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買い物帰り
荷物を抱えて歩く坂道
アスファルトの照り返しに
ため息をつきながら
歩いていると
先の方に
とてもよく似た後ろ姿があった
ひとり
ふたり
足の運びも同じで
似て ....
41
市民会館の大ホールを
ゼリーは満たしていた
屋外では雨が
土埃の匂いを立てている
観客の思い浮かべる風景は
みな違っていたが
必ずそれはいつか
海へとつながっていた
....
「序詞」
ゆりかごの中で
小さな戦があった
理不尽な理由とプラントが
長い海岸線を覆いつくした
けたたましくサイレンが鳴り響き
その海から人は
眠りにつくだろう
....
毒薬のような願望を散りばめた、
陰茎の夕暮れが、
いちじく色の電灯のなかで燃え尽きると、
ようやく、わたしの夜が訪れる。
静寂をうたう障子は、わたしのふるえる呼気で、
固く閉ざしてある。 ....
こどもの頃棄てたはずの手が
壁の中で指をならしている
むかし山の小川に浮かべた舟が
朝のトイレの水面をはしっている
出会った人も別れた日々を憶えずにはいられない日々
雀たちの六月 ....
今夜半過ぎ
関東から東海地方にかけて
優しいものが降り積もるでしょう
と、予報士は言った
翌朝
優しいものは降った様子だったけれど
予報どおりに積もってはいなかった
私たちは ....
俺はマイナスイオンを浴びようと思った
おだやかに泳ぐブルーギルたちを眺めながら
支流にある光明の滝をめざし
七北田川を自転車でさかのぼった。
野村で湯葉専門店の看板を見つけ
自転車から降りて ....
駅前に
都会が落ちていた
命のように
きれいだった
なくさないように
拾って
ポケットにしまった
そして
三年振りの待ち合わせに
僕は現れなかった
1
逆光の眼に飛んでくる鳥を、
白い壁のなかに閉じ込めて、
朝食は、きょうも新しい家族を創造した。
晴れた日は、穏やかな口元をしているので、
なみなみと注がれた貯水池を、
....
ひとがひとの形をして笑っている
ひとがひとの形をして泣いている
国道を走り
国道は走られ
やがて国道は海へと続き
ほとんどのひとはその手前で右か左に折れ
他の所へと行こうとする
ひとがひ ....
どこかへ軽々しく飛んでいくから
スパゲティの紐を結んでおく
晴れた日には雨が降らない
哀しい夢を見てしまったら
こちらには戻れない
可愛い女の子の歌う歌は哀しい ....
川のせせらぎかと思った
マンホールの奥に それはある
空気入れで押し込めたタイヤの中にも
いわば
作りかけでいたはずの 夏の星座
暗闇を並べるのは不自由するばかりで
地平まで 窓に映る蛍 ....
ウォーリーは探されなければならなかった
探されるためには行方をくらまさなればならなかった
行方をくらますためにはいつも同じ服装をしなければならなかった
その服装が決めたものなのか決められたものな ....
春夏秋冬の後ろに小さく
くっついてくるものがある
やたら弾けている
その癖おどおどと温度との
距離を図ったりしている
君は器用にそんな季節を丸めこみ
情緒の中に埋めこんだ
....
テレビの画面いっぱいに
モザイクがかかっている
娘は笑って見ているから
面白いアニメか何かなのだろう
低俗なものはきちんと排除され
僕らは安心を手に入れる
新聞の記事にもモザイクはかけられ ....
鉛筆の一側面の上半分が
白く光を反射している
右目で見たときと左目で見たときでは
白い光の領域が違う
僕は透明な手を鉛筆へと伸ばすが
途中で疲れて手は霧消する
鉛筆が置かれてあることと
....
お前がきちんとルールを守らないから、
俺は仕方なく書くのである
友達がいないから
ただの愚痴である
ただの愚痴に現実がポトリと落ちてくると
ぴちゃんとそれに膜が張る
....
犬小屋の中でお父さんとお母さんが
おままごとをしています
春の陽が一番良く当たるお庭で
せまいね、と言いながら
それでもきれいな身なりで
プラスチックの食器を並べていきます
きょう、の ....
わたし、総理大臣のあくびについて観想を述べたいの。あくびの尖端はからっからに観想してますね。あくびはフルマラソンを観想できそうですね。あくびにはどんな観想曲が似合うかしら。
わたし、川に記録され ....
いなくなるとすぐ生きてる?と聞く
そんな時間だった
死んでる?
私はもう何もないから
こわいことばはみんなまほう
おばけも信じてる
ゆれるゆりかごがあなたのおうち
....
彼が笑えれば何だっていいから
わたしはよく笑っていた
彼女が笑えれば何だっていいから
わたしはよく笑っていた
先生が笑えれば
パパが笑えれば
何だっていいから
わたしはよく笑 ....
わたしたちぬけがら
中身なんていらないわね
足してふたりで十分
本当に欲しいのは皮でしょう
内側は暑苦しくて困るわね
ここならそんな心配ないのにね
だめだめ
間違えて ....
夕闇に紛れ込んだアイリスの憂鬱。
朝焼けに滲み出されてきたアイリスの誘惑。
どちらにしてもアイリスは孤独。
笑う笑うと書いて笑えない笑えないと泣くワタシ、アイリス。
言う言うと聞いて言えな ....
あなたをね
叩いたらティーンって
鳴いたのね
あなたをね
撫でてもティーンって
鳴いたのよ
チクタク チクタク ティーン
チクタク ティーン
チクチク ティーン
....
母とふたり
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた
たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛 ....
象の飼育係をやめて
バスの運転手になった
象の目は悲しげだ
と言うけれど
乗り降りする人たちも
体のどこか一部が悲しげだった
遠くに行きたかったのだろうか
数頭の象が停留所にいた
....
夜とカケラと
くず拾いの顔
コップをコップで閉じ込めた輝き
薄め 薄めて
水より薄く
足を伝った油の罪
月は彼等に殺された
私は月を想って泣く
封じた想いは耕され
見たこ ....
?.
あなたを
あなたのすてきなところを
一日
大切にする
あなたを
あなたの汚れたところを
裏返して
日に透かしてみると
おかしな影ができるから
その影に指で ....
みんな勘違いをしているんじゃないだろうか
ケツは追い出すところなんだ
ケツから受け入れてはいけないんだ
この辺り、ちょっと勘違いしているんじゃないだろうか
1
西野は佐川透あてに手紙を書いていた。佐川は西野の年来の友人である。
「……先日はお招きいただきありがとうございました。佐川君の知的刺激にあふれた話を聞けてとても楽しかったです……私はと ....
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