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飛砂を焼こうと
たどり着く海岸で
瞼を閉じたときに
ひらく{ルビ瞳=アイリス}

   あかいのは
   すべてが染まる音で
   あなたとの間には
   愛以外のなにかが潜んでいた
 ....
  
 
      沈んだまま明日のこない
      深海に揺れる一群れの
      長い、深い闇

地縛された肉体の
閉じる奥の扉
なにかのなまえで封じられ
こたえを閉じこめ ....
春に降る雨で
体のかたすみが
ざりざりです

   暗闇に体を置いて
   ぬくもりだけに委ねれば
   心の対流で
   とりもどす

ほんとうのすがたで
触れようと指を伸ばすと ....
手帳の中で森は
もう少しだけ明るかったろうと
右手の温もりを
むせかえる羊歯の
暗闇からたぐってみる

   いつか満たされると思い
   満たされたがっていた
   月が
   ま ....
舗装された道の
ペイントされた、とまれ

踏みつけられた骨の色の
見上げる季節の樹香
舞い散ってへばりつく
美しいという名の死骸
立ち上がれない
ペイントされた、とまれ

月が ....
星の遠めがねを峠に据えて
のぞき見る未来への深淵
みんななぜか震えていたね

体温を奪ったのは
外套をはためかせて
丘を吹き昇る風ではなかったんだ

風のゆくえを仰ぎ見る先に
透明に ....
墓標に刻んだ自分の名前に背を向けて
てのひらはいつまでもとどかないのです
生きることの意味を知らされないこぶしが
硬く握られたその先で照らして

夕日が水平線を越えて旅立つこの場所で
朝日 ....
踏みつけていた
いつの間にか踏みつけていた
{ルビ直線歯車=ラックレール}

きれぎれにされた
人生のように
強さだけを必要とされて

  ずっとつながっていました
  峠を越えるの ....
想いを何度も
辿るから刻まれる
傷という名の痛みが
証だというのならば

     想いを何度辿っても刻まないもの

{ルビ轍=わだち}も残さず
同じ道のりを
落下し続けることに
 ....
鏡に映せない
言葉は綺麗な現象
だから私には
似合わないのです

指をつたう血が
涙と同じ温もり
人の温度と気づくから

  生きると言うことは
  {ルビ連星=アルビレオ}を見る ....
この、聞こえない左耳で
この耳で聴いてみたい音
それは、世界に
あふれる音ではないのです

時間を追い抜いていく時計の刻む
バンアレン帯に太陽風が吹き付ける
海溝の暗闇で深海魚のため息
 ....
見知らぬ小鳥が
甲高い声で
空にむかって告げたので
今日は見知らぬ春

葡萄の一粒が、私の中の
行ったこともない場所で
裂けて、流れ出す
見知らぬ季節

もう二度と会わない風が
 ....
浜辺に漂いついた瓶のように
ひとり暮らしの郵便受けに
届いた宛名違いの封筒は
丁寧な文字で
差出人の住所

きっと昔、この部屋に住んでいた
誰か宛の誰かの手紙
なにかの縁だろうと
不 ....
{ルビ朱=あか}くて小さなさかなの
息のように
そっと触れた
てのひらから
あなたを呼吸する

  ほんの少し
  の温もりが意識を
  わたしに繋ぎ止め
  る、わたしの体温
  ....
猛禽となり、風を信じることだ
わがもの貌で空を行く獰猛な鳥も
{ルビ不確か=きまぐれ}な風を信じるから
自由だ

タンポポとなり、風を信じることだ
着地する場所は選べなくても
{ルビ不確 ....
風のための門を
行き来する影がみえる

波を越えて続く
その道を

懐かしさではなく
今日の温度で
凍えるだけ渇いて
鈴の音も響かせず
降り積もる雪の夕暮れ

雲母の肌が 幾重にもはがれていくのです
許されてしまう小さな嘘 をつくたびに
セロファンの音を立てたりはしないのです

涙の ....
いつまでも、それを手に入れたいと
弱々しい手で、僕らは汲む

井戸の底に微かに照らし出される
月の光の輪郭のようなものを

  楽しいといっては  ひとつ汲み
  愛しいといっては  ひ ....
宿命でも運命でもなく
それはタンポポ

土手に降りそそぐ
季節の日差しに
僕は目覚める
旅立ちにはもってこいの日だ

風は南南東
ロウソク工場の煙から推測するに
風速は2メートル
 ....
農家の母屋を改造した学生下宿が
家賃一万円の住処だった
わたしは床の間のある客間の六畳
一二畳の居間には親友が
離れの六畳には先輩が
隣の六畳と四畳半には後輩が
それぞれ巣くっていた

