すべてのおすすめ
夜毎に月の灯りが街を照らすと
君の世界への入り口を探す
僕の世界は六角で
君の世界は八角なので
どうもうまく重なれない
僕らは半透明のカーテンで区切られた部屋の両側で
お互い影絵を ....
旅先で母親に背負われた赤子から
青梅を貰ってきた
長く握々されて熱くなった梅なんか
欲しくはなかったけれど
どうしてもやるというので貰ってきた
いらなくなったからじゃない
奴らは一番好 ....
パソコンが
空っぽの箱に見えてしまったら
部屋の明かりを消して
Tom Waits の「GRAPEFRUIT MOON」を流そう
グラスに入れたぶどう酒を{ルビ喉=のど}に流せば
....
「ありがとう」と言われたその瞬間
なぜだろう
口の中に栗が入ってきた
思わずその栗を噛み砕く
栗の味とその匂いが
自分を包み込む
なぜだろう
食べてもいないのに
そういえば ....
まぶたのかたち なぞるたび
まなこのかたち なぞるたび
くちびるはすこし かるくなる
くちびるはすこし おもくなる
くちびるはすこし ひらきゆく
....
閉じられた
まぶたのうえに
のせるくちびる
まぶたのかたち
まなこのかたち
たしかめながら
ひとりだけの あなたの
ひとつだけを
たしかめながら
....
{ルビ埃=ほこり}がかったランプの下
赤{ルビ煉瓦=れんが}の壁に{ルビ凭=もた}れ
紙切れに一篇の詩を綴る
クリスマスの夜
遠い昔の異国の街で
一人の少女が売れないマッチに火を ....
ゆっくり進むその足跡に
緑の光りが差し込んで
私の居場所を葉が隠す
あなたが歩く
あなたが顔を上げる
私は森に同化する
あなたが美しいと思う全てのものが
....
森の出入りは
神秘のベールに包まれてゐて
だれがその中に入つたかなど
識別できるものではない
少女が森に吸はれてゆく
光と闇の二極が
あまりにも霊妙に
相和してゐる扉を押 ....
ビルの20階から見渡す
大阪、18時25分
真っ黒な夜が街中を包み込んでいて
環状線を走る赤いテールランプの群れは
終わりのない葬列の円環
あの光のひとつひとつが
同じ数か
それ ....
喪服の婦人が森から出てくる
入れ替はりに
首うなだれて一羽の鶴が
森へ吸ひ込まれる
霧たちこめて
婦人も鶴も胸まで霞んで
二者はどこで擦れ違つたのだらうか
ともにもういづこに ....
さみしく囁く
そっと静かに
夜は
流れる
川面には
風
さよなら言葉
これから二度と
言わない
好きだとか
嫌いだとか
忘れてしまえ
昨日も今日も
明日も未来も
全 ....
夜の海に浮かぶ一艘の船
荒波に揺られ
横たわる観音菩薩の白い体の上に
飢えた犬の垂らす
赤い舌
いちぬけた
そう言える子には
勇気といえることのことはないのかも知れない
にいぬけた
負けずぎらい
さんぬけた
あせって失敗するなよ
とりのこされた
きみと ....
サキスフォンを右に
極楽鳥を左に
閉じ込めている
晴れた夏の午後開けば
波は歌い始める
夢は
この歩道橋から
飛んで
シラサギにでもなれたらいいな
ってこと
いま思いついた
私の部品が軋んで
いらないもの削らなければ
重たくて滑りも悪くて
いまはとても飛べないか ....
その{ルビ女=ひと}とは、ついに重なることはなかった。
どんなに重なっても、何かが{ルビ逸=はぐ}れていた。
( 左手の薬指に、指輪が光っていた
求めるものは、柔らかきぬくもりであ ....
カズラが花をおとし
森に住む蝶が
深々と死にゆこうとする八月
砂地から
こころないひとが訪れる
こころないひとは
分銅の肩を持っており
踏み入ると
腐葉土からは
ムクゲの細かいし ....
――Sに
ばらばらにされる
(君のせいで)
俺が歩く その先々で
俺は自らの破片をばら撒いてゆく
路上に
天井に
....
――Sに
家に帰ると
君のために心をばらばらにする時間がほしくなる
俺は怪物になれるかもしれぬ
あるいはなれないかもしれぬ
そんなことを思うのもすべては
君のためで ....
――Sに
よく見てみれば世界は逆に回っていた
老人は杖を失い 赤子は乳を失った
退化の兆しを感じ取って皿はふるえ
投げられた石は空中に留まった
世界の最初は奇蹟だ ....
光のなかに陰を求め
憩う人々の姿を探して
地平線に向かう
掟を破って
水平線を求めて船出する
奴隷商人のように
駱駝の群れを飼う男達
舟が出ると騒ぐ少年の不安
すべてのものは
見えな ....
その者はすべてを悲しくひきよせるという
そして誰も味わえない果実を実らせている
たったひとり)
わたしは{ルビ縁=ふち}の無い波紋であり
行くあてのない
昨日が
おいでおいで
と手招 ....
こごえるように
<うた>をうたう
こえられない
こころで
<うた>をうたう
わたしの
生まれたての
<そら>で
まだ
....
黒アゲハ
私が傍を通ろうとも
その場を離れずに
ひらひら
ふわりふわり
大きな羽で
何かに夢中
幼虫の頃
こんな姿になろうとは
思わなかったろうに
諦めた頃に
諦めたこと ....
月の裏側には湖があって
そこではフナがよく釣れる
月のフナは泥臭くなくとても美味である
レンズで焼くと水色に変わる
透明になる直前までよく焼くのだ
これは父の好物でもあった
あなたにも食べ ....
開放されるのは
11時で
それはもう
髪を後ろに縛らなくてもいいということで
夢は?
と聞かれても
猫とソファーで暮らすこと
くらいしか
思い浮かばない
やりたいことは
これか ....
祖父は
海軍士官学校の先生だった
手を合わせる横顔に
平和を祈っているのかと訊ねたら
そうではないと小さく呟いた
悔やんでいるのだと
小さく呟いて、そして
祈りは何も変えないのだと
....
夜よ深まれ
闇はもっともっと深くまで
暗く、黒く
私の胸に小さな灯り
ゆるりとめぐる闇となり
深く、深く
包み込む暖かさや
優しさなどいらない
そんなものはいらない
ほし ....
こんばんは わたし
こんばんは あなた
窓の外で
覗いてるのはだれ
漂うさざ波の天井
青い空に白い雲の天井の
部屋
明かりを消せば
月明かり ....
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