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草いきれと湿った地面の匂いがする
(夏だ)

こっそり張られた蜘蛛の巣を
黙って許すことにした
いのち、を
思ったわけではないのだが
今日はこの国や
内包する宇宙にも
とりわけ関心が ....
うすい水の膜を通して
いちにちの過ぎるのを待つ
泳ぐに泳げない、
不器用な蜥蜴の成れの果ては
にんげんに良く似ているらしい


わたしは髪を切る
意地の悪い快感をもって
不運の絡 ....
沈丁花の、
高音域の匂いがした

夜半から降り出した雨に
気づくものはなく
ひたひたと地面に染み
羊水となって桜を産む

  きっと
  そこには寂しい幽霊がいる

咲いてしまっ ....
白梅も微睡む夜明けに
あなたしか呼ばない呼びかたの、
わたしの名前が
幾度も鼓膜を揺さぶる

それは
何処か黄昏色を、
かなしみの予感を引き寄せるようで
嗚咽が止まらず
あなた、との ....
オリオンが
その名前を残して隠れ
朝は針のような空気で
小鳥の声を迎えうつ
わたしは
昨日と今日の境目にいるらしく
まだ影が無い

太古より繰り返す冬の日
あたたかい巣箱から
掴み ....
「きちんとたべないとつよくなれないよ」

そう言われて
幼かったわたしは
他ならぬポパイに憧れ
うっすら残る灰汁のえぐみに耐えながら
ホウレンソウを頬張った

ホウレンソウのお浸し
 ....
咳がふたつ
階段を上ってきた
夜の真ん中で
ぽつり
行き場を失ったそれは
猫の眠りさえ奪わず
突き当たった扉の
その向こうで
遠慮がちに消えていく
八十年余りを働いた生命 ....
片方の翼の折れた失速を
取り戻すまで我生きるなり


置いてゆく荷物の重さは測らない
翼の先を大事に繕う

夜の風 羽根のひとひらも凍みてゆく
翼よ向こうに朝が待つ

失っ ....
狭いベランダで
室外機に挟まれ
見上げる空は
今日も薄灰色
夏のあいだ、
日除けに育てた苦瓜が
絡んでいたネット
くもの巣のかよわさで
ふぅわ
ふぅわ
揺れているのか
しがみ ....
渚のざわめきは
ナトリウム灯のオレンジに溶けて消え
九月の海が
わたしの名を呼んだ

絹を広げたように
滑らかな水面が
夜の底へと続くしろい道を見せる

爪先からそっと水を侵すと
 ....
あの日の高い空と
りんどうの青むらさきを覚えている
明日からのひとりを
蜜のような孤独だと
わたしは微笑んでいたと思う


傍らの古いラジオが
虫の声のように囁き
夏色を少しずつ ....
細い金属質の陽射しが
容赦なく肩に、腕に、
きりきりと刺さって
サンダルの真下に濃い影が宿る

忘れかけた思い出は
向日葵の未成熟な種子に包まれ
あの夏
深く青かった空は
年 ....
真っ白い日向を
ひとひらの
アオスジアゲハが舞う
それは飛ぶ、というより
風に弄ばれ抗うようで
わたしの傍らを掠めたとき
小さく悲鳴が聞こえた

真夏を彩るカンナの朱や
豆の葉の ....
湿った夜に
孤独の匂う扉が開いたらしい
今日の陽射しに晒した、
二の腕も敵わない強さで
戻る道を塞がれた

草むらに埋もれる羽虫や
苦瓜の、
生き物のような苛立った肌

何 ....
誰も気付いていない
扁平な空と屋根の間に
ブランコがある
そこには
飛行機で行けないが
羽根をばたつかせても
到底届く高さではなく
梅雨にぬかるんだ地表と
レーダーに映る雨雲の間に ....
爪先で掻き分ける、
さりり、
砂の感触だけが
現実味を帯びる

ひと足ごとに指を刺す貝の欠片は
痛みとは違う顔をして
薄灰色に溶けている


こころの真ん中が
きりきりと痛んで
 ....
灰色の雨が上がって
ようやく緑が光り始めた
葉脈を辿る水の音さえ
響いてくる気がする

穏やかな五月の庭で
白いシャツが揺れる
遠くから届く草野球の掛け声が
太陽を呼ぶ


きみ ....
異国の時計塔を真似たチャイムが
終わっていない今日を告げ
青白い街路灯や
オレンジに仄めく窓の
表面をなぞる高音は
濃紺の夜に飲み込まれ
いつしか遠い列車の轍の軋みや
姿の無い鳥の声と同 ....
響いているのは雨音
夜が深くなると
それはいつか
遠い海に似てさざめき
わたしは
波に洗われたひとつの貝を思う

ところどころが欠けた貝殻は
すこしの闇を内包しており
誕生からずっと ....
湿った夜の破片が
蝙蝠となって折れ線を描く
低く、低く

やがて来る、雨と
灰色の朝は
かなしい、という色に似ている


里山の懐に
ちいさく佇むそこ、は
永遠の黄昏に向かい旅立 ....
ふわ、り
風に追われた桜
川面にちいさな州を作り
その薄紅のしたを
きみの遠い息遣いが流れる

いつか
それはシロツメクサの匂い立つなかで
流れていたのと、きっと同じ
けれど今日は
 ....
灯りを消して
毛布に包まりながら
朝、からいちばん遠い眠りについて
意識の上澄みに漂う

屋根を叩く雨は
僅かずつ肌に迫って
やがて水の中に
わたしを浸してゆく


雨音は
美 ....
丸みの無い水平線の向こう、
空と海の境界が
白く曖昧になるあたりで
春、が転寝している


寒気から噴き出した風が止み
陽の降り注ぐ砂浜には
くろい鳥のような人影が
水面に微笑み ....
遠くから
貨物列車の轍の音が響き
耳元まで包まった毛布の温もりは
夜への抵抗を諦める

暦が弥生を告げて
色づき始めている、
翡翠を纏った木々の芽吹きを
さくらいろの気配を
止めたい ....
玉葱の味噌汁に
なみだを一滴入れてみたものの
塩加減は少しも変わらず
だれも悲しくなりませんでした

風の強い庭先に鳴く野良猫に
思いつきで名前を呼んでみました
ずざ、と塀を駆け上がる音 ....
浴槽のなかで
泣くと
温まった頬よりもっと
熱いものが滑る

首筋をかすめて鎖骨へ
塩を含んだ水滴が落ちて
水に溶けてゆく

こうしていると
かなしみはまた
薄い皮膚を通 ....
冬木立、腕の隙間を
北西の風が吹きぬける二月
硝子を隔て、
わたしは陽射しを貪る


両の手を
時折、虹色に光る猫の背毛に沿わせ
体温を求めながら
かなしみを忘れるわたし

セー ....
さようなら、の向こうで
夢、夢の花が揺れる
その花びらの裏側で
思い出が溜め息をつく

生きて行くことは
分かれ道の連なり
傍らをゆく風さえ
その地図を知らない

今日にうたえば
 ....
さらりさらさら、刻の砂
さらら、今日の出口は見つからず
さらり、昨日の砂は無い

時計のなかでは
あどけない頬が
片隅にほんのりと笑っており
記憶の岸辺に
くすくすと
無邪気な声 ....
灰色に曇った窓の雫を
つ、となぞると
白い雨は上がっていて
弱々しい陽射しの予感がする

こうして朝の死角で透けていると
ぬるい部屋全体が
わたしの抜け殻のようだ

だんだんと色が濃 ....
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