 ....
明日を、呼ぶ言葉は
失われてしまった
先程くべた小さな薪が
二人に残された最後の言葉

炎を囲んでいるというのに
横たわるこの夜の湿気は何だ
天赤道上の星の名を詠んでも
横たわるこの
 ....
冷たい雨の暗がりが
ぼんやりと寂しく誘う
私を溶かし込むには
ちょうどいいおおきさで

ほほにつたう
みぞれの砕けた{ルビ飛沫=しぶき}
雲からはぐれた
それも孤独

  いいわけ ....
落日
蜃気楼のよう
だけど蜃気楼じゃない

焼かれるのは
空じゃなく
今日という日の末路

果てるような
限界線
焼かれるのは空
じゃなく
星はひとつづつ
オルゴォルのピンのよう
ゆっくりと巡って
光の楽譜をなぞる

  昼に
  雪を降らせるのは雲で
  夜に
  雪を積もらせるのは月だと
  指揮棒で譜台をたたく
 ....
凍える桜の枝を煮る
花の色に染まる
記憶のひとひら

なくしそうな
砂のらくがき
ため息で
消して

あなたの指した
電柱の奏でる擦弦楽の季節
手をさしのべても
触れるもの何も ....
セルロイドの筆箱が
カタカタと
     そんなふうに
胸の{ルビ襖=ふすま}を揺らす
何気ない言葉

  風、もしくは紫陽花
  色を移しながら

みんな好きというあなたは
きっ ....
行方もない風たちを
帆にはらませて
もう帰らない船の
船笛の消えていく先
短い呪文
アストロラーべ

二人の旅路を
羊皮紙に書き出しても
深海の底に
沈む姿があって
透明な海藻に ....
花が咲き乱れ
緩やかに風が渡る高原を
想うのはもう やめた

  飛べないのではなく
  飛ばない虫

穏やかな海に向かう
明るい窓を
開けるのは やめた

  鳴けないので ....
怒りを
この体に
押しとどめるなにか
それはこぶしでしょうか


掌のかたちにそれを
開き、放ってもまだ足りない
その病が
揺さぶるのです
だから震えてしまうのです


 ....
阿麻さんのたりぽん(大理 奔)さんおすすめリスト(59)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
外燃するわたし- たりぽん ...自由詩16*06-4-23
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雨、あばかれる黄砂に- たりぽん ...自由詩1306-4-15
プテラスピス- たりぽん ...自由詩13*06-4-13
踏みつけてふりあおぐ、春- たりぽん ...自由詩16*06-4-11
夜空の微熱- たりぽん ...自由詩11*06-4-8
漕ぎ出す春、夕日へ- たりぽん ...自由詩14*06-4-7
駅・軽井沢- たりぽん ...自由詩16*06-4-5
星空の轍- たりぽん ...自由詩1006-4-4
鏡のナイフは似合わない- たりぽん ...自由詩1006-4-2
モノラル、聞いてみたい- たりぽん ...自由詩1206-3-28
見知らぬ、春- たりぽん ...自由詩1206-3-25
あの、手紙は- たりぽん ...自由詩13*06-3-12
きんぎょ- たりぽん ...自由詩1406-3-8
旅立つ日、君の背に投げる- たりぽん ...自由詩12*06-3-5
かよいみち- たりぽん ...携帯写真+ ...1606-3-4
送り火、揺らしながら- たりぽん ...自由詩1206-3-3
僕らは海にまぎれて- たりぽん ...自由詩1306-2-28
タンポポ、旅立つ日- たりぽん ...自由詩1306-2-26
二台の洗濯機における青春の一考察- たりぽん ...自由詩37+*06-2-23
君は、季節をはずれてしまった- たりぽん ...自由詩11*06-2-22
傷、いとしく- たりぽん ...自由詩10*06-2-19
夕刻、焼かれるのは- たりぽん ...携帯写真+ ...28*06-2-17
うつつな夜のオルゴォル- たりぽん ...自由詩12*06-2-7
それが喩え、だとしても- たりぽん ...自由詩16*06-2-3
セルロイド- たりぽん ...自由詩7*06-2-2
とりたちの星座盤をまわして- たりぽん ...自由詩14*06-1-28
つなぎとめるものはだれ- たりぽん ...自由詩11*06-1-25
ありか- たりぽん ...自由詩1305-10-13

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