ある日、部屋の灯りをつけないことに決めた、中心部に近い住宅地にあるこのハイツでは、街路の灯りだけで充分過ごせることに気付いたのだ、この街には暗闇が無い、俺はずっと山の近くで育った、そのあたりじゃ陽 .... 停留所からバスが走り出した瞬間に、ずっと昔見た夢を思い出すような漠然とした感覚が迷子になっていることに気付いた、噛んでいたガムを捨ててあまり混んでいない喫茶店を探す、近頃じゃそんなことさえままなら .... 割れた銅色の薬品の瓶、その中に在ったものが液体だったのか個体だったのかなんてもはや知る由もない、薄墨を適当にばら撒いたような空、季節は駆け足で冬へと近づいた、動かない柱時計が奏でる、いつかの時を告 .... 眼球を失った蛇たちが寿命を使い果たし住宅地の外れの冗談みたいに小さな公園の砂場に積み上げられていた、冷たく絡まり合った生体のピラミッド、その頂上には神などひとりも居はしなかった、シンパシー・フォー .... 床に落ちた鍵には手のひらの切り傷を、コーヒーメーカーは蒸気を吹き上げてる、心臓を病んだ老人の悲鳴のようだ、間接照明のひとつは切れかけている、無音の、ささやかな雷、空気は気象庁が告げたものよりは二、三度 .... 高速で切り刻まれた、記憶の断片の産卵、街路の水溜りの中で澱んだ紙屑になる、血を感じられない日々の中で神経組織が煙を上げている、いつでもどこか鼻腔が焦げ臭いのはきっとそのせいさ、都市の回転はドラム式 .... 歯痒い思いをしたのか、それとも、迫り来る死に抗おうとしているのか、群青色の蛇がバ・ダ・ダン、バ・ダ・ダン、と、鞭のようにしなりながらのたうち回っている、俺は、リズムとしては一貫性の無いそれを、パン .... 死生観のような雨を避けて、廃墟ビルの中で壁に背を預けて座り込んだ、雨音は右心室で染みになり、睡魔に負け始めた俺は次第に薬物中毒者みたいな微睡みの中へと溶け始める、小さな火がそれ以上広がりもせず、だ .... 愉快な話が夕刊の一面を飾り、行き着くところまで行ってしまった、サイエンティストは次作の時限式ギロチンでこの世からおさらばする、希少価値のある珈琲が豆のまま傷んで、辺り一面狂人の頭部を開いたような切 .... 結局のところ、残されたのはがらんどうの部屋のみだった。北に空いた窓から、曇りがちな今日の午後の光が遠慮がちに忍び込んでいるだけだった。気づかなかったけれど、午前中には少しの間雨が降ったらしい。窓か .... 充血した眼球は茶褐色の世界を眺めていた、時計は高速で逆回転を続けそのくせ何ひとつ巻き戻されてはいなかった、四肢の長過ぎるアビシニアンが毛玉対策を施した餌を欲しがってはガラスのように鳴き続けていた、 .... 室外機のうねりのようなノイズが脳髄をずっと拡販している、まるで呼吸しているみたいなそのリズムで俺は灰色の影法師が踊り続ける幻を見る、真夏の太陽の下に居ても曇天が続いているような…動乱、人生はそいつ .... あなたの指先に出来た小さな傷は
血が流れるまであなたにそれを気付かせはしないだろう
あなたの内奥に苔のようにこびりついた疲労は
夜更けのベッドの上で初めて口を開くだろう

聖なるものは狂 ....
烙印が穿たれたあとの血肉は消炭のように砕けた
枯れた谷底の川底を舐めながら、ひととき
黄色く発光する月を見上げて
撃ち落としたいと望んだ
薄い靴底は尖った岩を踏む度にそのかたちを伝え
いちい ....
蝋細工の、人間の形をした名前の無い紛い物が、夏の温度によって次第に溶け瘦せ衰えていくさまを記録した短いムービーが、失われたシアターでリフレインされていた、それにはBGMどころか音そのものすら記録さ .... 錆色の夕陽が世界を、血の雨の跡のように見せる頃、ゴム底に画鋲がひとつ刺さったスニーカーを履いて、ぼくは巨大な工場が立ち並ぶ海の近くの道を歩いていた―なぜ画鋲を抜かないのかって?それはゴム底を貫いて .... 海の彼方で揺らめいていた狐火がいつの間にか消えていたので、千枚通しで手のひらの真ん中を思い切り貫いた、その刹那、激しい火柱が世界を二つに分け、それからそれまでと同じ暗闇と静寂が訪れた、そう、狐火は .... 錆び色に暮れかけた綻びた路上に抱かれて、お前は静かに雨を待っていたんだ、記憶や宿命、そんなものに纏わるすべてを穴だらけにして排水溝に飲み込んでもらうために…一日はうだるような暑さだった、世界中が陽 .... 白蝋病の脳下垂体が午睡の最中に揺蕩う夢は、可視光線の乱舞の中の血の華、難消化性デキストリンが渇いた腸を掻き回す、グリアジンの気紛れな呪詛、五臓六腑で踊り出す、偽造通貨が廃棄物処理場で網膜に焼き付け .... 求めているのは本当は音楽ではなく、無軌道な音の集まりなのかもしれない、それは一般的には、ノイズと呼ばれるようなものかもしれない、でもそれには制約が無いし、衝動について語る手段としては、最適なものだ .... 死んだ草が風になるのを待っている道の秩序を
ソールで滅茶苦茶に荒らしながら歩いた
深い湿気のもやが身体中にまとわりつく
携帯プレイヤーのバッテリーは音を上げ
音楽は記憶の中だけでコードを探 ....
寝惚けたお前の目が見開かれるくらいに
猛烈なやつをぶっ放そうか
俺はフラストレーションの岩石になってる
どこかにはけ口を求めてるのさ

