ふたつ 離れて
木立 悟





背を向けた時計との会話
雨のむこうの夜は赤く
音の径を
少しだけ照らす


指の鋏で
切る仕草
切りたいものを
切れない仕草


溝が 淵が
永く暗い 一本の線に立ち上がり
真夜中の鐘を聴いている
焼け落ちる声を聴いている


羽の手のひらが胃の上に重なり
かたちを点滅させながらはばたく
風と苦さ
沈むあたたかさ


くるまれた夜
布の筒の星
指の洞の暗がり
球の宙宇


確かに聞こえていた声が
砂のように遠去かり
消えかけた小さな手の群れが
かすかにかすかに打ち寄せる























自由詩 ふたつ 離れて Copyright 木立 悟 2017-10-13 10:09:36
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