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曇りの日に海へ行った
空も海も灰色なのに
仲介者の努力も虚しく
いまだに和解は成立しない
その国境線は水平で
欠けた世界の端から端までを
頑なに切り分けようとしている
曖昧だが根深いライ ....
紙を破いたら
鳴りやむことを知らない
何度も何度も波が
静脈から動脈に往復する
黄色の傘を置いて
小さな傘を置いて
歩いてきてしまった
わざと忘れてきてしまった
日常は全然ゆる ....
それから空は夏雲湧き立ち、風は川を越えて丘を越えて、それから線路を越えて団地を越えて、それからあの家の窓を抜けて、あの白い壁の部屋をぐるりと回る。部屋には檻があって虎がいて、虎は檻の中で待っている。誰 ....
鹿いた
鹿いた
せんべえ
あげた
せんべえ
せんべえ
寄ってきた
つんつん
つんつん
寄ってきた
でもなぜだろう
せんべえ屋さんに ....
私にとって
行列は
{ルビ皺=しわ}のようなものだった
黒く
そして蒼く
一段落のきれいだ
打ち付けられた
山肌に雪崩れる
そこが しずかだ
気になって来てみると
最後 ....
夜は来て
わたしたちは眠った
愛と またべつの愛とのへだたりや
手が届きそうな不幸
甘いざわめきと
ぺかぺかの看板
星の位置がちがう、
と起き出した
あなたの
頬が氷 ....
冬の遅い日の出に染められた雲
青白い夢間の悲しみに落ちた火種
見上げても見上げてもただ冷たく
網膜に暗い紫の影を落としては
眼孔から骨の隅々まで音叉のように
十二月の痺れを伝えるだけ
....
大学に居着いた野良猫のチャッピー
理系の癖に高校の全国実力テストで現国全国1位だった君
わたしの事も野良猫のチャッピーの事も書かないよとあなたは言った
結構繊細だよね。
わ ....
🍎 頬杖
{引用=言葉は心を越えられないこと知っているのに
心が言葉を越えられないとうつむいてみる
それが
林檎のように沈んでゆく}
🍎 なり損ねた夜
{引用=夜十一時過 ....
若いときは
エネルギーが散らばりすぎてて
あたまやこころでわかっていることも
使いこなせていなかった
もっと大切なことがあるってことを
じぶんのなかにしか見出だせていなか ....
命を全うするという受動的な態度は嫌いだ
命は全うさせるものだ
命は尊いと決めつけるのは嫌だ
命が尊いと実感できるかは自分次第だ
論理的な思考よりも信念は誇り高く
アクションは概念より ....
静かに祈っているのに落ち着かないよ
なにしにここに祈りに来たんだ
諸行無常のスローモーション
日常をひとと関わり生きていく
なのに孤独だなんてまったく失礼だろ
深かっ ....
早朝の駐車場
誰かが捨てたごみ袋を丁寧に
カラスが広げている
コンビニ弁当の容器や紙クズを
ひび割れたコンクリートの上
器用に嘴を使って
秋晴れの清々しい空の下
目ぼしいものはな ....
手稲山の頂辺りに白いものが見える
――書置き 今朝早く来て行ったのだ
見つめる瞳に来るべき冬が映り込む
雲間の薄青い空
氷水に浸した剃刀をそっと置かれたみたいに
張り詰めて でもどこか 痺れ ....
「希望」が足りないね、と小さくレジで笑われた。
小銭の中には 絶望がびっしり入っていたので
安心していたのに、「希望」が足りないせいで今日
もごはんが買えない。
てっとり早く生きるために、 ....
{引用=ひび割れ}
雨音は止んだが
雨はいつまでも
乾くことのない冷たい頬
満ちることも乾くこともなく
ひび割れている
悲しみの器
{引用=天気雨}
泣きながら微笑むあ ....
母さんがせっかく作ったんだ食べて行け
父のひとことに逆らえず
しぶしぶ食卓についた君は
スープを一口
口に入れると
涙をこぼし
絞り出すような声で
ごめんなさい
と言った
....
背を向けた時計との会話
雨のむこうの夜は赤く
音の径を
少しだけ照らす
指の鋏で
切る仕草
切りたいものを
切れない仕草
溝が 淵が
永く暗い 一本の ....
暮しのネタを持ち得ずに
時空はひとみを失神させて
ただ 黙々と
うたかたの みなおをつくる
卒寿を越した おひとりさまが
無聊のキッチンで
....
村上春樹は朝仕事して昼間運動して夜は読書するんだとか
面白くないやつだ
こんなやつと比べられたくないから夜更かししてやるんだ
加齢臭はカズオの勝ちっぽいよな
女のほうが男の ....
生まれたばかりの朝に
人々の小さな営みの息づかい
まあたらしい魂の叫び
生まれたんだな
なにかが
よろこびも かなしみも
よちよち歩き
疲れきった夜までは
まだ時間があるようだ ....
なにかを期待するわけでもなく
木は透明な思いで空を見上げていた
野鳥の尖った飛翔が
空間を切り裂くのを楽しんだり
みずからが浄化した
清廉な空気を謳歌している
人がまだいない頃
木は ....
あなたの顔は童話みたいに分かりやすくて
いつまでも 謎のまま
パラパラとページをめくる日々
いい加減で 面白くて
障子紙で漉したやわらかな光の砂時計
始まりも終わりも確かにあったはず ....
ピカソの絵みたいな顔の人が映るから
「嘘つき!」って
テレビに向かって
怒っていると
猫が足元にすり寄ってきた
にゃー
「にゃー」じゃないよ!って
猫にも八つ当たり
ったくどいつもこい ....
セルロイドの羽が
セピア色の大地に映える
セルロイドは叫ぶ
羽を開きながら
硝子は割れ
大地は傷付いた裂け目を哀しく涙しながら
一対の稲妻が突き刺さるように大地に刺さり
片方で電 ....
整えてはいけない
光の火があり
あらゆる場所に揺れながら
熱の無い波を寄せつづける
水のような鳥の声
鳥が去り 水が来て
鳥が居ないことに気づかずに
いつまで ....
【アカツメグサ】
なりやまないドアホン やぶれた怒号は
親を町ごと殺され震えていた少女のままの老人
おさなくして大人として生きざるをえなかった あなたが
私の玄関を激しく叩く音
....
煽り煽られ踊る火に
鳴りやまぬ枯木林の
奥の奥
紅蓮の幕は重なり揺れて
熾の{ルビ褥=しとね}はとろけてかたい
静かに 微かに
波打つ青い心臓のよう
円くなって まどろむ
火蜥蜴は涼 ....
早く夏が終わんないかなって
思っていたのに
終わってしまうと
なんだかさみしくて
早く秋が来ないかなって
待っていたのに
秋は
なんだかよそよそしくて
友達だったはずなのに
....
会えばぜんぶ吹き飛んでしまうのに
臆病者も恥ずかしがり屋になれるのに
町に吹く秋の風
銀杏のひかりはすっかり黄色いのに
虫の声が星のように瞬いているなのに
どうしてど ....
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