地面には
ぺちゃんこのかまきり
おどけた鎌を振り上げて
お前は偉いな
踏みつぶされても
踊ってる
真夜中の耳はアーアーという幼子の怯えたようなかすかな声を聞いていた、鼻腔にはプラスチックを焦がした時に嗅ぐような悪い気が入り込み、瞼は闇の中に二つの重なった円(或いは流れる光の川)を見つけ出していた ....
明かりの消えた教室で、
ひとりふたりと、
席につく。
学籍のないぼくたちは、
幽霊みたいにゆらいでて、
いつも不安で不安定。
黒板のかすれた数式は、 ....
Is that a banana?
No,it isn't.It's a gorilla.
あれはバナナですか?
いいえ あれはゴリラです。
俗にいう一人の少年が英語を見限った瞬間を
....
どこへおいきやすの。
ほらあんた、
あんたですがな。
どこへおいきやすのか、
ちゃんとゆうてみなはれ。
ゆえへんのか、
ゆえへんのはどのくちや、
このくち ....
まだ青き紅葉の枝に止まり来る
秋はまだかと茶色い蜻蛉
夏らしい暑さも過ぎた昼下がり
石に腰かけ秋が流れる
その風に誘われたのかまた空へ
どこへ行くのか茶色い蜻蛉
吸われゆく雲の形は秋の ....
左まわり
やいばの先
痛みは光る
膝上の花
陽の差さない夕暮れに
何かがこぼれ 生まれる水紋
うすく うすく
つらなる水紋
誰も何故かを問わない日
醒めた ....
私のノートには白い文字で
フラットに似た記号ばかり並んでる
決して声に出してはいけない約束が
一番目に載ってたはずなのに
白すぎるせいで見えない
知らないで言葉にしてしまうと
「ん ....
秋の風の宙へ
何処か遠い指のピアノが示す
美しい階段を、わたしの指は
駆け上がることが出来ず
小さく折った、愛しくて、
そうね、耳があればピアノは聞ける、けれど、
つたない ....
幾枚かの{ルビ花弁=はなびら}が舞い落ちる
淡い光のあふれるいつかの場所で
あの日の君は
椅子に腰かけ本を読みながら待っている
いたずらに
渡した紙切れの恋文に
羽ばたく鳥の ....
とれそうなまま
しがみつくもの
制服のボタン
放課後のバッタ
ほどはるかな道
引きずった影
空笑いで蹴飛ばす
夢の石ころ
かたむいた道
走り出すバス
遠ざかってゆく
....
ごめん
あと五分だけ。。
なんてセリフ
想像したこともないよね
君の寝顔
無敵の寝顔
一。
わたしの壁にはきいろいしみがある。
しみはわたしが産まれる前からあったしみで、
わたしの父がこの家に婿に来る前から、
ずっとそこにあったしみな ....
空に、鳥の滑空していく
きん、とした音が響いている
いつも何かが足りない
青いだけの視界を補うように
手のひらはいつも、上を向いている
いつも着地する景色には
逃げ出してしまう色が ....
早朝
{ルビ浴衣=ゆかた}のまま民宿の玄関を出ると
前方に鳥居があった
両脇の墓群の間に敷かれた石畳の道を歩き
賽銭箱に小銭を投げて手を合わす
高い木々の葉が茂る境内を抜けると ....
ベッドの上で
二人向き合って
レモンを切った
そのナイフに
お前を映して
見ていた
ベッドの上で
二人向き合って
レモンを切った
そのナイフに
映ったお前は
....
青いクレヨンで
丸を描いて
くるくると
塗りつぶす
真っ青な月の絵
周りを
黒いクレヨンで
ぐるぐる
ぐるぐる
ぐるぐる
何度も
何度も
何度も
塗りつぶす
塗りつぶす
....
あ
午後が
千枚のツツクホウシで耳に触れる
この、耳、
もっと奥へと誘う迷路を装って実は
透明のものにたやすく沿う為の形状の
この耳が、悦びに震える、嗚呼、午後よ、
午後 ....
八月 二週 また 入院暮らし...
ガラスの塔のなかで、優しいひとらに、接しながら、病と添い寝して。
夏は、晩夏を迎えて、( もう、立ちつくし、亡くなっているのかも、しれない。 )
....
弱酸性のあなたは
ちょうど中学で習った化学の実験みたいに
たとえば夏の終わりの夕暮れが
ほんのり赤く色づくのを
美しく感じたりする
弱酸性のあなたは
ときどき褒めてあ ....
ぼくたちは生きている。
これまでもこれからも、
そして今もぼくたちは生きている。
世界にはぼくたちがいる。
たくさんのぼくたちがいる。
たくさんの ....
一。
バットマンの乳首は黒い。
そんなことを考えていると、
玄関のチャイムが鳴った。
テレビを消し、
けだるく返事をして立ち上がる。
足下がふら ....
少年少女の斜線部 成長のたび減る
針金で縛られた書簡霞に吊るす
コンパスの上半身を他国から見る
栞は砂しかもサハラの貧しい村
魚の形の輪乱すダンスいつか陸へ
火の粉に礼 ....
何から何まで
犬の日々だった
私の瞳孔はつねに濡れていて
咽喉の奥はいつも渇いていた
風にさらされて 乾きすぎた手拭いのように
水に濡れた掌を求めていた
何もかもが
犬のようだった
....
いつもいつもいつも自分に非があると思って生きてきて
悪くなんかないよ、って不意に頭撫でられたら泣いてしまうでしょう?
どうして君はそんなにも優しいのだろう。
綺麗になりたいと思うよ。
はや ....
机の上に三冊の本を並べる。
一冊目を開くとそこは、
林の中の結核療養所。
若いふたりは窓辺に佇み、
夜闇に舞う粉雪をみつめていた。
二冊目の本を開くとそこは、
森の中のらい ....
冥王星よ
君は一人じゃない
家族の中の冥王星
クラスの中の冥王星
会社の中の冥王星
合コンで冥王星
病院の待合室で冥王星
ファミレスで呼び出しボタンを押しても冥王星
mixiに ....
一.
戦争を俺は知らないんだと はじめて思い知ったのは
キプロス島に ある朝突然逃げ帰った妻が いつか話した
占領の話 地下室の話 息を殺して
あいつが真似た マシンガンの ....
ひざまずけば 祈りの
耳のたかさで やぶれた
約束を ささやきながら
ひらくから とこしえに
きみを わすれない
わたしが生まれ育った郷里では
要らぬものを裏山に投げた
村外れを流れる川に流した
囀る野鳥の気配に誘われて
ひとり裏山を彷徨えば
要らぬものは朽ちて土となり
夕餉の支度でも始めたのか
潜 ....
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