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きのう
飛び去った飛行機のように
蛾が震えていた
取り残された最後の技師が
数値を記録し続けている
薄汚れた窓硝子の向こう
森を走っていく少年あるいは少女の白い素足が
境界を飛び越えなが ....

水溶性の喧騒に混じり入る
マーブル状の
夜の鳴き声

脈が終わって、それでもなお
時は余る




疎林のまばらを
記憶で埋める
蔓はどこまでも
遠く伸び

驟雨 ....
辿り着いたら夢の島、なんて都合の良い話ばかりはお目に掛かれない。

ホープ/
最近奴はひどく機嫌が悪い。政治家の粗悪な立ち振る舞いで、とか、少し買い物に行っただけでも客の八割が早咲きの五月病の兆 ....
さわらないでと
胸に茨を抱きかかえたまま
叫んだね。

マゼンタの色の野ばら
きみと、ぼくの

灰に涸らされてゆく喉で
必死に歌っていた僕ら

君は僕に蕾ひとつない
花冠を作って ....
消防学校の倉庫に
翼を外したタイガー・モス機が
あったね
あれで飛ぼうよ
元どおりに組み立てて
ジプシー・エンジン廻して
最高のお天気の朝に


最大視程のはじまりに立って
グラン ....
 きみのなまえをしらない
 しかし柱を折る方法を知っている
 きみのなまえをしらない
 しかし一杯分の奢りかたはしっている
 きみのなまえをしらない
 いたちごっこの後を片付ける
 きみの ....
昇り降りる明るい雨の
降り降りる間に 降り昇る間に
人のかたちにまたたく鏡へ
灰と花は訪れる


壁に窓はなく
窓の絵があり
鈴の溝の午後
空はすぎる


 ....
氾濫する
春の本流を立ち泳ぐ
辺りには甘い毒素が満ちていて
脳から先に侵されてゆく

あらゆる感情の結び目は解けて
それがいいことなのか
悪いことなのか
判断さえおぼつかないまま
い ....
おぼろ月夜に
醤油をかけて
チュルルと
流し込んでも
うしろめたい後味が
背筋を駆けるだけだからって

桜の散り際を
ゼリーで固めて
トゥルルと
頬張っても
安っぽい哀しみが ....
からっぽのぼくだけど
きみでは満たされない
本を読んだら
真っ黒のジュース
ぼくに満たされる

からっぽのぼくだけど
よれよれにはなっていない
天日干し一夜干し
流れ星がいいな
目 ....
浅いゆめ 逃げた夢
水色の風のリボンをなびかせて
真昼のおもいから逃げた夢
白い影を引きどこへゆく
テーブルの紅茶の冷めないうちに
その舌の根の乾かぬうちに
お前のアリスをごまかして

 ....
僕が空っぽに生ぬるい
ゲームセンターに考えさせられた自分は 
誰かにばかり でも とにかく
のんびりやっていたら逃げられた

何かにされるのだろうかとそして
はじまった 受験はいったい
 ....
昨夜、遺伝子と数回にわたって交合したけれど
最後まで、ぼくが触れたのは
ぼく自身の器官だけであったので、
結局のところ どんな言葉でも形容できない



感性や知性を、すべて破壊したい
 ....
水色の匂いがした

午前の光に撹拌されて

僕と彼女の鼻に入り込んだ


どこかで蛙の卵が匂う

別れの空虚が

新たな予感が

季節を越えた

二人の匂いがしている
 ....
キラキラとフライパンが
禿げて銀色が出てきてしまい
目に光が飛び込んで
そのまま赤錆に変わっても
半年ほど使い続けていたが

昨日、
ふいに
インターネットで調べた金タワシが丁度あった ....
郊外の電車はぎゅうぎゅう詰めで
東京に出るための人たちで 
引っ越した僕もこれからはそのひとりで そんなふうに
名前も知らない女の子の体を感じている

カタコトカタコト…

だけど柔らか ....
おまえが売春婦なら

と思ったことがある

失礼な話だから

おまえに言わなかった

こんな関係なら

おまえが売春婦で

オレが客であるほうが

だれも苦しんだり

 ....
((ア、

した、明日/
あわく、中に いる(の
遊泳す/る、書物の朗読するなかに/かんたんに
数えられるように、丹念に形成され(て
アネモネの、一文字を、切り、取ります
ア、ア ....
宇宙と

そこに存在するものとのあいだには

違和感がある

物理学者も

宗教家も

画家も小説家も詩人も

私たちも

それと折り合いをつけようと

日々をいとなむ ....
高速はビル群をすぎて

すると町並みはずいぶん平野で

夕暮れる武蔵野をはしっていた


白くて麗しい彼女に

告白してしまいそうだ

自由な選択

でもそのあとを知っている ....
過ぎると思えばもう七月だった。太陽は容赦なく地平を照らし、噴水は熱を帯び煮え滾るように地底からの湧き水を惜しみなく撒き散らし、攫うように若者たちの長袖を奪っていく。燕尾服のよちよち歩きは麦わらを無理矢 .... 乳房が熱くなって

きみの鳥肌が湿っている

きのう出会ったのは

地方都市の中華屋でだった

客はふたりしかいない

そのあとカラオケに行った

十五の夜を歌う

きみは ....
窓を 開ける
 太陽が 沈む
もう 一寸 ひとりで
 眺めて もしも
藍と朱が交差する沖の向こう側に
寝そべって小さく閉じた夢を見れたらなあ
ああ

盗塁王 扱ける
 蜜蝋が 融ける ....
クリームソーダを注文すると
ウェイトレスは 少し
嬉しそうな顔した

昔の僕は デパートメントストアの屋上に行く
そこで 必ず クリームソーダ
注文して

その透明な緑の泡 ....
どうしてどうしていがみ合うのですか?
同じ同じ人間じゃないですか?

そうやって笑えないのは
誰のせいですか?

そうやっていがみ合ったり傷つけあうのは

歴史のせいですか ....
無邪気に笑い
あるがままに笑い
自分の思うままに悲しみ
ヒトを見ない 気づけない
それでもなお
傷つける

個性が溢れない
誰もが普通
隣を気にしている
そのくせに 誰 ....
悠久のときはあった
はるか昔

それは 千年前か 百年前か
それより前か

今夜も 月は昇り沈んでいく
目が暗闇に慣れてしまって
見えなくなった

ヒカリ
シアワセと悲しみは表裏一体だ

それでもそのどちらかを選んで行かなければならないんだ

それが鼻先をかすめるやわらかい風を感じたとしても

綻びは出始めてる
それがどこに行くのかは分から ....
しずかなまちに

さいがいがやってくる

たてものをはかいし

こどもたちをしたじきにする

さいがいよ、おまえはばかだ

しずかなまちを

ひとはかならずさいけんし

に ....
 
森を探していた
いつも森のある辺りを
手探りで

人の皮膚は
思ったよりも広大で
地図を持たずに歩くことは
意外と困難で

まだ幼かった
少年が
少女に触れてしまった
は ....
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