朝食は今週三度目のハニートーストだった
君は窓を開け放し 街の喧騒を招待する
車のクラクションと通行人のおしゃべりが優しく体を満たすから
満足気にテレビの電源をつけてみたりもする
カーテンがわ ....
テレビが湿っている
ただで人からもらった
のだから仕方がないけれど
水分をたっぷりと含み
少し軟らかい感じがする
付属のリモコンも
ただで人からもらったから
同じように湿って
チャンネ ....
そして明け方にふり返らずひかりつづける
(たしかに螢のような光が成長を始めていた。)
薄い紫雲
日没からの柔らかい犀棄を終わらせ
降りそそぐ
たくさんのラインが印象をなぞる
....
懸賞好きの母が
手当たり次第に応募している懸賞が当たった
「サナギ一年分」だそうだ
当然母は家族からさんざん責められた
そんなものが一年間も毎日送りつけられたらたまったものじゃない
特に ....
最初に雨を見たのは
ぼくだった
みんなはそのとき知らなかった
窓に一筋の雫が流れて
静かに落ちていったのを
最初に雨を見たのは
ぼくだった
風はなかったのかもしれない
ただ水が ....
どんな装いだったか
お前が愛し盲目にまでさせた安定性が
うなだれて堕落した時に
絶望視した目の死体を
担架に載せて運んでいる様を
コメディにしようと必死で繕っていたっけ
お ....
気がつくと、渚が後ろにあった
最近やけに足が濡れるなと思っていた矢先のことだった
後ろなど滅多に振り返らないから気がつかなかったけれど
ふと振り向くと、後ろに渚があった
ひたひたと波の打ち ....
ほら
鏡のなかにも ....
店内の
モーツアルトのBGMが
私の聴覚を虜にして
友人の言葉が耳に入らない
窓の外の
通りを歩く人々の営みが
私の視覚を虜にして
友人の顔が目に入らない
いま目の前にある
....
漏れるように現れる
過剰な知識
まるで栓を抜いてしまったよう
瞬く間に成る物は
世界一の噴水
残骸の泉
私の細胞一つ
地へと降り立ち
必死に押さえようとする
僕も僕も私もと
....
染色体が夕日に染まる。
染色体がミートボールを{ルビ咀嚼=そしゃく}する。 染色体が明日のスケジュールを確認し、染色体が今を生きる。
生きてみて、
月夜の闇が煙草をふかす。 いつになく哀 ....
眩暈に似た痛みが広がる
右手の人差し指を中心に
(歪に屈折しながら
(彷徨を(彷徨し
(彷徨っている
左右円滑に回転する
首の骨/球体A
(貴方が可能な限り速(早く
(振ってく ....
「まだできないの?。」
と訊かれたので、
「まだです。」
と答えると、
きみは、
すたすたと怪人の手を引いて出て行った。
それから。
ぼくはずっと、
....
右のポケットに
湿ったままのハンカチ
トイレのドライヤーで乾かして
にわかに水蒸気は生まれていくが
それは霧でもなく雲でもない
つまり、僕のポケットには
虹は入っていないという事
エ ....
テレビの画面いっぱいに
モザイクがかかっている
娘は笑って見ているから
面白いアニメか何かなのだろう
低俗なものはきちんと排除され
僕らは安心を手に入れる
新聞の記事にもモザイクはかけられ ....
今夜
あの曲がり角の向こうには
たくさん星が落ちていた
親切な人が手を引くから
もつれそうになる足を
必死に動かして
自転車や空き缶
硬いゴミが浮かぶ
汚れた川の隣
破れたフェンスの ....
何回叩いても反応が無いドアの前で
一本だけ煙草吸う
全部が灰になる前に出てこなかったら
帰ろうと思う
疲れちまった
そんなに多くの季節を越えた訳でも無いけど
この階段も幾度となく昇り降 ....
ここに
銀色のエンジンがあればそれと
あと太陽の動きのような一時間半があれば
ぐるりを周りきれるほどのちいさな島
四方からの潮風にさらされ続けていて
そこで何本もの縄を編んではほ ....
いつものように
いつものとおり
ガンジスの砂粒ほどの
転生を重ねつつ
今生も また 仏の軍勢につき
いつものとおり
常勝の勝ち戦で
悪を催滅しさるので
関係各位にお知ら ....
世界にこっそりと
覗き穴を開けて
穴の向こうを覗いてみる
光も闇も
何も無くて
だけど僕は見た
(確かに世界を)
昔可愛がっていた
ポチが走り回る
それを
おじいちゃんが微 ....
巴里の色を僕はしらない
おばあちゃんは
それは淡い青い色だと言った
夜が乾いていく
するとセーヌ川がたちまち
空に吸いこまれていくのだそうだ
巴里の音を僕はしらない
おばあちゃんは
....
あの空の中に
昔見た雲が浮かんでいた
子どもの頃に
みんなと一緒に見た雲
一人一人が雲を見て
いろいろな形を言いあった
それはそれぞれの夢だった
飛行機や船
イチゴとかカブトムシ
み ....
擦り切れている背表紙を
後生大事に持ち歩く
付箋に躓くことを繰り返してしまった
左手には一束のシャレード
紐解いている間に
夏の森は
微笑や涙やトキメキを頬張って
色彩を奏ではじめて ....
聳え立つコンクリートの塊
夕陽を遮る建物が
太陽の光を反射している
植えられた木々たちの傍
腐ってしまった水の中で
ぼうふらが湧いている
澱んだ空気だけが流れることなく
その ....
ちゃぽんと音がするので
ふり向くと
道端にいわしが跳ねていた
どうしてこんな所で跳ねているのか
と問うて見たら
どうもこうも無い
そんな事を聞くなぞ人間も野蛮になったものだ
....
刈り取られた
花々は暮れようにも
暮れられず
風が吹くのを待ちながら
やがて、
朝になります
いつか風、のように
広げた両腕は冷たい、思い出となりますが
その内、に抱えた ....
極楽浄土は
実在していて
分岐点は
今まさに
灯台下暗し
あまりに近くて
離れてみて
やっと見つけれた
異なる幸せ
秤にかけたら
も ....
むかし、
いやなことがあったりすると
よく近所の公園の砂場に来た
いつも靴をぬいで
はだしになって
そっと 冷たい粒にふれた
ひんやりとして
きもちよくて
なんだか心が落ち ....
あの町の夕暮れにはカレーの匂いが良く似合う
大体
二日目
ジャガイモが煮崩れてるぐらいで丁度良い
あの夕暮れの町には
人は流れていなくても
夕凪にてろてろとした
柔らかさが流れていて ....
その夢は終着駅から始まる
分厚い切符を駅員に渡し
改札を出ると
そこから終わりのない物語の
第一章がある
駅前広場から
右の道を上れば山があり
左の道を下れば海に着く
今は左の道に菜の ....
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