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冷たい井戸の水を汲んだら
とたんに雨が降ってきた
開け放した口に次々と
重たい雨粒が入ったり砕けたりした
久しぶりに自由に飲める水だけど
濡れて帰ればまたぶたれる
痣は青い花のように
....
3日前に職場で腰を痛め
うずくまったまま動けず
車椅子に乗り
整形外科へ搬送され
9年目にして初めて
10日間の秋休み
今日も午前10時の朝食を終え
ほがらかな日のそそ ....
潔いさよならを
口づけられて
風は目覚める
おびえたように
冷たく急ぎ
風は目覚める
それを
避けるでもなく
受け入れるでもなく
花は巧みに散ってゆく
孤独の定義を
....
虹は
見つかることで
虹になるから
虹かもしれないね
僕たちこそが
あの虹の
おもいでの
半分くらいを
間違わずに済ませたら
上出来だとおもう
ごらん
途 ....
両手で水をすくうように
反射鏡は映し出すけれど
のぞき込むたびに奥歯で噛む
這いつくばって
いいわけ、うつむき加減に
明るい星空の下に
私の居場所はないのです
車窓に ....
私は、私の影であり
影は、影の影である。
どこまでも
黒く透ける現し身を
冷たい風がなぞり
さみしい熱を奪い去っていく
だからといって みたされることはない
このささやきが、色づ ....
全てを飲み込んで許し
傷つけ吐き出す
砂
片足がほろんでいる男の
肘にぶら下がる女
際限なくせばまり風にうずまく砂は
常に何かを形作ろうとし瞬間
走るように崩れ去り
うめきすら ....
{引用=落花することに歓びがあるとするならば
目の前に横たわる海鼠状の災禍を受け入れてみたい}
あなたと
わたし
コロシアムと密かに呼び合う
誰ひとり立ち入ることの無い塔屋の片隅で
ふ ....
夕焼けなんてなくなってしまえばいいとおもう。昼と夜
をへだてるものをなんとなくつないでしまう、そんなち
ゅうとはんぱな橋は、星からやってきたぬすっとにくれ
てやるか、三日月のくらいぶぶんになげこ ....
指は
君の小さな生き物だった
どこか
遠い異国の調べみたいに
時おり
弾むように歌ってた
君が僕の指を食む
君が
少し子供にかえる
遠いね、
とだ ....
うつぶせに寝る
一週間分疲れたからだを
ほねつぎの先生は
大きい手の親指で
ぐぃっ ぐぃっ
とのばしてくれる
「 マッサージしてもらい
すじがのびると
....
眠りの先にある風景を知らない
手にしたジャックナイフでは
届かない、刃先
夢をおぼえている、というあなたは
きっと眠ってはいない
暗闇の向こう、世界で起こっていること
肌の外の全て ....
胸は
すぐに
いっぱいになります
それゆえわたしは
多くを連れて
行けません
あなたを
はじめて呼んだ日に
こころの底から呼んだ日に
海は向こうになりました
永 ....
過保護な獣は病みやすく
保護なき獣は
{ルビ傷=いた}みやすい
野に{ルビ棲=す}む者よ
たがいの{ルビ荒=すさ}びが
見えないか
涼しさ寒さは紙一重
闇夜も夢も
紙一重
....
黒髪を 風にすいては色もなく
岸辺に咲いた 白い花
ひんやりうずく 視線に限られ
カラスアゲハは はねを日に焼き 沈黙を舞い千切る
きみの
笑顔の理由を
そっと教えてくれないか
ぼくらはそれを
上手に広げてゆける
知らないうちに
新しくする
ささいな物を
拾い集めてゆくことが
ぼくらを作り
....
無いものねだりをするよりはと
秋の白い雲流れる堤防で
ひとり
清貧ということばの意味に思いを馳せる
それはあまりにも懐かしいことば
仄かなランプの灯かりを頼りに
見果てぬ夢を追い続けら ....
プール前の花壇に
コスモスを見つけて喜んでいた そのくせ
君は、緑色のため池に沈んだ季節を
あまりに切なげに指す
わかってる
君も、僕と同じ色が好きなんだろう
空のいろ、でもなく ....
哀しみのあなたの窓辺に秋桜いちりん
――凹
灰色に覆われた低い空に
押しつぶされて
想いと呼ぶには小さな
いくつもの欠片が
重たくなって
沈んでゆくだけ
雨ならなお一層
....
昨日は忙しい時間に
トイレに座らせたお婆ちゃんの
下ろしきれなかったパンツが
お尻と便座に挟まって
無理に脱がせると
びりり
両手で持ったパンツには
小銭の穴が ....
て、手を伸ばして
やわらかくてをのばして
その、影
ぼくらに届いて
君は
ぬりこめられて
たいよう
やさしくしずみこみ
耳のあな
つぼみのように閉じ
ふとんを頭からかぶ ....
酔っ払って
海岸に
遠くの音
ひずみの向こう
波は立ったまま
立っている
寒いのは
恋人を連れていないから
あたたかい手を差し伸べる人を
遅くまで起きていても
誰も叱らない ....
早朝、床に坐り
瞳を閉じるマザーは
今日の路上で出逢う飢えた人と
お互いの間にうまれる
あの光で
幸福につつまれるように
無数の皺が刻まれた
両手を合わせる
身を包 ....
季節はずれの
つよいひかりに照らされた目抜き通りを
影を焼き付かせて
まばらに人が行き交っている
真っ直ぐ南北に延びた道には
終わりも始まりも無さそうで
くるりくるりと仕掛け時計の太陽が円 ....
先週皮がめくれてた
お爺さんのお尻の傷を
トイレの時に確認したら
するりときれいになっていた
看護婦さんもやってきて
「先週塗ったわぜりんが効いたのね
わぜりんは、いい奴 ....
コロンと
転がって
なんだか可愛いと 思う
そっと殻を剥く
つるつる ぴかぴかの
白い肌が
なんだか可愛いと 思う
真ん丸く
抱きかかえた 黄身も
なんだか可愛いと 思う
....
雪に閉ざされた街と
鉛に封じられた空が
防風林の向こうで
混じりあって、深藍に
レールギャップを鉄輪が踏む音
ポイントを焼く篝火の色
私は泊まる宿も決めず
真っ白な駅 ....
切符を握った手が濡れてきたから
てのひらを上に向けて解放してやった
そうしたら切符は川になって
行き先はすっかり見えなくなっていた
川は
僕だけが感じる速度で流れ
薬指、から滝 ....
落葉がそぞろに風にふかれ
雲は青く高い空をゆく
うらの{ルビ小径=こみち}の縁石に腰をかけて
杉といっしょにゆれている
夏の{ルビ遺言=いごん}は朽ちることなく
静かに実 ....
家族による暴力で
老人ホームに来るごとに
体中の傷がどす黒くなってゆく老婆
国も
市も
施設も
ケアマネージャーも
ヘルパーも
一介護職員の自分自身も
手を差し ....
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