たらちねの殻梯子からおりてくる
あの白いもののなまえを

ぼんやりと霞む視界だけれど
ああここにはことばがある

たくさんの羽虫が
いのちを喰いつぶして
ああでもつらくはない

 ....
天動説の子どもが増えてるらしいのですが
それはまったく自然なことです

地球が回っているのだとしても朝が来るのは退屈なのですから
僕はお布団で魚になって
箱舟に乗ったかあさんとはなしをします ....
(森では)
ハ短蝶の二指が劣等な塵に沈むワーゲンで踊る
破綻した星座を弔うシガレット。

(森では)
五指のヘ短蝶が春の終わりに激しくワーゲンを叩く
ゴシック聖歌は沼の辺端で炎上した。
 ....
 

   鐘が鳴る
   各関節が反応する
   生きるのだ
   木の芽
   下草は
   萌える準備を始めている
   坂は長い
   峠だ
   いつも峠の天辺にいる
 ....
その女の人は、ずいぶんと寡黙な人で
その寡黙さが
しきりに語りかけてくるのを
熱心に聞いていた

薄い手のひらでくるまれた
さらに繊細な指先は
紙袋のひもに引き伸ばされて
青く静止して ....
遠く、遠く、遠い場所で
何かが揺らめいている
ように見えるんだ
そして消えるんだ
追いかけないんだ
そこにいるんだ

交接、の前の
寂しさが好きだ
触れる直前の、一瞬の孤独
 ....
{引用=
幾億の
精子の遊泳
に似た
蛾の飛翔

おびただしい


蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾
蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾
蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 蛾 ....
近くのスーパーで2480円で買った
ドリアンが いい具合に熟れたので
苦労してむいたら その匂いで
カミさんが騒いで 赤んぼが泣いて
しかたなくベランダで立って食した

昼食はクサヤの ....
詩だけでは
あなたの全ては表現できませんよね
とカウンセラーが去年の暮れ云いました

これから、僕に訪れる事態

そうだと思うと答えてから
ずっと考えている
その間

いなづまや女 ....
壊れてしまったあなたを
彷彿とさせる
指先 の 震え

揺れる窓辺からこぼれた
儚さとは何だったか

問い は
景色の中に潜みながら
かすかな声を発する

嗚呼

そうであっ ....
  

なにか?
とあまりにも
涼し気に微笑む君
のせいで
僕はとりあえず
牛乳飲んで
落ち着こうと思う
確か僕は
君の肩に手をまわして
さりげない愛情と
そこからなにげなく続 ....
私は眠る
掛け蒲団の左右を身体の下に折りこみ
脚をやや開きぎみにし
両手を身体の脇にぴったりとつけた
直立不動の姿勢で
寝袋にくるまる旅人のように
防腐処理を施され
身体中を布で巻かれた ....
夕暮れの後薄闇になって
築十七年のマンションの庭を見ると
芝生の奥の片隅に三つ葉が生えている
その向こうで子供がボールを蹴っている
一人はエントランスのマットに寝そべり
一人は自転車に乗った ....
 田村隆一は太平洋戦争後の荒廃した社会を的確な詩語で捉え、戦後詩壇を代表する存在になった。と、日本の詩の歴史ではそういうことになっているらしい。僕は言うまでもなく戦後生まれ、それも高度経済成長の真っ只 .... {引用=
幸せの神様


(薄暗い照明。登場人物の一人一人にスポットがあたっている。舞台の右袖:小僧の神様がに立って鼻水を垂らして笑っている。舞台の中央:去勢したナルシスが黄色いワンピースを着 ....
千人斬りか。大言壮語したもんだなあ。いいなあ、若者は無鉄砲で(笑)
しかし、さすがに一人ではシンドイと泣きが入ったので、三人で百人ずつ交代でやることになりました。いやしくも他詩を斬るからには、みずか ....
 

   中央高速自動車道を
   馬が走っていった

   白髪の馬は
   ジェットエンジンを積んでいた

   街に向かって疾走していた
   馬はミューズだ やがて火の玉に ....
覚えてる
迷ったときの指先のちょっとした仕草とか
暑い室内でむっと漂ってきた身体の匂いとか

正午、君がサイレンの口真似をすると
僕らは作業を中断して
いつも小さな昼食をとった

今日 ....
先に子どもたちの声が消えた。流氷のひしめく冷たい海に放り出さ
れた私たちの生きようと叫ぶ声がむなしく響く。この海のなかでは
私たちは完全に無力であった。この冷たい氷の海のなかでは。
脱出を試 ....
こごえる
声の
淋しい温度
舌は口の中に引きこもり
のぼってくる苦い味にじっと耐える
やわらかく
ただやわらかい音のままにこごえる
もえることのない白い声
たとえばここで
たとえばそ ....
寒がりの猫の丸い背中
繋がった手と手の行方とポケットの中
氷面を渡る
ような
流れの中で目を閉じる


おーるうぇいず・こーるど、の
僕の足跡の
爪先が少しくぼんでいること
君は気 ....
ラインストーンふた粒はがれた日のようにさよならって言ったほうが勝ちなの



彼氏くらいいるんでしょってモノグラムの財布撫ぜてるひとに問われる



ゆめのなかほんとうの家族に愛される ....
もぅ つかれちゃった

ぼくはなにもできないのに

みんな、きたいをかけてくるから

ごめんね おかあさん おとうさん


そう言い残して

四葉のクローバーは自殺して


 ....
ばあちゃん

ごめんなさい

1月27日は
あなたの命日でしたね

予想はしていたけれど
やはり
忘れていました

あなたの写真に
水と
ご飯と
花とを
手向けなければい ....
   

        
    {ルビ緘黙=かんもく}

    きょうも土星は回っているのだが

    リンクは冷たい氷と岩だ

    雑草は生えていない

    ほ ....
いつからだろうマフラーがすっかり
魚だ
巻くと冷たい鱗がささり
しかも時々鋭い歯でかみつく
工場からの帰り
俺の手は油と煤だらけだが
首のあたりからは
腐った泥の臭いしかしない
明 ....
空 に 見 つ け た

君 の 羽 根
川口晴美詩集『lives』(ふらんす堂)
2002.9.28発行

 8冊目の詩集。表紙の、野原(あるいは花畑)にスカートの足を投げ出している写真がおしゃれ。第53回H氏賞候補作。2度目の候補も ....
  そうしていいこともあった
  悪いことがほとんどなのに
  
  大志をいだきすぎたために
  ついへこんでしまう暗渠が

  ぼくの大陸棚を転げ落ちて
  ゆく 

   ....
白いポンティアックのバンパーがねじまがり、ボンネットに飛ぶ鳥の愛称はスポッティ、可愛い名前でしょ、挽肉は力を入れて強くこねます、潰れた卵が二個、パン粉は少なめに、刻んだタマネギを軽く炒め、臭い消し ....
青色銀河団さんのおすすめリスト(573)
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