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錆こする
蝉 が赤土の
踊り場を囲い 哉
哉哉哉哉 といにしえの
合
唱をまねび叫ぶ
哉 哉哉哉 哉
橡の木の下で錆び
た旋盤機が
抱 ....
潮風にのって白髪が
飛散するのを
じっと
唇をかみ締めて
耐えていた、
(藤壺を舐める舌の痺れ)
....
お父さんとお母さんが嘘つくから、
橋を渡ってしまったんです。
−指を切っても、吸ってくれる人がいないのよ。
ボロボロのドレスを脱ぎ捨てても、
髪を金色に染めても、
わたしの意志はそこ ....
わたしの身体は三日月の野原です
このなだらかなカーブは
どのみち受け入れるための
情報を得る手段であり
触角のようなものです
屹立と振動が描く
幾重にも連なる波状のはしっこを
数千億もあ ....
観測史上最大級の台風が上陸した日の夕方
未確認の大型生物の屍骸が
四国のとある漁村の浜辺に流れ着いた
地元漁協の連絡を受けて
ある大学の海洋生物学の調査チームが到着したのは
発見から14 ....
ラクダと探偵が恋に落ちた
ふたりは愛情を育んだが
所詮は偶蹄目と霊長目の許されぬ仲
お別れの日探偵は
沈むことのない夕日をプレゼントした
ラクダは泣き疲れ
二つのこぶをなくし
変 ....
一冊の絵本のような生涯
浮遊するひとかけらの海
あれは君なんだろうか
思想のない森と夜の魚
そんな絵本だとしたら
月がちょうど半分 あとは少しの湿度
そんな海だとしたな ....
ルナ
晒されドール
フランス人の医師
横並びの患者たち
下唇をつままれて
一つ一つ証明される
器具の冷たさ
カルテの分類
黙って寝りなさい、と命令がくだる
ルナ
晒 ....
いつか(ラ)数えることをやめてしまった
ピンク色の蜜柑がつぶれたような
きみの、空の
ざ、わめく
風の木に暮れた(ラ)流線が振り落とされて
ふ(ラ)、としたときの
苦くつぶれた顔を ....
サンディの煙草は誰にも止められない
と、誰もが思っていることを
サンディはなんとなく知っている
黒く長い髪
茶色のひとみ
その他の身体的特徴
にもかかわらず
サンディといえば
....
わたしの中に森が生まれたとき
その枝は音もなく広げられた
指先から胸へと続く水脈に
細く流れてゆく愛と
時おり流れを乱す悲しみ
わたしを立ち止まら ....
テーブルから
持ち上げたグラスの跡の
丸い水溜りをかき乱した指が濡れた。
夏の熱が引いてゆく。
グレープフルーツジュース。
そのグラスを頬に当てれば
あ、この匂 ....
つま先をそろえて
腰の位置を安定させて
白い天井を見上げ
白い光に
遠近を失う。
救いがあるとすれば
かすかにある染みが。
何故、天井に
染みができるのだろう。
とても届かないよ ....
夏の図書館には、みんなが置いていくものが、ひたひたと満ちている
カップルも
受験生も
おじいちゃんも
みんな
置いていってしまう
夏の図書館に
外にはきらきらのひまわりが咲いて
....
きれいな音楽だとか
物語が
ささえになること
ぜんぶひとから生まれたなんて うそみたい
ひとは まだ じょうずに好きになることができない
うけとめる心の
線の細さは
....
夏にすきな言葉は
清涼飲料水
です。
それは
レモンをしぼった透明のサイダーで
汗をかいたグラスは 商店街の福引の。
扇 ....
幼子の泣いている君を
想像する
さらにそこにもう一人
想像する
赤い頬にはりつく
痛い涙を
拭うのはいつも
その片割れで
まだいらなかった私や
そこにあった言葉
きれい ....
恋人は、詩を書く人と走る人
ふたりはお互いを知らない
わたしは詩を書く人と暮らしている
わたしは詩を書く人のために食事をつくる
詩を書く人はとてもきれいに日々を食べているので
....
わたしが放課後こっそりえさをやっていた
あの河川敷の林の猫を
あなたがちいさな段ボールに詰めたとき
ほんとうはおどろいたし
とてもかなしかったのだけれど
それがあなたの愛し方だと知っていたの ....
カツン
病院の夜
廊下に映る非常灯
漂う薬品のにおいに
鈍く刺激される静寂
今夜は無風
女はそういったことを言ったと思う
喫煙所の密室(いまどき室内なんて珍しい)
いつからここにい ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
無地のワンピースを着て
濃いめのカルピスを作った午後
汗の珠を額につくり
夏のにおいを、すこし思い出す
ベランダのコンクリートにできた
幼い模様に
ため息を吐いて
また高くなり始めた ....
時を刻むより他に
自分にはすべきことがあるんじゃないか
時計は思った
けれど何をしようにも
手も足も出るわけがない
ただ柱にぶらさがって
そこはそれ時計の悲しい性なのだろう
正確 ....
その目
口
息
そのひそやかな
かなしみ よろこび
土のように
草のように
這うゆめ
翼は
灰色の空へ
海へ
(失うもの)
忘れる力
忘れぬ力
(沈 ....
ハーブの浴槽を
かき混ぜて
えらいねえらいねって
かき混ぜて
わたし、泣いてはいませんでしたか。
いいえ、それでも笑っていたんだと思います。
はらはらとこぼれていくのです。
あの小さ ....
流れ星を見た。
うつむく彼の頭撫でながら
見ていたら
すっ
すっ、て
花火大会の余韻も
冷めやらぬ私の頭上
初めて見たよ。
2つも。
髪の毛をかきあげたら
鳴くんだよ
....
やさしさの
形は何かと尋ねたら
君は丸だと答えたね
金柑蜜柑夏蜜柑
すこやかに香り
夕暮れの
色は何かと尋ねたら
君はまっすぐ指差して
....
雨
降るのかしら。
今
先のことなどわからないから
ただ ありのままを見つめる
内側で降る
血の流れが
どうしようもなく
わたしを形作り
{ルビ廻=めぐ}る
こんなにも
....
時間は円をめぐる歩行者のようで、はてのない夢境にて死を装い続ける。驟雨にぬれた林の小道で、あざやかな多面体をステッキで描く。数々の速度がきざまれた都市の舗石の上で、マッチの火をともす。視界をおおい始め ....
いつからか
{ルビ誰彼=たれかれ}のすがたもなき その水
その{ルビ夜=よ}のもとの {ルビ黝=あおぐろ}き{ルビ躯=むくろ}
うごかずうごく
四肢の{ルビ肉=しし}
― … ヒツギには ....
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