近所にもらった卵等を
朱色の{ルビ巾着=きんちゃく}袋に入れて
割れないように気遣いながら
時折かさっこそっと音立てる
卵の歌が聞こえるようで
自分の歌に重なるようで
....
3 足のある眼鏡
わたしの仲間は誰でも言うのだが
決して信じてはいなかった
「眼鏡には足がある」など
だが 今朝 眼鏡が消えた
確かに洗面台の横に置いたのに
顔を洗っている間にど ....
三日に四日はバカ
あたし世界中を旅するの
大学病院小児科病棟の主
チエちゃんは言う
イチロウにやる!
僕と同い年の女の子
チエちゃんはいつも上から目線
僕は週に一度か二度
グリコのおまけを ....
確かに理屈としては
合っているような気もする
しかし
よく考えると
ドSはドMよりも
ノーマルから
ややS寄りの人を
相手にするほうが
もっとS心を刺激されるのではないか
とも思 ....
冬の透明で静かな風と共に
奴らはやって来た
この世界に存在する
あらゆる現代詩を見つけ次第
容赦無く始末する謎の集団
その名も現代詩バスターズ
今のところ奴らの目的は不明
昨日も
ある ....
僕らの青春は
あの一瞬のなかに
まだその青さに
気付けていなかった
まだまだ春なんて
来ちゃいないと思ってた
きっと振り返ることでしか
見えないんだ、僕のキセツ
今の暦はなんだ ....
運命の赤い糸は1本だけだろうか?
僕はこう考える
小指からは透明な糸がたくさん出ている
世界中全ての人と繋がっているんだと・・・。
たくさんの人と出会い
糸の色が決まっていくのだ ....
昔とおんなじだったというのは
本当には少し違っていて
こうだったら良かったのにって
ふたりだった
会えば楽しいけれど
別れたとたんどっと疲れたり、
約束して ....
愚かな自分を鏡に映す
冷え切ったからだにのこる温もりをさがしてみる
かつて確かにあったその感触を思い出してゆく
暖かい手を心に紡いでみる
たぶん忘れてはいない筈のことばを捜して
記憶を暖 ....
表情の少ない
甥と姪が泣いている
眼を腫らしてはにかんでいる
泣くことなど想像もつかなかった
山男の義兄が
もう少し生きて欲しかったと泣いている
葬儀の場は
涙の大きなプールで
....
誰を想って この歌を
聴いているのかな、って
考えると
何でか 涙が止まらない。
中天の直射を受け
干したばかりの洗濯物から
モヤモヤと蒸気が立ち上る
ハンガーも黒だから見える
太陽ってありがたい
十一月も頼もしい
…待て
これは皮膚にも…
三百六十五日
晴れた日 ....
カレンダーを貼った位置が低い
我家の軒下にやってきた
つがいのツバメ
気がつくと
いつの間にか
1羽だけになっていた
それから
ずっと
一羽のツバメは
巣の中で
じっと外を見つめていた
あたりを警 ....
ラジオから
音楽が流れている
朝の光が窓から差し込んで
世界がうんと美しく見える
女らしさや、男らしさが
ちりぢりばらばらに散らばって
混ざり合ったその向こうの
いや何にも混ざり ....
グラグラの乳歯抜けるや千歳飴
枕が変わった 天井の地図も変わった
独り暮らしの寝室から
鼾の合奏する五人相部屋の寝室に変わった
その間に世間の便りは
うねりの激しい潮騒となっていた
看護師の足音に神経を消耗され
ま ....
くすりが増えてカバンが重たい
雲っこひとつない空
だんだんろうそく
涼しい木々のお湿り
バイクで気持ちよく下れ
お気に入り銭湯まで下れ
あぶない言わない
マイナスはいやだ
まもられてるから
運つよそうだから
....
もう、手の届かない
懐かしい季節に
向かうようにーー
クレソンをひとくち
レモンもバニラもお好みで
そんなふうに朝を過ごしたら
天気は良好
青りんごをポケットに入れて
森へ出掛けよ ....
いつも言葉の足りない弟は
最後の別れの時も
死に顔を見ては泣き
姉の最後の痛みを知っては泣き
もう何の組み立てもなく
嗚咽しているだけの
図体ばかりが大きな
巨大な涙袋と
なってし ....
あと一口
もう一口
全部食べてしまった
寝る前
炊きたての
新米を盛った茶碗から
ひとすじの煙がたちのぼる
雨と
土と
太陽と
風と
人の労働とで
育まれたものが
上へのぼっていく
本体から
自由になったものたちは
....
周回遅れで先頭の気分
おばあちゃんの猫はおばあちゃんの匂い 猫のおばあちゃんがいなくなっても
おぬし 忍びの末裔であるな 足音もたてずに猫が来る
どんなに寒い夜でも おまえだけは温かいゆたんぽ
ねずみがい ....
抱えるものが多すぎて
いつからか 歩けなくなってた
泣くことをやめようと決めたから
いつからか 泣けなくなってた
でも大好きな映画を見て
久しぶりに声を出して泣いた
映画で ....
赤は止まれ
青は進め
黄色は注意
生まれて初めて知った
極めて普遍的な社会ルール
それは母が私の手を握りながら
真剣な面持ちで教えてくれた
その日パシフィックノースウエスト地方を吹き ....
だれかがふいごを吹いている
ぼくのいのちを消すまいと
だれかがふいごを吹いている
知らないだれかと
知ってるだれかが
知らないところで
知らないところで
....
花ぬすびとをききながら流れるのは一粒の涙
移ろうことが許せなくて怖かったあの頃
あの頃と同じ一粒
*YouTube 花ぬすびと (明日香)
http://www ....
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