鬼蜘蛛の
運命の糸で できている
巣が軒下でほのかにゆれています
この巣に掛かっている命と
今夜もゆれている私は
私と居る
鬼蜘蛛の、
ひんやりとした歌に
やわらかい耳をかたむけている ....
この道を選んだ私の
誰にも知られることはない絶望に ほほえむ空舟は
複眼をもつ{ルビ蜻蛉=せいれい}の{ルビ櫓=ろ}を{ルビ漕=こ}ぐ。この櫓の羽の内部は
言葉を発した。
 しかし
選べない ....
ひっそりと光るそよ風の縁にあなたと私がいる
道にできた卵形の水はにっこりほほえむ
世界と世界は手をつなぐ

星には星の、
草には草の、
虫には虫の、
鳥には鳥の、
人には人の、
世界 ....
宙へむかって手をあわせる
なにをおもうということもない
ただ 手をあわせて
目をつむる
頭をすこし下げてあわせた手に額をくっつける

なぜか
なみだが出て来た
かなしくもないのに
沈 ....
一つの窓から零れおちる音楽の
さまざまな音色は呼吸している

一輪の花の散り際に
老人は一冊の本を読み終えた

青空色に青ざめたほほを
ほほえむ気配の黄色の蝶々はひらめく
風の言葉を聴 ....
いずれおとずれる死の約束に
すべてを受けいれてくれる
無という希望をささやきながら
耳を通りすぎるそよ風は
どこまでも透けて影もなく
私の中を流れる血をさます

見れば
羊雲の雲影白く ....
ゆうがたの上弦の月を
散歩途中にみつめた
右半分の白さに
みちていく真っ直ぐな時をおもうと
裏切られても裏切られても
信じるということを
おしえてもらっている気がする
有り難いことにかわ ....
うそをつきます
といってさいごにうそをついた
うそがかそうされて
あおいそらへ
ひとすじのけむりとなりのぼってゆき
たいきちゅうのすいぶんとむすびつき
しろいくもとなりました。
 ....
レモンの青い葉の
そよそよささやくななめしたにある木陰が
独りの影に重なりつらなり
古い灰色の木製の椅子に座り
宙を見つめている無限に
くりかえされる喪失は
だれにも知られることはなく
 ....
ほほなぜる風のささやき春浅し





手のむこう雲は流れる二月かな





ふりかえる 映すあおぞら春の道

あちこちゆらゆらゆれるしろがね
原っぱで ぽつんとひとりそよぐ
手の中のまるみをおびた小石が
ほんのりあたたかい
地面の土は黒く底はなく
白い息 宙へ解ける明滅
山脈の稜線の縁は ....
まちぼうけをしている
霊園のお墓のなかで
白白と明ける白骨のわたしは
時時
霊園の枯れた草陰から歩き出して
近くの空き地にいき
忘れ去られてペンキのはがれた木製のベンチで
しずしずとひな ....
種は零れる
つゆの光る朝に
手紙を黙読する

ゆき場のない言葉を
ほほに風そう庭のお墓に埋めた
涙に黙礼をする

血筋を経た
自分が今ここにいることを
みつめれば
温 ....
晴れた今日、
日没すこし後の星星の点点と見え始めた
蒼く透けた空のこちら側で
体と影の連結が解ける
風光のなか雲棚引き
さやさやさーーーふーーー……、と
ほほをなぜる
風が耳元で ....
青空は生物の息ではないかしら
すてきというまえのうっとりとした
それから
ミルクの入ったガラスのコップをおとして
わってしまった時の悲しみのしみる
それからまた
ごちそうさまという ....
青い月のまるく照らす夜
夜気はしっとりひんやりしている
雨上り晩秋の風にゆれて
月へ黙礼をする芒は
亡きこおろぎの歌のように
  銀の小鈴色
闇に解けている
  紫の ....
遠ざかる
深夜
かえるはないている
あちらへ

ちかづきゆく


零時の
あなたよ
覚えていましたね

しんなりする石

あいさつの
あまおと
え ....
せかいはゆったりしている

小径にすぅと鬼やんまがきえるときも
ほの暗いひんやりとした木かげが
風に戦ぐ
秋の空高く深まる

せかいはゆったりしている

座椅子に ....
やさいをそだてる
くさとりをする
はたけの
ちかくの林で
うぐいすがないている

山は
さぁ雨上り
風に戦ぐ今日も
悔いは無し
ながめる
雲ゆく

鬼蜻& ....
あるラジオの
みえない声をきいていた
あの日
みえなかった
今も
みえない
からだもなにも
かりているにすぎない
しっとり
どこへともなく
アンテナをのばす
 ....
遠すぎる
最初から
ここにある
このこころ
風のいろ
そよそよと
いまだ止まず
草のかげ
あおあお
あおあおと
ゆめをみる










 ....
夜空のもとに
山脈は 青ざめている
思い出
しずめ
鬼蜘蛛と月をからめる
この道
耳はかたむく零雨にしげる ほほえむ
いつも
ああして
けれど
しあわせよ、という
そらをみて
つむる
今日を終える
しじみのお守りの曲線
白く反射する月を
見つめていると
見えない血がにじんで来る
無言はしたしい
いつかのさようならが
ふたたびあいさつをしている
忘れていたことを
思い出す



 ....
いつのころからか
ある
風光
わたくしも 人間であった
そう
そうであった
鬼灯に 映る
鬼げしの
あしたに
黙礼をする
宙へ
零れる
一夜が明けた
蒼さ故
あの月冴える
冬のあいだは
縁側にいた
植物たちへお水を
そそぐ
ほの暗い
尊厳
ほほえむ
こしごえ(897)
タイトル カテゴリ Point 日付
鬼蜘蛛と私(おにぐもとわたし)自由詩3*20/4/22 8:03
空舟は 希望する(うつおぶねは きぼうする)※改稿版自由詩2*20/4/21 10:33
ある世界自由詩0*20/4/21 9:53
散る自由詩1*14/11/1 15:48
その時まで自由詩5*14/10/15 22:42
そよぎ自由詩1*14/10/6 10:14
月は光る自由詩1*14/9/13 20:36
ほんとは自由詩0*14/9/1 13:03
レモン葬自由詩4*14/7/30 9:06
二月俳句1*14/2/27 15:20
芒野原自由詩3*14/2/27 13:15
まちぼうけ自由詩5*14/1/12 16:05
まちあわせ自由詩8*13/12/29 17:36
お墓自由詩3*13/12/11 10:20
自由詩6*13/11/25 13:21
青い月自由詩2*13/11/7 17:26
自由詩2*13/11/1 8:37
さびしみ自由詩10*13/10/15 22:03
黙とう自由詩7*13/9/28 18:10
闇と自由詩3*13/9/18 16:03
小径自由詩3*13/9/11 17:01
鬼とゆく自由詩5*13/8/29 16:18
水道自由詩2*13/8/1 9:12
かなしい花自由詩3+*13/7/24 11:25
沈黙自由詩3*13/7/20 16:40
回帰自由詩5*13/7/14 19:28
鬼灯     ( ほおずき )自由詩2*13/7/8 18:31
出あい自由詩3*13/6/29 5:35
故人自由詩1*13/6/29 5:33
喪失自由詩2*13/6/28 12:56

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