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太平洋戦争のあと
海底に眠り続ける
たくさんの機雷と
ともに朽ち果てた
駆逐艦は大海のひとかけらとなって
ゆったりと深く沈んでいる
真夜中の月は
もはや永遠に
届かない光となっている
....
オルゴールの奏でる短調の流れの中で僕らは出会った。
静かな避暑地の美術館に君の麦藁帽子は雄弁で
僕の黒髪に風を寄越した。
グランドテラスでは老夫婦の会話の隙間から優しいカモミールティーの ....
桜の花は満開で 君は一つの時代を卒業した。
休むまもなく 新しい時代はめぐる。
心の準備は出来たかい?
いま少しだけ 幼い君でいてもいいんだよ。
健気に咲いている花を見て君は ....
十字路を曲がる
手前の道で
お洒落な堕天使たちは
漆黒のハートマークを
隠している
小さな機械仕掛けの電話機を
白い手のひらで
握り締めていて
まるでレザーの
ロングブーツを
....
敵対者には花束を送れ
上等のやつが良い
色も香りも惜しみなく
リボンもしっかり選ぶが良い
和解のため?
平和のため?
とんでもない
刃物は優美さに隠される
獣は息を潜めてじっと待つ ....
闇夜の狂騒が頭の中で渦巻いている。
この音楽は私の思考を天空へと飛翔させる。
青も赤も黄色でさえも全ては黒に変容される。
黒く塗れ、私の目に見える物全てを。
ため息すらつけな ....
私を旅へと誘う郷愁が運河沿いの私の星空へ舞い戻ってきた。
存在価値などをぶら下げているそいつは
ひどく私を非難した。
旅に出ろよ、こうもりが私の頭上を飛んでいる。
マイルスの ....
もう二度と心から笑える日は来ないと思います
見たところ私よりも一回りも若いあなたは
これから半世紀以上続いていくであろう
(続いていってほしい)あなたの人生を
一度も心から笑うことなく歩ん ....
やわらカイ貝殻カラかなもじの
ぬるっとした意味うまれる
りょうせいるいかしら
もしかしてしかしら
しらしからぬしかしら
おかしらつきのおかしなしかしら
ナンタイドウブツカシラ
....
帰宅すると妻がキレていた
子供が泣いている 上手にお座りしながら
帰りが遅いとキレていた
仕方のない理由 会議とラインしたが既読スルーだった
育児中のストレスを二人で割っているつもりだけれ ....
今日の私の幸福は、朝早く目覚めること。昇る太陽を感じることに感謝する。
今日の私の幸福は、朝御飯を食べること。食べることが出来ることに感謝する。
今日の私の幸福は、野鳥 ....
ひとりでダンス?
いいえ
風がわたしのパートナー
わたしを見つめてください
あの方の姿が
見えてくるでしょう
わたしは木
いいえ
わたしは奇異です奇行です
見えない何かを
可視 ....
朝靄の木々の中を歩いてゆく。
無言の挨拶をうるさく感じている。
今再びの予兆にただ独り、俯き、
それでも精神は前を向こうとしている。
透明なピアノの音が遠くで鳴っている。
....
一人前 たまご三個は使いたい
これは食べ盛り男子向きなのだ
たまごを割ってボウルに入れ
醤油をたっぷり入れる
過ぎない程度に良く混ぜる
どんぶり飯に乗せて食べるのだから
しょっぱいくらいが ....
生き抜く命であるために
海外での独り旅に駄賃を
ポケットに包んで
二十歳で渡った地球儀の向こう
できれば
旅先で覚えた
スラングで話したいよ
病気を乗り越えて生きるために
隣人の苦 ....
詩学園は人工惑星にあった
右手に夜で
左手に光があった
脳と繋がれず魂のみで生きていた
詩学園に属していた僕たちは仲良しの友だった
詩薀蓄の授業は必須科目だったから仕方のない潰し時間 ....
オイラおっさん猫2003年生まれだからおっさん猫
同年にあかねちゃんに拾われたから毛食住セレブ猫
時が流れておっさん猫 でもかわいい健在の猫パン チ
最近は赤ちゃんがオイラを ....
『お母さん、最初から一緒に寝てほしいの』
『あのね、お母さんは忙しいの。
後で行くから、最初は一人で寝ないとね』
今夜も娘は
テディベアを抱きしめて寝ている
その規則正しい寝息を確認し ....
*与ひょう(仮)
あなたのいのちの陰影を
はきだめから拾い集めた
{ルビ文字=もんじ}の墨と二枚の舌で
なぞりたいのです
顏の砕けたおつうさん
どうか一編の愚行と
淡雪のよう ....
雨を迎えると豊かになる
けれど まだ足りないんだ 晴れには導かれやすい単純さは
ただの人間
私は腹を立てていた些細漣連なる鉛の莫迦波
深呼吸を施せば澄む問題にもならない
....
雪 ひとひら 舞い落ちる
静かな 夜に
雪 ひとひら 舞い落ちる
涙にも 似て
雪 さらさらと 風に舞う
冷たい 夜に
雪 さらさらと 風に舞う
血液にも 似て
....
アルモノヲナイモノノヨウニ
ナイモノヲアルモノノヨウニ
カタルモノニカタラセズ
カタラナイモノニカタラセヨ
時の澱み
虚無の沼地
透明な不発弾
スイカばかり食べていた記憶の夏
....
誰かの心に寄り添って
ただ
静かに手を握ろう・・・・。
ほんの少しだけ立ち止まり
ひとまわりした視界の先で
こぼれた涙を見たならば・・・・。
「声を聞いて欲しい。声 ....
馬鹿でっかい鰤のアラと
ぶあつい銀杏切り大根の入った
湯気のたつ味噌汁を啜って
海苔と胡麻塩の握り飯を食う
あー、うめぇなあ
海鳴りの音を風がさらう
子どもたちはまだ眠っていて ....
新しい気持ちが足跡をつけて行った
年が明けてこの慶びを
刹那をまた覚える 覚えたよと対話する
生かされながらを暁に乗せ 意志は控えめに変わらない良さを運んで行く
新しい気持ちに ....
例年にない大雪で
なれない除雪に悩む市民をよそに
ひたすらアパートの除雪に精を出す
あいつ
――大丈夫 おれ 雪国育ちだから
観測史上初を連日更新する中
近所の家々をまわり除雪 ....
種を蒔け
たくさんの葉や花や
実をつける種を
種を蒔け
君の愛した人に
君を忘れさせないように
種を蒔け
君の生きた証を
残す旅に出た時に
種を蒔け
いつか ....
とんとんとんとん
すり鉢で
ぐるぐるぐるぐる
潰して
がしがしがしがし
裏ごしまでする
上手にごっくん出来るように
私はこの愛情を楽しんでいる
食事と愛情
....
この手裏剣を使いたまえ
最期が近い祖父が言った。
人生は楽しみも多いけど
悲しみだって多いのだよ。
たくさん笑う日もあれば
涙が止まらない日もある。
悲しい時はこの手裏剣で
....
君が私を突き飛ばしたあの日から
私は私を捨てて
君を殺して 食べました
鮮血 美味い 全て 美味い
骨までしゃぶったよ
でもひたすら ごめんなさい
冷たく暗いアスファルト ....
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