行方不明者の残した手紙は
どんな気持ちで読めばいいのかわからない
閉じ込めた引き出しは空っとぼけている
ソプラノのリコーダー、その割れた吹き口の残骸、観賞用のナイフみたいな役立たずの ....
狂気こそが真実を知る、あらゆるものが散乱したテーブルの上には、デフラグされた混沌の形跡がある、指先が本当に触れたいのはキーボードではない、その先にある脳味噌の最深部だ、聞け、正常にこだわるのは愚か ....
雨の日の土は重たいけれど掘るには適している。三年前にホームセンターで購入したプランタースコップで、その日もわたしは裏庭に穴を掘っていた。大した穴ではない。人間の頭蓋骨がすべて埋まるぐらいの、小さな ....
ガラス窓の表面にはいつからともつかない埃が付着し、それにどこにも逃げていかない湿気が浸透して、古い糊のようになって不愉快なまだら模様を作り出していて、こんな小雨の降る夕刻にはなおのこと気分を暗くさ ....
真夜中を疾走する無軌道は自意識は所詮、夜明けとともに失われる時代遅れのノスフェラトゥだ、陽のあるうち連中はどこに潜んでるのかまるでわからない、お互いの顔すら見分けがつかないほど暗くなるまでは怖くて ....
滑落した真夜中の亀裂の底辺に横たわり
衝撃の中で朧げな幻想を見ていた
ままならない肉体のどこか入り組んだ場所で
仕切り直しよりもシャットダウンが要求されていた
そこは氷山の中心のように ....
駱駝の玩具の背に本物のナイフ、飾り柄にいつかの血の記憶、縁の欠けたマグカップの中にはつがいの蝿の死体、それはあまりにも語れない、形を残す時間が短過ぎて…手を取って、ここから離れてゆくすべてのも ....
歪んだ頭蓋骨は陳列され、天井のひと隅から滴る雨水は床に暗示的な不協和音を作り出す、お前の罪の名をその情景に添えよう、次に来た誰かが腐肉の臭いを飲み込まずに済むように…黒猫がひとつ、自分の毛並み ....
色を失くした冬の明け方、公園のベンチで俺は放置されて風化した骨のように横たわっていた…数羽の鳩が半径一メートルの辺りを、時折こちらを窺いながら思い出したように地面を啄んでいた、こちらがなにか食べる ....
世界はいつだって
出来上がった何かをなぞっているだけだから
やつらの真似をするのはやめておけ
前に居た誰かと同じになってしまうから
お題目を鵜呑みにせず
ひとつひとつ自分で考えて
自分 ....
打ち捨てられた死骸の硬直した筋肉は鮮やかな色身だけが失われていて、それはまるで土に擬態しようと望んでいるみたいだった、心配は要らない、それは必ず叶えられる、おまえがもっと失われ続けたあとに…耳 ....
不用意に感光した印画紙のように意識は白けていた、くすぐる程度の電流がどこかでずっと思考を脅かしているみたいで、俺は実質丸められて捨てられたジャンクヤードのカーペットと大差なかった、すぐにどこかにも ....
心情の中で黒い蛇がのたうっている、標的を知らないまま見開いた、血走った視線の先にあるものはあまりにも頼りない虚無だ、絶えず鳴り続けるノイズだけが自分の存在を知らせ続けている…特に冷える夜、特に冷え ....
街の灯が消えるころに
俺たちは跳躍を繰り返した
皮を剥ぐような風が
駆け抜ける午前三時
記憶のなかのサウンドのハイハットが
氷の割れる音に聞こえるような気温だった
あたためて
それは ....
才能の定義とはなんであるか、なんていう細かいことは置いといて。でも簡単に言えば、「僕には才能があるんですよ」なんて宣伝しなくても誰かしらに受け止めてもらえる何かをそう呼ぶ、ということになるだろう。 ....
市の大手建築会社の、一大プロジェクトとして作られた街外れの巨大な新興住宅地は、建てられたもののろくに買い手がつかないまま数年が経過していた、そんな隙だらけの巨大な新築廃墟など、瞬く間にフラストレー ....
あてがわれてあてが外れてもごった返す人の波のなかで
奇をてらわず気を付けて精進なによりも大事社会のルール
自発性すら指示されるままにほのかに微かにちらつかせるだけで
お手本に沿って律義に ....
狭い、ほとんど交通量のない道路に幽霊のように現れたプリウスのヘッドライトが、その存在の希薄さをあらわにしてやろうと企んだかのように私を照らしていく、どんなところに行ったって隠れる場所なんかないんだ ....
午後を通り過ぎた影、踏みしだかれた詩文、血溜りのなかの指先、白紙のままの便箋、風が息継ぎをするときに聞こえる嗚咽は誰のものだったのか、忘れたことにした記憶が膿んだ傷のようにじくじくと抉り続ける理由 ....
そうしてお前は海藻のような俺の臓物を引き摺り出す、喪失の感触はあまりにもヘドロを思わせる、トッカータが聞こえる、それはあまりにもマッチしている、俺は呆然と虚空を眺めている、目に映る風景はとっくに意味を ....
