パラボラアンテナ
たもつ

 
 
もうすっかり真夏だというのに
町内を一匹の羊が歩いていた
川を探しているようだった

取り壊しが決まって無人となった団地が
フェンスと草むらの中に
数棟納まっている
淋しい幼少期を過ごした人も
何人か住んでいたのだと思う

頭の上に広がっている場所が
空だと知ってしまったときから
僕は少しずつどこかが
減り続けている
やがてすべてがなくなる
そしてそれは例外などではない

一階のベランダに
パラボラアンテナが置き去りにされている
羊が欲しそうな顔をして見ていたので
持ち帰っても誰も怒らないよ
と言うと、嬉しそうに
敷地に入れる場所を探しに
角を曲がった
 
 


自由詩 パラボラアンテナ Copyright たもつ 2010-07-23 21:57:31
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