──韻律と、それを破壊するもの/詩歌の技法と、私詩史を通して
ころげよといへば裸の子どもらは波うちぎはをころがるころがる
相馬御風の歌である。それにしても、「この音は何だ」( ....
冬の温かい陽だまりの中で
背中を丸めて眠っている
猫になりたい
――私はきいてゐる、さう! たしかに
私は きいてゐる その影の うたつてゐるのを……
立原道造「真冬のかたみに・・・・」
――耳をひたした沈黙(しじま) ....
大晦日の夜から元旦にかけて
年神さまが誰も知らない山から降りてきて
健やかな子どもの足裏に
ひと粒の種を植えてゆく
今年はせいちゃんの番かもしれんねえ
そう言って祖母は細い目をいっそう細くし ....
なぜ 巡り合うのかを
私たちは何もしらない
「糸」中島みゆき
言葉にリズムとライムを求めて怨霊を封印しようとしてきたのは日本語だけではないけど東洋の島国という地政的な環境と ....
○「光と影」
年老いたときに わかる
青春の輝きが
入院したときに わかる
健康の有り難さが
就職したときに わかる
稼ぐ苦労が
子どもをもったときに わかる
親の愛情 ....
地図も時計も捨てた時
人間が現れた
日が暮れる
人がどうなろうが
宇宙には関係ない
葉っぱは叫んだ 葉っぱの言葉で
枯れ葉が、自分のいた場所を見上げていた。
木馬は、ぼくか、ぼくは、頭でないところで考えた。
切なくって、さびしくって、
わたしたちは、傷つくことでしか
深くなれないのかもしれない。
あれは、 ....
真っ赤な毒で満たされた盃を
一息に飲み干した
人生の不遇も悲しみも
すべて人のせいにして
生きてきた贖いとして
置き去りにしてきた不義理の数々
あなたは思い出すだろう
人の優 ....
豊かさにすがる人々が挙って生贄を捧げる
まぶしい海の街に聳え立つ女神の像が淫らに、
そして聖母のように微笑んでいる
見よ、彼女が踏み荒らした諸国の苦しみを
アフリカの中央部、西部、そして ....
雪明かりの中、ひさしぶりに散歩に出る
獣たちの足跡が点在し、ときどき走っては敵に怯えるように急ぎ足になったり、少ないながらもその痕跡が塗されていた
時折、小声で独り言で事を説明する私は酷く滑稽であ ....
きみの手は、
しっとりとした雪が、
もうすでに降り積もっている、
ひんやりとした夜の雪原である、
冒頭に流れる陽気なラジオ
今年一年を振り返ってる
あてもなく車を走らせながら
あなたとの結末を思い出してる
ねえ、気付いたかい?
クレジットの旋律が物語全体と同じなんだ
側 ....
いわゆるマイクロノベルのような文章ですが、全部元ネタは私の夢です。
1.どっちが幽霊
午後の図書館にきて閉架書庫に入る。薄暗くて寒い部屋の奥、日差しが差しているように明るい。窓はないはずな ....
身体の隣には
太平洋があった
太平洋は凪いでいた
名の無い
小さな海が好きだった
その海は机の
引き出しの中にあった
机は遠く故郷に
置いてきてしまった
それなのに
....
手のひらですくえるほどの軽さ
ふっと息をかければ羽毛のように
水のようにさらさらと
それくらい
それくらいと言いたいのに
あなたが踏んだ泥は何億年後かにも
化石になって残るだろう
た ....
虚無の庭に
僕らは佇む
灰色の日時計のかたわらに
でもこの場所は
光源のさだかでない光が
ぼんやりと漂っているだけだから
日時計は時を示すことができない
忘れない というクリシェを
....
レンガが降ってくる
##### 線路
十字ボタンで突き刺したんだよ
夕闇の水田のなかを、幽霊たちがとぼとぼと歩いていく。
ちょっといいですか。
あなたは神を信じますか。
牛の声で返事をした。
たしかに、神はいらっしゃいます。
立派に役割を果たしておられます。
ふざけてるんじゃない。
ぼくは大真面目だ。
友だ ....
黒い写真は我々に何を語ってくれるだろうか
干からびた
噴水の
中を走る
純粋さ
岩の
....
照らせ 照らせ 光よ 照らせ
光は 孤独なのだから
ひとりでに かがやくのだから
回せ 回せ 宇宙よ 回せ
思うより なにもかも短いのだから
夜ひとつさえ 瞬きのうちなのだから
流 ....
いつか森のいちぶだったもの
小鳥をすまわせ
そのうたに耳をかたむけていたもの
みどりの葉をめぶかせ
ゆびさきは空へとむかう
よるになれば流れる星のゆくえを占ったもの
むささびの発射台になっ ....
あの日、わたしは友人といっしょに一本の映画を観た。黒澤明の「まあだだよ」。
友人と待ち合わせをしたのは、午後のことだったろうか。たしか、銀座にあるマクドナルドだったか、日比谷のウェンディーズの前 ....
燃えるものがなくなると炎は消えた
それから数万年
水も酸素もない高温状態が続いた
やがてシェルターから出てきたのは
天使と悪魔だった
彼らは魔法のような力で地上を再現し始めた
地下 ....
乗れなかった列車
届かない指先
人混みの中
涙が頬をつたい
わたしは遅刻
会いたい人がいた
伝えたいことがあった
できることなら書類に
その滑らかなサインまで
いただきた ....
底浅の透き通った水の流れが
昨日の雨で嵩を増して随分と濁っていた
川端に立ってバスを待ちながら
ぼくは水面に映った岸辺の草を見ていた
それはゆらゆらと揺れながら
黄土色の画布に黒く染みていた ....
いつもと同じ道を歩くと
強い向かい風が押し返してきた
風に負けて逆方向へ行くと
風が背中を押してくれた
いつもじゃない道を歩いて
知らなかった景色を見る
背中の風を失わぬよう
流れるよう ....
夏
白い夏
思い出の夏
反射光
コンクリート
クラブ
ボックス
きみは バレーボール部だった
きみは輝いて
目にまぶしかった
並んで
腰かけた ぼく
ぼくは 柔道部だった
ぼ ....
くやしいなあ
線を切らなかったあの日
僕の点は離れて見つめていたんだ。 おかげで自分の ....
指先に透き通って
春の朱の血潮が浮かびあがる
女は白雪の様な顔を両手で隠し
泣いていた
あれ荒んだ心のあなたは
客の少ないバーで何故か気さくに語る
笑顔の背後に宿る夜更け ....
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