続けてきたのだろう
西日はいつも眩しいね
僕の手が掘り出したいものの
手がかりを
きっと
西日は知っている
....
橋のうえに
大きな虹がでたので
ぼくはトイレへおとうさんを呼びにいき
台所へおかあさんを呼びにいき
お嫁にいった妹を呼びにいき
死んでしまったおじいちゃんを呼びにいき
介護施設のおばあ ....
闇雲にかいてたら
白い雲に襲われて
遅くなって
白けた
知らない雲
クモ
おんな
走り去って
死んだわたしは
弾かれた
世界から
ひとりのおんなが
席をたって
わたしを避けた ....
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