 すべてのおすすめ
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木に実っていた最後の世界が
その重さに耐え切れず
落ちる
あっ、という誰かの叫びは
空気を震わせることなく
そのまま大気中へと浸透していく
店頭に並んでいた時計の化石を
少年 .... 
花が枯れています
つまさきのところで花が枯れています
名前はわからないけれど小指ほどにちいさなのが何本も何本も
破った約束のような色をしています
ここはせかいのせなかなのだと
あなた .... 
 
 
僕にヒゲが生えていた頃
あなたは優しくヒゲを撫でてくれた。
今ではすっかりヒゲは枯れ
ビルなどの建築物が建ち
唇の近くまで人も歩くようになったけれど。
あなたの手のことはあまり思 .... 
・
朝
凍ったような青空の中を一艘の船が
西から東へ進んでゆくのを見た
おそらく西に沈んだ月を
東の定位置へ戻す船なのだろう
さざなみが白く航跡を描いて
航跡はそのまま雲になり
ま .... 
蜂に刺された事はある
蛇に咬まれた事はない
犬に噛まれた事はあっても
狂犬病を伝染された事はない
ライオンの檻には近づかない
骨折はあるが、頸椎や脊髄の損傷はない
指は切ったが切断に至った .... 
 
 
イヤホンの中に空が広がっている
入道雲にふと船が座礁した
そのような音が聞こえる
深夜、そして、私
 
途方にくれる船長のポケットの中から出てくる
いつの間にかなくしてしまった .... 
この過剰なしかし稀薄な世界たちの中で
見張り塔から
いったい誰が何を見ている?
何が見えていても無駄かもしれない
かたちの無い革命もどきが
気づくと僕らの意識を下から暗く蝕んでいる
そんな .... 
 
 
今日、先生は優しかった
黒板に大きな
黒板の絵を描いてくれた
それから、ぼくらの名前を
ひとりひとり読み上げて
絵の黒板に
名前の絵を描いていった
校庭の先にある建物の方から .... 
 
 
水底にオルガンが沈む
鍵盤で遊ぶコオロギは
青い魚に捕食されてしまった
戻ってきました
ポソポソと語り始める
あなたの口元から
いくつもの砂がこぼれ落ちる
あなたの内に広がる .... 
白い塔の表面を
カッターナイフで削ってみると
そこから
赤い血が滲んできたので
包帯を巻いてやった
それが正しいやりかたなのかどうかは
知らない
コンビニのゴミ箱に捨てられていた .... 
 
 
人、水、それぞれに
順番
マネキン人形でもないのに
死んじまえと
死ぬほど言われたんだぜ
シーソーの話をすると
シーソーが嫌いな奴はすぐにわかる
シーソーなんて嫌い、って言う .... 
あの日、あなたは逝ってしまったと
聞いた
ぼくはドーン・グロウの朝焼けを
小さな宝石にして
ポケットにしまった
憎しみは残り続けるかもしれない
しかし、憎しみとはなんと
陳腐 .... 
黄色と黒の市松模様の世界で
わたしは探している
くらくらするのは気圧配置のせい
でなければ起立性低血圧のせい
あなたのせいじゃない
あなたのせいにはしない
黄色と黒の市松模様はくるくる踊る .... 
 
 
ふと、わたしは紙になる
紙になったわたしを
見知らぬ女性がか細い指で折る
骨も関節も内臓もない身体を折ることは
とても簡単なことらしい
女性は几帳面に折り目をつけ
やがてわたし .... 
 
 
手の知らない言葉を
書き続けていく
手のすることはすべて
わたしを助けるのに
わたしのすることのすべてが
手を助けるわけではない
途中、水が足りなくなって
手を洗いに行く
 .... 
象は目を閉じて 
もう何も見ない 
死ぬときにだけ空を見る 
青を捜す 
* 
どこへ行こう? 
夜の森 
あのプラットホーム 
硝子の町 
あらゆる風景の真ん中で  .... 
 
 
窓を開けて欲しい、と男は言った
壁しかない部屋だった
窓を開けた、とわたしは嘘をついた
男は両手を広げると
嘘の窓から青空へと飛び去った
ひとり残され
部屋を丁寧に折りたたみ
 .... 
{引用=――わらべうた}
空は晴れていました。それはもう、
実にみごとに晴れわたっていまし
た。僕(子供)は逆上がりができ
なくて、学校でみんなから笑われ
て、からかわれて、そのせい .... 
 屈折率がちがうので
 液体があるのだとわかった
 ひんやりとした
 理科室が好きだった
 フラスコやビーカーやアルコールランプの橙色をしたたましいみたいな火
  .... 
  
 
ぼくの中を犬が泳ぐ
きれいな犬かきのフォームで
どこかにある向こう岸を目指して
一方ぼくはといえば
水の中どころか
空気の中でもうまく泳げない
手足を無駄にばたばたさせて
 .... 
 
 
門のところにクラゲが大量に発生していた
透き通ってきれいな形をしているのに
触手に毒のある種類なので
外に出ることもできない
裏門から出ようとしても
この家には裏門がないし
裏 .... 
かかとの痛みで目を覚ます
起き上がって見ると 猫がかじりついている
しっしっと追い払う
そしてまた夢に戻る
夢の中でわたしは井戸のそばにいる
これから家に帰るところで
桶を抱えて立ちす .... 
おおきなつづらを背負っている
つづらを背負って鳥居をくぐる
そこにまっ黒い小坊主が寄ってきて
その中には割れた茶碗が入っているんだろう
ぎっしり詰まっているんだろう
と にやにや笑いながら言 .... 
 
 
鳥かごの中で
小さなキリンを飼ってる
餌は野菜だけでよいので世話が楽だし
時々きれいな声で鳴いたりもする
夕焼けを見るのが好きで
晴れた日の夕方は
日が沈むまでずっと西の空 .... 
人が人を求める理由は
人が人を食べないからだ
人は本当は人のことを
食べたくて 食べたくてたまらないのに
食べてはいけない決まりになったから
それ以来 人を求めることをやめられない
 .... 
 
 
軟らかな自転車に乗って階段を下りる
ハンドルが人の手みたいに生温かく汗ばんでいる
階段の下には民家と民家に挟まるような形で
小さくて細い劇場がある
切符売場で数枚の硬貨を出すと係の .... 
 夜になる
 部屋の中にカラスがやってきて、出口を求めて飛び回る
 壁紙はズタズタに破れ、床には一面黒い羽根が散乱し、白壁には至る所に血痕が見え隠れしている。
 壁面の古傷はとうに変色してドス黒 .... 
 
 
みかんをむいて父に食べさせると
ぼくはみかんではないのに
お礼を言われた
咳をするしぐさが
父とぼくは良く似ていた
植物に無関心なところも
石鹸で洗う指先の先端の形も
他 .... 
 
 
夜半から降り始めた砂が
やがて積もり
部屋は砂漠になる
はるか遠くの方からやって来た
一頭のラクダが
もうひとつのはるか遠くへと
渡っていく
わたしは椅子に腰掛け
挨拶を忘 .... 
いつか
この空に
熱い虹をかけよう
お前には
手紙をあげよう
いつかお前が
書くはずだった手紙を
銃口が
火を吹くと
我々は喋りだす
いつか
この空に
熱い虹をかけよう
 .... 
 
 
 
 
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