枯れたバラ園のそばで
鮮やかな過去に埋もれて
もう聴こえないヴァイオリン・ソナタの
朧げな旋律を追いかける
厳しく美しい冬
風は心の奥まで
凍らせようと目論んでいる
死んだ土をす ....
サウジアラビアの油田火災のニュースが流れる電化店のフロアーを
ローリング・ストーンズのシャツを着た若い女がナイフを持って歩いている
彼女の敵意は自分にだけ向いているようで
右腕は指先から肘の ....
殴り続けた傷口は紫色に膿んで
吐き捨てた唾には汚れた血が混じっていた
敵など居なかった
敵など居なかった、どこにも
おれはただひとりで挑んでいただけだった
アルコールランプのよう ....
ブックオフでうっかり見つけてしまったそのアルバムを購入したわけは
まさかあいつらがベスト盤を出すなんて、と困ったように笑ってた
懐かしい男のことを久しぶりに思い出したから
「こんなのパンクじ ....
漏電を思わせる低気圧の真夜中には生焼けの肉の臭いがする、一息に喉の奥に流し込んだハーパーのせいで身体はまるで蒸気オーブンのトレイの中でぶすぶすと少しずつ焦げ続けているみたいだ、ベルベッド・アンダー ....
いつからかどこかからずっと聞こえている小さな悲鳴は僕のものなのかもしれないしあるいはまるで関係のない誰かのものかもしれない、ポータブル・ラジオがたまたまどこかの国の電波を拾ってしまうみたいに僕 ....
街路で踊るバレリーナの黒髪は長過ぎて、12tトレーラーの後輪に巻き込まれてしまう、悲鳴を上げる間もなく、踊りに陶酔したままの虚ろな表情で、のけぞるように飲み込まれたプリマドンナ、クルミの殻が割れる ....
色褪せたクリーム色の壁、不自然なほどにしんとした空気―わたしはたまにこの景色を病室のようだと感じることがある、でもここは病室ではなくて―まあ、そのことはあとで話すことにする…道に面した壁はすべ ....
細胞の中で狂気は水棲生物の卵のように増殖を続けて、そのせいでこめかみの内側は微妙な痛みを覚え続けている、尖った爪の先が終始引っかかっているみたいな痛み―軽い痛みだけれど忌々しい、そんな―俺はい ....
アルフレッド・ヒッチコックの夕暮れのような空のなかで今日が竦み上がりながら死んでゆく、その悲鳴は、その悲鳴は…昨夜俺を悪夢から叩き出したその声とまるで同じで―なにを見ていたのか、なにを知っていたの ....
ホロウ・シカエルボク
(1187)
タイトル
カテゴリ
Point
日付
九分九厘、最終出口
自由詩
3*
19/5/3 23:49
欲望は漆黒のような深紅
自由詩
3*
19/4/23 22:42
I Know I`m Losing You
自由詩
5*
19/4/14 16:35
棺の部屋
自由詩
2*
19/4/11 21:54
吠える犬は繋がれるか処分されるものなのに
自由詩
2*
19/4/4 15:54
冷たい七面鳥
自由詩
5*
19/3/25 0:09
生き続けろ、ひとつの言葉がひとつのことだけを語っているわけじ ...
自由詩
3*
19/3/17 23:10
オルタネイト・ピッキングの幻想
自由詩
3*
19/3/8 23:14
崩落の朝、公園で。
自由詩
0*
19/3/1 23:12
歩きやすい道にはなにも落ちていないよ
自由詩
9*
19/2/17 22:45
騒乱、喰らい尽くして
自由詩
1*
19/2/14 0:04
聖堂
自由詩
2*
19/2/7 22:36
FADE OUT(そのなかにはっきりと聴こえるいくつかの音)
自由詩
3*
19/2/3 22:09
この夜はあの夜
自由詩
3*
19/1/31 0:05
才能とは前例のない武器である
散文(批評 ...
4*
19/1/24 21:46
さやかに星はきらめき
自由詩
1*
19/1/15 14:35
清潔な皮に切れ目を入れて引き剥がしたらそいつは立派な肥溜だっ ...
自由詩
1*
19/1/10 22:34
飛ぶ夢など見なくてもいい
自由詩
1*
19/1/6 21:43
ただ赤く塗り潰して
自由詩
5*
19/1/1 22:56
肉体のサイレン
自由詩
2*
18/12/23 22:15
あなたの居なくなった世界に
自由詩
5*
18/12/20 23:49
スラップスティック・メルヘン
自由詩
4*
18/12/16 22:21
また会える?と彼女は聞いた
自由詩
5*
18/12/14 0:45
マニック・ストリート・プリーチャーズ
自由詩
6*
18/12/9 23:32
浅い落とし穴からは少しだけ世界が覗ける
自由詩
5*
18/12/6 0:00
御免よ、僕には気づいてあげることが出来なかった
自由詩
2*
18/11/26 22:54
ラスト・ワルツ(路上のソワレ)
自由詩
2*
18/11/18 22:14
ロストの先端
自由詩
2*
18/11/12 0:03
狂った文字盤の針にもグルーブは隠れている
自由詩
5*
18/11/4 22:51
混沌をまんべんなく敷き詰めた小さなベッドに(そして窓の外にや ...
自由詩
4*
18/10/28 22:48
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
0.47sec.