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紅葉が近づく{ルビ樗谿=おうちだに}は
とうめいなたくさんの蛍が
言葉だけつまった
名前だけの思い出を
夕暮れにかえそうとする
いろだけになってしまう
ぬくもりを失うと
とうめいにな ....
真新しいランプで
秋の波を
どこまで照らせるだろうかと
また、
鳴き砂の浜辺で
波泡のざわめく
境界線を見つめている
小さな音を立てるのは
そこに居たという証で
胸の奥に
忘れ ....
緩やかな曲率で
道は行き止まりまで続いていた
そこより遠い場所を
知らなかったので
墓標はその岬に、と決めていた
漁火の整列する底には
冷たい海流があって
行き止まりの
もっと向こ ....
月が消失点のようだ
描かれた風景は
オルゴール、オルゴォル
ピンの抜けたドラムの内側で
漏れる光を、星だと
僕たちはささやきあったね
モルモットの遊具のように
夜空をまわし
時計の ....
告げるとも言わず
告げぬとも言わず
立ち尽くす老木は
潮風に白くやかれて
ただ待っているかのようです
運命とは渡り鳥でしょうか
暗い海のとぎれるもっと遠くから
糸車を回す母の手のよう ....
四時三十六分
始発
どいつもこいつも
終着にむかっていきやがる
終着は、またどこかへの始発で
始発は、いつしか誰かの終着で
だれもかれも
途中で降りるのだろう
{ルビ可変電圧 ....
あなたのもとに
つながっているだろうかと
また海に来てしまった
彼方の水平に
上昇気流の痕跡が偏西風に流れて
波間に姿も映さず高く飛ぶ
渡る鳥、それよりもずっと星のそばで
焼かれる今 ....
夜の長い季節がめぐって
今年もまた
潤んだ果実の薄皮が
あなたの細い指先ではじけて
枯色の穂の律動
その春のようなくちびるに
すべり込むのです
かわききった大地で
....
君と
君の子供と
動物園へ遊びに行く
動物園のない町に住んでいるので
キリンもカバも見たことがないからと
地下鉄に乗っている間も
図鑑で予習に余念のない二人を
窓鏡に映る姿で見つめる ....
輝くものはいつも
はるか遠くに置かれる
届かないとわかっていても
暗闇の中で
求めてしまう
温もりのない光とわかっていても
そこで燃えているものを知っている
そして永遠を誓ったりする ....
波や風は待つものなのよ、と
長い髪を旋律で
砂浜の反射が切り抜いて
細めた視線の届く先に
僕の胸は高鳴る
星座盤の小さな窓から見たように
君のことを知ったかぶりしていた
そんな気がすると ....
お店を出してくれたあの人は
やさしいひとでいい男だけど
私の好きな人じゃない
5年もごまかしてきたけれど
もう、避けられないみたい
貴女はそういうと
二人きりになった店の灯りを落と ....
改札を抜けるように明日が来るのです
明日が毎日、未来であると信じるひとたちが
道端にこぼれてこびりついたジュースまみれの
自分の影を踏んでいるのです
カタチあるものだけに価値があるかの ....
夏を飛び越えてゆく
あの雲を焼く
それは炎ではなく
蝉の声だったりするのだ
蝉よ焼き尽せ
雲を鳴き尽せ
ただ激しいだけの
夏の日差しにひからび
立ち尽くす老木が
通り雨に打たれて
季節の終わりの
重苦しい空に投げだす
涙をのせた
手のひら
(それはわたしじゃない、わたしじゃない)
....
空を飛びたいなど思わない
眠ってしまおうとも思わない
そんな明るい雨の昼下がりは
激しく窓ガラスで弾けて
つたい落ちる滴を
ずっと、ずっと見ていたい
大切に飼っていた金魚を
....
祖父は
海軍士官学校の先生だった
手を合わせる横顔に
平和を祈っているのかと訊ねたら
そうではないと小さく呟いた
悔やんでいるのだと
小さく呟いて、そして
祈りは何も変えないのだと
....
私はあなたから生まれたというのに
もうそんなことを忘れてしまって
自分だけの死を抱きしめていた
まるで沈むために港を離れた
あのポンコツな捕鯨船
たった一つの獲物を射るための{ルビ銛=もり} ....
海沿いの盆地にみちた
湿気と体温と上昇気流の
かたち、あの夏の雲
想いだけが熱いから
激しくゆらめくように
それでも
倒れるわけにはいかないから
ひとしきりの雨を
足跡にするのでしょう ....
四十二度
真夏の
山嶺をこえる日差し
積乱雲!積乱雲!
いつか焼かれるわたしは
真夏の
ひそかに揺れる
こかげの雑草
生きていくには
熱すぎる体温
....
海という隙間で息も絶えだえに
船がただひとつ進めない方角があり
羅針盤の鏡にこうして映すと
宇宙も空も無くなる時間なのに鏡は
越えられない境界線を示すだけなのです
宇宙に似た深い暗闇を
....
