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秋に夜が訪れて
炭酸水が流れこむと
暗い海の底
音もなく稲穂が揺れる
えら呼吸をはじめる
溺れないように
母が子守唄を歌う
目を覚ますまで
魚になる
泡をこらえて ....
水風船をぶつけられて
笑ったけど人知れず泣いてたあの子は
明くる日 きらめく水晶の舟で
だれも知らない金色の国へ だれにも告げず旅立った
水風船をぶつけて
実は謝ろうか謝るまいかと悩 ....
私が持っている鍵を使って
あなたの心に入り込む
でも今は
鍵穴が新しくなり
私の鍵では入れなくなった
私への想いがなくなった証拠
使えなくなった鍵は
捨ててしまおうか
私の ....
わたしは
だれのものなのか
だれもおしえてくれなかったので
わたしは文字になりました
そうすると
色々なところで
わたしを使ってくれました
本の中にわたしが居たり
チラシの中に ....
鳥は自由に飛ぶ
一本の線によってへだてられた空間を
風つかいのグライダーのように滑空し
大気をはらんだ凧のように静止し
熊蜂のように羽ばたいて流れの外に飛跡を残したりして
そして時には それ ....
二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き ....
道端に膝が咲いていた
膝が咲いていた?
膝が咲いていたとはどういうことだろう
膝は、知りませんよ、とばかりに
風にゆれ、少し音を立てている
春も終わるころ
ぼくは何の確証も持たずに
....
夏痩せしたみたい
はり金が差し出す腕は確かに細くて
どこまでが腕でどこからが腕なのか
わからないままに、痩せたね、とさすると
そこはこめかみよ
拗ねたふりをする
食卓には温めたロー ....
(一)すべてのものは
日が翳っている
四月は末日
冷たい図書館の
その片隅で
ある日、男が生まれ
ある日、死んでいった
たった二行の
歴史書が
誰にも読まれること ....
ぼくはミルクキャンディーを毎日舐めていた
生まれたときからずっとだ
だからいつも舐めるミルクキャンディーがどんな味をするのかなんてわからない
そんなぼくとおなじ
ミルクキャンディーを舐めつづけ ....
ラッコといっしょにお風呂に入る
ラッコは不安気にぷかりと浮いている
タオルをお腹に巻いて
その端を栓に結んであげると
やっと安心したようだがまだ不満気だ
そこで軽石を二つ持たせると
嬉 ....
街中ですっ転んだ
視界にあるのは人の脚
何事も無かったかのように通り過ぎる脚
立ち止まってこちらに視線を投げかけている脚
スーツの脚
ジーパンの脚
スカートの脚
ルーズソック ....
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