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午後から
雪がすると言って
ハツコは眠った
ハツコ
はつこ
はつ、子
ああそれは
どこまでも
降りしきる降りしきる
降りしきる降りしきる
向こうはもう見えないよ ....
兄の背中を見ながら
考えた
大きな体を丸めて
窓際の席でひとり頷きながら
形のいい耳に
壊れかけたヘッドフォン
六法全書をいちページ捲る毎に
くるっとマーカーを回す
デスクトッ ....
焦りをおぼえた場所からは
やさしくきこえる
誘惑のつめ
口笛をなつかしむまでは
曲がり角などこわくはなかった
憂いにまみれた地平には
消せないほのおと
水夫のつばさ
....
ああ、ここにいたのかい(ここにいたんだね、)
抱えた膝はこわばって
下ろした腰は冷え切って
青々とした何を見ていたんだい(見ていたんだね、)
す
っ
とすじは白い
....
君がいるから僕は存在する
誰もが羨望する
誰もが欲しがる君の姿
ショーウインドの特等席で
いつも輝いている
値札なんて不要だよね
君の価値はお金にはかえられないから
要はハートだってこと ....
おでんを
初めて食べたのは
あなたの家の
ばんごはん
半透明の大根に
皮のやわやわなちくわ
味のしみた卵
だしを二種類とるのがコツなのよ
と
あなたは言ったっけ ....
まあるい卵にうさぎの眠り
たゆたう袖から
虎のまなざし
いつかは還る最果ての灯へ
のぼる姿を
手から
手に
浮かべた舟は遠ざけて
くれない川面に
こもりうた
幾 ....
世界が希薄になっていく
高い高い、高い場所で
不純な核にとらわれて連れ戻された
綺麗なだけの名前で呼ばれるもの
海は無限のやさしさでとかして
吹き抜ける音や打ち寄せる色だけが ....
{引用=
一、漆黒
かりそめをながく着て
寝所のすみに
けがれを
灯して
目をつぶるから
ほこりがつもる
目だけを頼れば
いしにつまずく
なぞるだけでは ....
Hip, hip, hurrahの掛け声と供に
大音量の蛍の光の歌に乗り
夜空に大輪の色を咲かせ
また、新しい年が幕を開けた
HippieでHotなきみにHit
Are you Ha ....
{引用=
一、そそり上手
謎めいた言葉の
ひとつや
ふたつ
もどかしい仕草の
みっつや
よっつ
わたしは恋に不慣れなもので
五万の毒を盛るかも
知れませ ....
夜がほの蒼いのは
雪が舞っているから
すこし窓を開けて
吐息が白く夜気に放たれ
雪と交わるのをながめる
手を延ばせば舞いおりて
けれどその冷たさは
触れるまもなく掌に溶け ....
一月ついたち
凛として
鈴の音が
聞こえてきそうな
夜でした
まっすぐのびるこの道も
ざわとも動かぬ杉の木立も
風の止んだ雪の原も
すべてに
群青いろの絵の具を
とかして撒 ....
優しさの
定義の途中で
悲しい君を抱き締めた
何度も何度も
抱き締めた
放熱温度は数千
おそらく加護には不向きな温度
僕は何もかもの途中だった
汗をに ....
「明けましておめでとう
今年もよろしく」
と キーボードに打ち込んだつもりが
「小鳥もよろしく」
と 打ち間違えてしまった。
何回やっても
小鳥、小鳥と、小 ....
冬の寒気が細く伸びて
岬の先のほうへ
鋭く尖っていった
遠くで生まれた赤土の丘が
最後に海へこぼれ落ちていく場所で
わたしの そしてあのひとの
フレアスカートのはためく裾から
なめらかに ....
みちは
みちゆく
いろみちる
こみち
ちかみち
ぬかるみち
よみち
あぜみち
けものみち
さざなみちかきは
かみちぎる
そら
もゆるみち ....
ましろい表紙の中心に
産み落とされた
原石の塊
見えない核に宿る(詩)に結ばれ
六つの方角へと
自らの背を伸ばそうとしている
( 遠天の夜空に燃える太陽
( あるいは明け方 ....
はるをいたみながら
ひとつ、指を折り
なつのまよいに
迷えないまま
指折りは、
ふたつ
みっつ、を数える指には
こころならずも
あきがなついて
ちからずく、のよう ....
たいして金のないわが家に
いずれ残ったら金をくれと言っていた
付き合いの長いSさんが来たので
眉をしかめていた僕は
家にいたくないので外へ出た
散歩の途中
なだらかな坂を上 ....
目が覚めて
階段を下りたら
まだ雨戸の開いていない
暗い部屋の食卓に
お{ルビ節=せち}料理の重箱が置かれていた
「 寿 」と書かれた紙に入った{ルビ箸=はし}が並ぶ中
ひ ....
照る岩に
砕かれてゆく波のうつくしさ
それはもはや
言葉には乗ってゆかない
冷たい、
というわけではなくて
いつからか
鋭いものが岬だとおもっていた
まるくても
まるくな ....
{引用=僕がチャーくんに出会った頃は
魚が飛んでいました
鳥が泳いでいました
月が溺れていました
太陽は寝ていました
僕の世界は笑うことを知りました
}
初詣に行く前に
チャーくん ....
暦と呼ぶ刃物で
区切られていく時間
人はやはり
階段でなければ上れない
翼にあこがれるのは
ないものねだり
僕たちはこの与えられた
二本の足で歩かなければならない
登り方は ....
1月
行ってしまいました
2月
逃げてしまいました
3月
去ってしまいました
4月
兄が大学生になりました
5月
ゴールデンウィークに喧嘩しました
一生赦さない程の憎悪と愛で以って ....
たとえば空が
海から生まれたものだとしたら
鳥はおよぐものたちで
魚は羽ばたくものたちです
たとえば光が旅人ならば
わたしたちも、風
無理のない
ながれ
吹雪 ....
あ、
あさごはんが
きょうもやわらかい
そしゃくされた
いのちが
おなかに熱くしみとおる
やわらかくなって
この手に
とどくまで
いったいどれほど
かみくだかれたの ....
哀しみのあなたに
なす術をもたない
わたしもまた
その非力さゆえ
自らの存在に
哀しみをおぼえる
星の瞬きの
ひとつひとつが
人の願いというならば
わたしのそれは
確かな理由を ....
仕事納めの年末に
1月から他部署に移動するAさんと
老人ホームの風呂場を{ルビ掃除=そうじ}した
「 わたし家では掃除なんか
ろくにしないんですよ〜 」
とにっこりほほ ....
星の言葉 降る降る
空の端から
投げかけられた 放物線
かすめていったひとかけら
こぼれて描いた その軌跡
ほんの少しを呼吸して
小さな夢を叶えるために
届くといいな 流 ....
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