微炭酸
小川 葉

 
秋に夜が訪れて
炭酸水が流れこむと
暗い海の底
音もなく稲穂が揺れる

えら呼吸をはじめる
溺れないように
母が子守唄を歌う

目を覚ますまで
魚になる
泡をこらえて
知らない世界に行って
帰ってくる

やがて夜が明け
わたしたちの微炭酸に
朝の光が差しこむと
秋の実りが
音をたてて風にざわめく
 


自由詩 微炭酸 Copyright 小川 葉 2008-09-14 21:41:44
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