指先の些細な痺れが気になる
足のつま先の痛みはい ....
街では亡者たちがうろついてる
目的を忘れた間抜けたちの群れだ
どんなに掃除をしても街路は汚れ続ける
どんなに愛が溢れても醜い憎悪に変わる
焼き立てのパンにピーナッツバター
幸せの理由なん ....
地面に伏した死体は若い女のようだった。なぜそうなったのか、もう判断もつかないほどに腐敗しきっていて、鮮やかな配色だっただろう衣服ももう、全身から溢れ出した体液に塗れて汚物のような色味に変わっていた .... 自家中毒のなれの果て、日常の澱の中で、粘着いた息を吐きながらのたうち回る断末魔の蛇のような精神世界、床に食い込んで剥がれた爪に赤い軌跡が続いている、服毒に似た衝動、あらゆる歪みの中で、真直ぐな線こ .... 路上に散らばった散弾銃の薬莢を拾いながら朝早くから昼過ぎまでずっと歩いていたんだ、それが本物かどうかなんてことはどうだってよかった、サバイバル・ゲームに使われるチープなものだって全然かまわなかった .... 閉じかけた本の中に、切れ切れのラジオの電波に、街路にこだまする無数の生業の中に、隠れている、隠れている、引き攣った神経の残響に、レールを軋ませる列車の速度計に―伝令は駆け巡る、宛先も無いのに、沢山 .... 粗悪な要素は瞬く間に蔓延する、そうなったらもうどうしようもない、知らない振りをして、絶対に巻き込まれないように細心の注意を払わなければならない、流されるものはつるんで騒ぎたがる、デシベルの値と真実 .... まとわりつく蛆のような概念を振り払って重湯のような朝食を啜ると世界は絨毯爆撃みたいに騒々しく煌めいていてウンザリした俺は洗面台を殴り殺す、拳に滲んだ血はホールトマトの缶詰を連想させたので昼飯はパス .... 凝固した毛細血管のような形状の幻が網膜の中で踊る午後、飛散した詩篇の一番重要な欠片で人差指の腹を切る、往生際の悪い具合で滲む血の赤は、どういうわけだか若い頃に会うことが無くなった誰かのことを思い出 ....
ホロウ・シカエルボク(1189)
タイトル カテゴリ Point 日付
夜が騙している自由詩1*23/12/1 21:28
Time Was自由詩2*23/11/23 22:17
君の新しい詩を自由詩1*23/11/12 21:58
The Essential Clash自由詩3*23/11/4 15:58
彷徨いの計器自由詩1*23/10/29 21:45
壊れた受話器に泣かないで自由詩2*23/10/23 21:54
真夜中、路地の終わりで自由詩4*23/10/17 22:00
雨垂れが聞こえ続ける限りは自由詩5+*23/10/9 22:21
大仰なビブラートで歌い上げたあとでほんの少し後ろめたい気持ち ...自由詩2*23/10/4 21:38
がらんどうの部屋の抜殻自由詩3*23/9/27 21:38
ブラッシュアップ症候群自由詩3*23/9/20 21:59
Growth自由詩3*23/9/13 21:47
寝不足自由詩2*23/9/5 21:13
白んだ月自由詩2*23/8/28 18:35
この夢のどこかに自由詩1*23/8/21 18:27
Transit Time自由詩2*23/8/14 18:43
ああ、次の波がもしも爪先にやって来たら自由詩1*23/8/8 21:44
ハード・レインを待ってる自由詩2*23/8/2 22:19
銃弾はひとつだけでいい自由詩2*23/7/24 21:36
ノイズの中でなら上手く眠れる自由詩4*23/7/17 15:10
夜は明けるのだという寓話自由詩2*23/7/9 22:26
勝手にやらせろ自由詩5*23/7/1 21:58
咆哮の特性自由詩4*23/6/22 21:50
永遠には生きられないけど自由詩1*23/6/12 10:43
ダムド・ライフ・シカエルボク自由詩2*23/6/5 21:39
誰かが遠くで笑ってる自由詩4*23/5/29 21:22
照準鏡の軋む声を自由詩1*23/5/16 22:14
詩情よ、その街路を自由詩3*23/5/12 21:12
しらふで死にな(毎日は降り注ぐ)自由詩4*23/5/8 21:25
だからもう一度、初演の舞台の中に自由詩5*23/5/2 21:21

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