夜を乗り越える呪文
古いノートの落書きから思い出す
詠み方を忘れた大人には
雑踏に落ちている足音に似て
あどけなく残酷な
季節を乗り越える呪文
変色した写真の束から探し出す
今日しか ....
真夜中の街
儚い灯りを縫い合わせて
君はいくつも
星座を作ってみせ
物語がわからなくても
知ったかぶりで綺麗だねと
僕は何度も
言うのだろう
地上の流れ星はいつも
赤 ....
学校を卒業して
実家に戻った君から
普段と違う調子で
不意に電話が入る
ずいぶん遠い町に住む君と
昨夜同じ受話器から
おやすみと言ったばかりの僕は
醤油の有名な町で
働き暮らしていた
....
はじめて海を知ったのは
函館山の東側、岩だらけの海岸でした
あちらこちらに見える対岸の
私との間は早波で仕切られ
たくさんの潜水艦が行き来しているのだと
おじいちゃんに教わりました
次 ....
すぎていくものに吹かれて
川辺で季節におびえ
一掴みの名も知らぬ萱よりも
かほそくゆれ
ただ老いていくことに
腐っていくのでしょう
笹舟のように
未来にむかってちぎれていくものが
....
砂で掻き取られた
昼夜の温度差の
割れ目で苦悶し
空と接する果てまで
寡黙に散在する
岩とは、ただある
と、いうことなのです
それらがこの砂漠の
紛れもない住人で
そして私は血肉 ....
引き出しの奥から出てきた
古ぼけたトランシーバー
適当なチューニングのまま
大和川、南側の土手を
ノイズと一緒に
大阪湾へ向かって自転車を走らせる
いくつもの道を横切って
いくつもの ....
水面のやさしさを信じ
身を投げる木の実の
沈んでいく運命の先を
知らないかのように
綺麗な音色だと
美邪気に笑う君に
かなしくなる
西の雲は入り日に
焼かれるからかわいそうと君 ....
低い雲が覆い隠す
放牧場のある丘には
みっつの風車が立っている
ぎゅおん、ぎゅおんと
海にむかって唸って
いるはずの刻
{ルビ霞=かすみ}のように薄い雲が
まわっている時間を
見えなく ....
銀猫さんのたりぽん(大理 奔)さんおすすめリスト
(281)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
砂丘で蛍を見たあいつ
-
たりぽん ...
自由詩
15
06-10-19
満ちる、まで
-
たりぽん ...
自由詩
14*
06-10-13
風、とまどう鳥よりも
-
たりぽん ...
自由詩
14*
06-10-8
いちばん_遠い夜
-
たりぽん ...
自由詩
13*
06-10-5
冬告鳥、海風に吹かれて
-
たりぽん ...
自由詩
15*
06-10-2
クロスシート
-
たりぽん ...
自由詩
10
06-9-27
相聞、漕ぎ出せば海
-
たりぽん ...
自由詩
13*
06-9-24
春の葡萄
-
たりぽん ...
自由詩
18*
06-9-23
天王寺動物園に動物を見に行く
-
たりぽん ...
自由詩
15*
06-9-19
今夜、輝くものは遠く
-
たりぽん ...
自由詩
16
06-9-7
岬にて、星を見る
-
たりぽん ...
自由詩
17
06-9-6
茉莉花
-
たりぽん ...
自由詩
13*
06-9-2
駅・秋葉原
-
たりぽん ...
自由詩
15*
06-8-26
くもをやくなら
-
たりぽん ...
携帯写真+ ...
16
06-8-25
木々の行方
-
たりぽん ...
自由詩
13*
06-8-20
明るい雨の昼下がりは
-
たりぽん ...
自由詩
15*
06-8-17
(祈りの場所は遠く、はるかに離れて)
-
たりぽん ...
未詩・独白
12*
06-8-15
生まれたことも忘れて
-
たりぽん ...
自由詩
15*
06-8-8
足跡、夏の
-
たりぽん ...
自由詩
15*
06-8-6
体温、八月の
-
たりぽん ...
自由詩
10*
06-8-3
ひとしずくの水彩
-
たりぽん ...
自由詩
17
06-7-31
驟雨の足音、あどけなく
-
たりぽん ...
自由詩
17*
06-7-29
夜景、そして
-
たりぽん ...
自由詩
17*
06-7-24
駅・湯浅
-
たりぽん ...
自由詩
14*
06-7-20
海を知るか
-
たりぽん ...
自由詩
12*
06-7-18
揺れもせず、ただ君と
-
たりぽん ...
自由詩
14*
06-7-9
さらさらと、砂漠を閉じこめて
-
たりぽん ...
自由詩
9*
06-7-6
自転車・トランシーバー、大和川
-
たりぽん ...
未詩・独白
9*
06-7-4
ホタルブクロ
-
たりぽん ...
自由詩
16*
06-7-2
風時計、雨空を文字盤に
-
たりぽん ...
自由詩
17*
06-6-27
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
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