そんで二人してどっかの遠くまで歩こうぜ
寒いのも我慢して
眠いのも知らんふりさ
彼女の手を引いて
一人ぼっちで伸びていく
一人ぼっちで干からびていく
河川敷でむつかしい顔して
ち ....
一月の火曜の午後の夜八時わが子独り子生まれにけり
ソプラノの産声なりしその声の耳にしっかり覚えておりき
生れてより二歳三歳ともなれば家々訪ね共に歩きし
{引用=ビル街のアオスジアゲハの蝶道はヒトの歩道の少し上のほう} http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=211329
東京のオフィス街にもアゲハはい ....
重い荷物を背負って
物憂い坂を上る
一番好きな歌を
でたらめに歌いながら
*
押入れの中には
持て余した夢の残骸
潔く捨ててしまえ
できそこないのガラクタなんか
*
....
京都市内は天気雨
烏丸通りを東へ進むと うっすらと虹の橋が
鴨川のあたりから 色づいた東山を通り 比叡のほうへと伸びている
消えそうな七色の向こうに
カメオベージュ、アイボリ ....
終わりたくない昼と
始まりたくない夜が
西の空で見つめ合っているような
そんな色だった
手放したくない光と
受け入れたくない闇が
西の空でせめぎ合っているような
そんな色だった
思いがけない桃色 ....
「天国へ行ったんだよ」
空気が凍てついた
父は泣き
母は泣き
私も泣いた
小さな体で16年がんばった
私は子猫の時チャチャと名付けた
みんなでチャチャと呼ぶと
家が明るくなると思っ ....
ぼくの背後で
どれくらいの回数を
太陽と月が交互に
未だに頼りげな
ぼくの背中を
照らし出していったのか
両手の指では数えられない
ただ背後に映る
太陽の情熱と
月光の沈着を ....
持続性にケチのついた情熱の抜け殻、大きな家具屋で買った安物の低反発のクッションの上で鎮座ます、時間は無駄金の垂れ流しみたいでいくら気をつけてもそこから、ほら、そこから、上等なクッキーの粉みたい ....
+
苦笑いの先の
たちの悪い後味が
列車に乗って 体の中を駆け巡る
窓の向こうで手を振る子供たち
飴玉を舌で転がしながら
噛み砕く未来について考えている
さらにその先では
色とりど ....
母は私を
つくりたもうた それゆえに
憎んでしまって ごめんなさいね
あなたと私は別の人だと
あなたもそう 思いたかったことでしょう
あなたを否定することが
自分を肯定することに
....
声帯の下から胃の入り口まで癌が拡がっていると
入院して一週間目の兄が一本目の点滴を受けながら
病室で静かに語る
声帯が大丈夫だったことに安堵した様子で
芸大の声楽科に入って声楽家として
....
あり合わせの野菜と特売の豚ばら肉で作った野菜炒め
ちょっと辛めなのは彼の好みで
できたての熱々をふたりのお皿に取り分ける
彼はと言えば相変わらずのパソコンに熱中していて
彼のお皿にはお ....
満月か? 14番目の月か?
星座と月の輝きに見とれて、身体が冷えた
もうパン屋には灯り そろそろ焼き始めるのかな
煌々と月や星が輝く
夜空が明るいと 真夜中であ ....
私はいま平和なお付き合いをしている。平和というのは、血や涙が出てこない。過去の男や女も絡んでこない、ストーカーに悩まされることもない、という意味だ。病気になってもう3年になる。薬を一日でも飲まなけれ ....
光る小さな玉が
ふわふわと三つ
それぞれに適度な引力を持ち
時にはふわふわと引き合い
ふわふわと離れ
角もないのに接触した拍子に
傷をつけ、傷をつけ合い
そうかと思えば
....
始めましてサイクロプス。
これを送るころには返信になっているのだろう。
夜にしか生きられない我々には意味のないことだが。
我々は我々のグロテスクを呪うだけ賢くなった。
頑なさが麻痺を越え、 ....
非常階段に隠れる
息をひそめて隠れる
誰も来ない秘密の場所
静かな安らぎの場所
遠くで犬が吠えている
でもここでは関係ない
のんびりと煙草を燻らす
悪意の雨も関係ない
....
自分が木螺子だと気づいたのは
空の水が全部落ちてきたような
凄まじい雷雨が通り過ぎた後だった
公園のブランコの下の水たまりに
たまたま自分の姿を映した僕は
ほんの少しだけ驚いた
で ....
雨を
風を
君は無情と例えたが
ごらん
あんなにやさしく美しいものはないじゃないか
ゆうべの雨が
ななかまどの葉をすべて攫ってしまい
衣をはぎ取られた枝が艶め ....
26年目の記念日
落ち着く和食居酒屋の個室で
あたしは
貴方に
指輪ケースを差し出した
もう一度 はめ直して
いつの頃からか
あたしの薬指には 指輪の跡さえ
なくなってい ....
どんなに雨が降っても。
どんなに雲が広がっても。
必ず、どこかに青空あるよ。
終わりの果てだと 葉っぱのふち
緑の雲を浮かべた陽気
体を掠めて靴の先で紐をとく
小さな精密が一生懸命
育てた木は また残る
根元に散らばる慈しみと親愛が
腐りはて かさかさに乾い ....
アルバムをひらくと
わたしがいる
みんな
わたしだとおもって
いまもどこかで
わたしだっただれかが
わたしをおもいだして
わたしをみている
一日に一度は玄関を開けているだろう
仕事に向かうためだが
僕は薄汚れた透明な抜け殻を羽おり
「僕」の言葉を放り投げる
外に出れば
そこは樹木の生い茂る密林だ
昨日通ったはずの道は
....
羽を休めているのか
羽ばたこうとしているのか
あたしの
アゲハ
風を待っている
「届かない」 抱き合いながら目を伏せる
いとしさの静寂にふる白い雨
引き寄せるつよさをはかる むなしさよ
幸せだったよ、楽しかった。あの頃は二人とも同じ気持ちだった。
何も知らない君が、なんでも知ってる僕と、
一緒に居た。
君はなんでもしてみせた。
なんでも頑張ってみせた。
僕に褒められるた ....
「泣き腫らした家」
その家は号泣する
時間を失った丘陵にたたずみ
家主の帰りを待ちわびながら
その家はときどき夢想する
彼女が門扉を開き
飛び石伝いにやって来るさ ....
明日はきっと晴れるよね
そう願わずにはいられなくて
ふと手を休め振り返る
自由気ままに暮らしてきた日々
愚痴っぽくなってみたり
ときには人恋しいくせして無口になってみたり
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21