皮膜だけで感知するヴァイブレィション、崩落する外壁の中に
差出人すらすでに忘れた封をされた手紙、ごらんよ
それはもう俺たちの知っている言葉とは変わってしまった
ただ真っ当な憧 ....
紫の残暑が湧き出る。コンクリートの硬質を嘲笑うように。明るいところとそうでないところをたがいちがいに踏みつけながらきのう見たテレビを思い出している。
それはせみの羽化の映像で、ナレーションは ....
青黒い皮膚の下で
躍動する肩甲骨に
未熟なサーファーが乗り上げて
水飛沫を上げて砕け散る
白い泡立ちとなって
打ち寄せる指先は
永遠に砂浜を掴み損ねて
桜貝の汗を置き忘れていく
....
煙幕のような雨を見ている
事務所の中から濡れる心配もせず
一枚の絵を見るように安穏と
その雨の中に入って行く
傘など用をなさずに
あっという間に濡れ鼠になって
髪から滴り落 ....
みじかく、強めの雨がふる。もうやんだかなと思えばまた降り出し、まだ降っているかなとおもえばもうやんでいる。そんな調子で。
ぼうっとして、すこしずつ痩せたり、太ったり、食べたりしている。
子 ....
コンビニ前の
喫煙所で
マイルドセブンを吸う
雨がふっている
さっきまで
ついさっきまで
ここには猫がいた
片耳の潰れた
グレーの猫
....
俺?
俺はぼろぼろになってあの街から追放されたんだ
え、泣いてやしないよ
この泥があるからこそ蓮の花も咲くらしいから、大丈夫だよ
こころの問題じゃない
脳の問題だ
....
あっ
風の軋む音がします
※
母となれなかった女の子供が母となる
子を宿せば母になれる
そんな容易いものではなくて
幼子の抱く古びた操り人形のように
いつのまに ....
あたいの心は茜色
つっかけ蹴り上げたら
明日は、きっと晴れ
それは 透明な砂だった
すこし おおきな石は ふたつあわせて叩くと 火花が散った
そんな 透明な砂の上に
あなたの フィンがあった
瑠璃の穴を飛ぶ鳥のように
泳いだ証の あなた ....
眩しくて照れくさくて
思わず顔を背けたくなる
輝かしい朝の陽光が
ぼくの背中に降り注ぐ
その足元には
最早自分の言葉を
紡いでいくことが出来なくなった
明後日の方角を見つめる
....
本当の名前なんて
一度も書いてあったことがない名刺を
感じ良く差し出す空っぽな指先
本当に行きたい場所へ
一度も連れていってくれたことがない
少しくたびれた空っぽな向う脛
どん ....
秋の言葉を山盛りにした籠には
色とりどりの付箋が貼ってある
坂道の先の赤トンボが群れている辺りに
配達する家があって
どんな挨拶を交わして
玄関を入るべきかを考えている
素肌に纏っ ....
はじめて情事を体験したときそれは情事じゃなかった。情事と交尾はちがうことだとすぐにわかったし、わたしの体験するそれが情事ではないこともすぐにわかった。だから早く子供を作ろうと思った。交尾ならば結果をつ ....
何枚
ブランドや
一目惚れの服を
買ってみても
満たされないのよ
深夜に
コカ・コーラを飲んでも
ひと袋の
ポテトチップスを空けても
一杯の
カップヌードルを平らげても
物足 ....
浅皿を覆うよどんだ水面は
つい今しがたまで命があったのです
それは固形物に味を与えていました
役割を終えて今にも
捨てられようとしているのです
いつ命が失われたのでしょう
それは最後の ....
どんでん返しの日常の繰り返しで
あわてて僕は
鍋から落ちそうになったこんにゃくを拾おうとする
わかっているのかな
この僕を
こんにゃくはぬゆりと簡単には掴めない
のっぺらぼうで無愛想
角 ....
序―夜を歩く
私がつむぎだした言葉たちは、果たして私を救うのだろうか。暗鬱の底にある私の精神をそれらは果たして白日のもとに連れ出すのであろうか。私は語り出す。ゆるやかに、徹頭徹尾、あざや ....
マッサージから帰る道すがら南国の落日の光景にお客さんは皆さん感激してくれた
今夜は今回のマレーシア企業視察団の第ニ陣との交流夕食会だった
第ニ陣にはイガタアヤコがついていた
職場のように挨拶をす ....
精神のスパイクは
今日も効かない
彼女はマインスイーパーに夢中
世界は今日も半分だけ
かびの生えた海の中
知らない言葉
知らない気持ち
錆が崩れて
彼女はマインスイーパーの中
....
それから
すこしだけはなしをした
核心の
すこし手前をうめていくように
ほんとうは
言葉も
いらなかったけど
なんとなく
そうしたほうがいいような気がして
す ....
ねえ、あなた
おい、きみ
なあ、おまえ
よびかけてはみたけれど
こたえる声は なかった
金之助
小さい時かかったインフルエンザが元で
鼻茸ができた金ちゃんは
いつも 右の鼻腔がピーピーしていた
(インターフェロン3本打っても治らなかったんだぜ?)
(するうち自然治癒で解熱 ....
止むことを知らない汚れた雨は
幾層もの大地のフィルターで
クリスタルな輝きの水に
止むことを知らない悪意の視線は
守られるもののない
むきだしの心を容赦なく貫く
浄化されぬ禍禍しい ....
たわむれが
咲いて、
さい
て
羽のかたちで
だまりこくって
子どもはそれを
真似して
つづく
いのり、だね
放つかたちの
閉じない
ひ ....
ナイフとフォークで
白い雲を少し切り刻むと
青い空がするりと落ちてきた
傍らに小奇麗な色で衣替えした
収穫の時間を置くと
秋の形が出来上がった
味覚を一つずつ競うように
....
「海は嫌い、夏も嫌いだし、晴れも嫌い」 僕が何よりすきだった君
わがままな人ほど白が似合うのだと知った 季節が変わる音がきこえた
雨が降らなければ
いつまでも踊っていられるのに
御飯は食べられなくなるかもしれないけど
時間の感覚は
生来持ち合わせていません
明日のことも
昨日のことも
よく分かりま ....
いちばんつらい、いちばんいたい
きみがいたのは、そういう場所
わたしたちにできるのは
もはや最期のひとつだけ
そしてきみは、だいすきなご主人に抱かれて、永遠の眠りについた
お ....
ティッシュペーパーに百円ショップのサインペンで絵を書いていたよね。いちばん毒々しい色合いになるからって。僕は意味がわからなかったけど、なんとなくかなしい感じにえがかれるティッシュペーパー嫌いじゃな ....
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